ろくわめ
「まだやりますか」
男は答えない、短かくなった自分の剣を見たまま動かない
「反応が無いということはまだやる気があるんですね」
わざとらしく愉悦をにじませた声で言う、すると男は
「いい剣持ってるからって調子乗ってんじゃねー!!」
と必死の形相でそう叫び、折れた剣を投げ捨てて殴りかかってきた
「そうですか、ではこれでの勝ちですね」
何事もなかったかのようにそれを避けると、同時に勢い良く足をすくうようにかけ男は頭から地面に突っ込んだ
「うう……くっくそがぁ……」
ザンっと威圧の意味で音を立て顔の近くに剣を立てる
もちろん、これで終わらせるつもりはない
「そういえば私が負けたときの約束はしましたが、あなたが負けた時どうするかは決めてませんでしたね」
男は傷だらけの顔に困惑と不安を混ぜたような表情をしてこちらを見てくる、それに私は満面の笑みで返した
「大丈夫です安心してください、すこし実験に付き合ってもらうだけです」
「実験だと……」
「ええ、それではいきますよ」
俺は意識を集中させて男に殺意、とでも言えばいいのだろうか体に感じる気を叩きつけた
すると男は、ひぃっと小さく悲鳴をあげて股に水溜りを作り糸が切れるように意識を失った
「まったく、根性がないですね」
そういって後ろを振り返ると、恐怖を浮かべる3人のおとこと、尊敬のまなざしを向けるマリーがいた
俺は男達の顔をみて気づく、いくら気が長くないとはいえあの程度のことでここまでやるのは、地球にいた頃にはありえないと
とりあえず考えるのは後だと言い聞かせ、マリーの方にむかう
「すこしやりすぎてしまったかな」
とマリーに話しかけると
「あの男には私も道中ずっと誘われていて、いくら断ってもしつこく迫ってきて困っていたんです、あのくらいならもっとやってもいいです!」
ふんすっ鼻息荒く倒れている男を冷めた目でみながら言い切った
それを聞いてかはわからないが最初に話しかけてきた男がおずおずと近づいてきた
「すまなかった、今回のことは全面的にこちらに否がある」
と頭を下げた、そのまま返答を待たず続けた
「あいつは女癖は悪いが実力はあるからパーティーを組んでたんだが…」
「実力がある?」
俺はつい口をはさんでそういってしまった
「そりゃあ、あんたの強さと比べたらあれだか俺らDランク冒険者の中ならそこそこなもんだぞ、まあ今回のようなことであったならパーティーを組み続けるのも考えなきゃいかんが」
「Dランクですか、あれでDなら私はどれくらいの強さになるんですかね?」
アルファベットもあるのかと思いながらそう問いかける
すると男は記憶を探るように少し目を閉じると
「あんたならAか、いやもしかしたらSもありえるかもしれない」
といって男はハッとした顔をしてマリーの方を向く
「すまない話が脱線しちまったな、今回の件はこっちが悪いだから依頼料についてはなしでいい、それをいいにきたんだ」
「そうですね、そちらがそれで良いというなら私は問題ないです」
「ああ、それで出来ればでいいからこの事はギルドには黙っていてくれないか、あいつに関しては俺等もなんとか言い聞かしておく」
マリーは疲れたように声をだした
「はぁ私もアレのことは口に出したくないのでいいませんよ」
俺もそれでいいと小さく頷く
男はすまないともう一度頭を下げ、街までの護衛はしっかりとさせてもらうとつげ、一度こちらを見た後気絶した男を担いで他の仲間の元に戻っていった
「あのリーダーさん?はまともに見えたけどなんであいつを止めなかったんだろう?」
「さぁ何か理由があったとしても私達には関係ないですよ」
「それはそうだね」
小さく笑いあい、お互いの距離が少し縮まった気がして、この世界に来てから初めて心に小さなゆとりが生まれたことを感じた
2人以上の人物をうごかすのが難しぃ…
12/11改稿