よんわめ
森の中を圧倒的な速さで駆け抜ける物がいた、まあ俺なんだけど
体感だが100キロ近く出ているように感じる、森の中で、この速度なら本来はもっと早いのだろう
おそらくだが、速さだけでなく力と技術も走る速さに影響しているんだろう
「みえてきたー」
森を抜け道らしき場所に出た、そのまま前を見ると
「街だ、馬車だ、人だ!」
大きな城壁に囲まれ門には行き来する人達がみえた
この速度なら城門には10分くらいでつくだろうけど、ここが地球じゃないとしたら言葉すら通じない可能性のほうが圧倒的に高い
いきなりいくのはまずいな、まずはどんなことでもいいから少しでも多くの情報が欲しい
ウルフが弱かったからって現地の人も弱いとは限らないし、もしかしたら俺より強い人がうじゃうじゃいるかもしれない
いろいろと答えの出ない問いを頭に浮かべながら周囲をうかがっていると
「あっ、いた!」
少し遠くに歩きながら、おそらく街に向かっているだろう、五人組がみえた
よし、ばれないように近づいてみよう
気分は最悪だ
いつもなら村から出て街にいくんだ、それが仕事とはいえ気分も弾むのに、あいつらのせいで
一昨日村の近くでゴブリンがでたということで、その討伐にきた4人の男、ゴブリンとはいえ魔物だその討伐をいとも簡単に終わらせたことから、低ランク冒険者にしてはそこそこな腕なのだろう
街に帰りながらもできる依頼を、探す姿からも慣れているのがうかがえる
それをみてつい
「もし依頼がないのなら街までの護衛をお願いできませんか」
と声をかけてしまったのだ
そして男たちはそれを快諾した、いやしてしまった
実際仕事はしてくれている、私一人ならクラッカーボールで追い払うのがやっとの、ウルフがでても冷静に対処していたし、チームのルールなのか持ち回りで常に誰か1人は会話に参加せず周囲を警戒している
しかし
「マリーちゃん街についたらさー、一緒にのまない俺奢っちゃうよー」
と1人私に絡んでくるのがいる、そいつがうざい、すごくうざい
私のなにが気にいったんだろうか、背も小さい胸もない顔は……まあそこまで悪くないと思っているけど
そんなことを考えながら適当に相槌を打っていると、突然空気が変わった
あのうざいのもさっきまでとは打って変わって真剣な顔をしている
どうしたんですか?と他の男に聞くと
「わからん、ただ一瞬だけとんでも無くでかい気配がしたんだ」
とよくわからない答がかえってきた
ぱきっと森のほうから小さな音がした気がした
それは気のせいではないようで男たちも一層緊張を高めている
少しの間そのまま音のした方へ警戒を続けるが、耐えられなくなったのか
「誰だでてこい!」
と男がこえを荒らげた
するとこちらの緊張は何だったのかというほどあっさりと正体が姿を現した
神々しいまでの美しさを持った少女だった
髪は流れるような銀髪で、気の強そうなしかし優しげにも見える整った、いや整いすぎた顔
まだ女と呼ぶには幼いが確かに女を感じさせる少女特有の危うさも相まって、ある種の神聖さすら感じた
そして身につけた装備、一見すると貴族が好む装飾鎧にみえるが、素人にもわかるほどの威圧感を生じている
私たちが声を無くし立ちすくんでいると、彼女から鈴のなるような声がきこえた
「すみません驚かせるつもりはなかったのですが」
彼女は申し訳なさそうに小さく頭を下げそういった
「あっあぁ、いや俺達こそでけぇ声だしてすまなかったな、しかしなんで森ん中に」
「まぁいろいろとありまして」
「いろいろねぇ、まあいいかそのなり冒険者だろ?」
「冒険者?」
「冒険者がわかんないのか?」
「ええと……依頼とかを受けて、魔物を倒したりいろいろな場所にいくもの、ですよね?」
「まぁそうだな」
彼女と、話している男以外は彼女の美貌に声に見惚れてしまい動くことができなかった、話している男も顔が赤くなっている
「みなさんは街にいくんですよね?」
「あぁ」
「私も街まで行きたいんですが同行してもよろしいでしょうか」
「すまないが俺等は依頼で街まであの娘を護衛してんだ、それはあの娘にきいてくれ」
彼女は私に
「私はメイといいます、街まで同行させてもらいたいのですが」
と優しいこえで尋ねた、私は顔を真っ赤に染め
「私はマリーともうしますよろしくお願いします!」
と早口言葉のような口調でそういった