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三、屋上が似合う男?

三、

「あちゃ、ここの問題がわからないよぉ。」

 小声で呟く一人の女の子の机の端っこにそっとカンペが置かれる。

「お、サンキュ・・・って?あれ?」

「出席番号十二番、声を出さない!」

 先生に怒られてその生徒は

「すみません。」といって再び中間テストの問題に取り掛かったのであった。

 学生の戦場は教室である。

普段から基礎をしっかりとやっていれば実践である『テスト』でよい点をとれるのだが・・・それをやっていなければできないものはできない・・・解けない問題は解けない・・・ままなのである。しかし、それを防ぐ方法が一つだけ・・・カンニングというスポーツで言えばドーピング的扱いのやってばれたら即零点の禁忌が存在するのである。

 その日もテストで午前中授業だったのだが・・・一人の少女が友達である先ほど注意を受けた女子生徒に話しかける。

「芹奈、さっきは誰と話してたの?」

「ん〜しらね。あたいを助けてくれたやつかなぁ?でも、誰も手を貸してくれそうな人いないし・・・余山・・・でもないなぁ。あれ?余山が珍しく携帯を扱ってんな?これも、おかしいことだな。」

 そう呟く柏木かしわぎ 芹奈せりなは先ほどの奇怪なことに首を傾げるのだった。


 一人の少年が屋上で大声を出そうと息を吸った。そして・・・

「・・・あれから約一ヶ月経ったのに、知り合いは余山さんだけなんだぁ!!」

と心の中で大きく叫んだのであった。白衣が風にたなびく。

「さっきだって馬鹿っぽい女の子の手伝いをしてあげたのに・・・くそったれがぁ!!ギブアンドテイクは余山さんだけかぁ!!僕の努力を返せぇ!」

ブルブルブル!

 そういっていると身内しか知らない携帯電話が鳴り響く。

「おっと・・誰だ?・・・・知らない番号だな。」

 ボタンを押して耳に付けてみる。

「あ、あのう・・・狭間 雪那さんですか?」

「あ〜そうですけど?どなたって・・もしかして・・・余山さんですか?」

 毎日、お昼休みになったら学園長室にやってくる人物を頭の中で形成する。無論、二度度と会わないように雪那のほうが避けていたのだが・・・

「あの、あれから学園長室にいませんので失礼かとは思ったんですけど電話しました・・・よろしければ私と一緒に公園に今度の日曜日行きませんか?お弁当持ってきますから!」

 再び白いご飯だけの生活を送っていた雪那の瞳に欲望という存在が牙を剥く。

「そ、そうですか?なんか悪いなぁ。」

「いえ、この前助けてもらいましたし・・・」

「もう、あの分は貰いましたから・・・でも、そこまでいうのなら・・・・やっぱ、いいです、気にしないでください。」

「そんな!」

 目の前に何時の間にか現れている学園長に完璧に欲望が退治されており、体を恐怖が支配する。目が釣りあがっているところを見るととても、とさかにきているようである。

「・・・・・。」

「あの、雪那さん?」

「・・・じゃ、じゃ・・また、連絡を・・・うぎゃああ!!」

ぷつり・・・ツーツー


 普段だったら昼休みの時間帯なのだが、午前中に本日のテストは終了しているので残っている生徒はいないようだった。生徒ではない雪那はソファーでごろごろしていた。

「やれやれ、携帯没収だなんて・・・・」

 学園内での生徒の携帯は使用禁止らしく、彼はため息をついた。

「はぁ、やれやれ・・・・」

 ため息をついていると廊下の前を誰かが通る音がした。そして、学園長室の前で立ち止まる。ノックをしないなら学園長、ノックをするならば他の人と決めているのでせつなは空間を切り裂く準備をしていた。しかし、普通に扉が開けられる。

「あ、ばあちゃん?俺、もうしないから・・・・携帯、返して・・・」

 そこまでいって彼は凍りついた。

「どうも!またきちゃいました。雪那さんは今日も来たんですね?」

 彼は思う

「何時から、若人はノックをする礼儀を忘れ始めたのだろうか?」と・・・

「・・・余山さん?」

「そうです、覚えててくれたんですね?」

 嬉しそうにしているのだが、雪那としては全く嬉しくない。我が身が危ないのだ。

「あの、実は学園長先生から呼び出しがありまして・・・」

「そ、そうなんだ・・じゃ、僕はこれで・・・」

 そういって学園長室のもう一つ奥の部屋に逃げ込もうとすると何時の間に帰ってきていたのか知らないが中から学園長が姿を現した。

「・・・こほん、雪那、何やってるんだい?」

「ば、ばあちゃん・・・僕、家に用事ができたから・・帰るね。」

 逃げようとする雪那の首筋に鋭い何かをあてる仕草をする彼のおばあさん。立ち止まる雪那を見て満足げに微笑む。

「さ、もう二人のお客さんも中に入ってくれ。」

「え?」

 振り返った雪那は驚いたのであった。何故なら、どこかで見た顔だからである。


 ソファーの上にはお客さん用の湯飲み茶碗が置かれており、その近くには雪那がお盆を持って待機をしている。かれこれ、何分が経過しただろうか?

「さて、お前さんたち三人を呼んだのは他でもない・・・まぁ、余山は勝手に来たのだろうけどね。」

 お茶に一口手をつけて学園長は目の前に座っている生徒たちを試すような感じで見ていたのであった。

「・・・私の孫の事を知っているのは余山だけだろうが・・・先日の葛籠誘拐事件に、余山のストーカー事件、今日のテストのカンニング・・・」

 明らかに最後のはしょぼいのだが、これはしょうがない。

「・・・全て、私の孫が関係している。原因、解決、手助け・・そのすべてといっていい。」

 三人が驚いたような感じで雪那を見たので顔を伏せるように彼はそっぽを向いたのであった。無論、後ろ手で時空を裂こうとしたのだが、それも学園長に阻まれる。

「・・・納得いかないんですけど・・・大体、何が関係しているって言うんですか?」

 少しばかり混乱している氷が学園長に尋ねる。

「・・・お前がロープでぐるぐる巻きにされているのを助けたのはそこの雪那だよ。背後から犯人を斬ったんだ。そして、あんたのロープも切って他の人を助けることができるようにナイフを近くに置いた・・・まぁ、普通にやったら負けるだろうけどね。」

「・・・・本当ですか?」

「・・疑り深い子はあたしゃ、嫌いだねぇ・・おい、雪那!」

「は、はい!!」

「いつものようにしてやりな!」

「で、でも・・・」

「はやくおやり!」

「りょ、了解!」

 学園長が指を鳴らして、一瞬だが三人とも学園長のほうを見る。その間に雪那はその場から姿を消して気がつけば氷の首元には木刀が当てられていた。

「・・・・。」

「ま、これで信じることができないっていうのなら、しょうがないけどね。」

「ふぅん、とりあえず、今日のテストの答えを教えてくれたのもあんたか?」

 そういって木刀をしまっている途中の雪那に尋ねる芹奈。

「ん?ああ、そうだよ。本当はやっちゃいけないんだけど・・・・さすがに赤点をとるのをみすみす見てられないからさ・・・。」

 そういう雪那だったが、学園長は許していないようであった。

「・・・・雪那、芹奈、お前らは今度から毎日昼休みの間だけ、ここで勉強するように・・・拒否するならば・・・・覚悟を決めることだね。」

「りょ、了解・・・。」

「・・・。」

 学園長は静かにお茶を飲むと、今度こそ本題に入ることにしたらしい。いつの間にか雪那は学園長の顔が見えないような場所に避難していた。

「・・・・本当は雪那一人に頼もうって思ってたんだけどね・・・どうにも、それが無理みたいだからあんたたち三人に私からじきじきに頼みたいことがあるんだ。一年間、この学園の平穏を保つのが私の孫の役目なんだけど、見ていて危なっかしい。だから、あんたたちに雪那の手助けを頼みたいんだ。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・ほ、よかった。てっきり僕をばらばらにするのかと思っちゃったよ。」

「返事は別に今でなくても構わないし、手伝うって言っても別に危険なことをしろってわけでもない。ただ、いつもと同じように生活していて何か雪那が困ったことがあればそれの相談にのってやって欲しいだけだ。内容はこれだけ・・・・じゃ、私は用事があるからね。後は好きにしてくれ。」

 一人だけ去っていった学園長に対して三人はどのような心境だろうか?なんだか居辛くなった雪那は再び空間を凪いだ。

「あの、狭間君だっけ?」

「はいっ?」

 片足を突っ込んだところで呼ばれ、後ろを振り返る。そこにはいつの間にか立っていた三人の姿があった。代表してなのか氷が中心に立っている。

「・・・・悪いけど、あたしたちにもっと詳しく説明してくれないかな?」

「・・・・わかりました。僕が説明できる範囲で教えますよ。」

 片足を引っこ抜いて彼は再びソファーに座るよう三人に言ったのであった。無論、お茶組係の彼は再び湯飲み茶碗に緑色の液体を入れなおしたことは言うまでもない。


 ほとんどの事情をしゃべり、雪那は自分の分のお茶を飲んでいた。

「・・・・それじゃ、狭間君は・・」

「雪那でいいですよ。」

「雪那君は無理やりここを守るような感じになってるの?」

「まぁ、主従最高と叫んでいる僕たちの一族ですからね。しょうがないんじゃないかと・・・」

「でも、この前私を助けてくれたのも義務だったの?」

 そういって少しばかり悲しそうな顔をする瑠美子。

「う〜ん、あれはハンバーグのお礼・・・ってところだろうね。」

「じゃ、あたいの時は?」

「あれは・・・見るに見かねて・・・カンニングはいけないことだけどね。」

 三人の質問が終わったと見た雪那は立ち上がった。

「ま、別に今のところ何か困ったことなんてないけどね。大体、僕としてもここに長居してればそれなりに姿が見られたりするだろうし・・・現に、君たち三人がいいふらすって事も考えられる。まぁ、そうすれば僕も追い出されるか警察に突き出されるかどうなるかわからないけれど・・・・あとは本当に君たち次第だから。ま、これからも何かあったら力になれるようがんばるよ。じゃ、そろそろ僕も用事(ごろ寝)があるから・・・ばいばい。それとさ、僕は正義の味方ってわけじゃないからね。簡単には助けられない。」

 次元を切り裂いて雪那はさっさといなくなったのであった。

「・・・どうする?」

「・・・助けてもらったのも事実ですけど・・。」

「あたいは別に・・・ちょっと、試してみたいことが・・。」

 そういう芹奈の眼には未だにあいつが本当にそういう奴なのか知りたがっているという色が浮かんでいたのであった。


 誰もいないはずの夜の学校に悲鳴が響き渡った。

「どうしたんですか!!」

 それは一つの教室から聞こえてきたのか、雪那は慌ててその教室に現れる。本当は彼も家に帰っている時間帯なのだが(家といっても学園長室の奥の部屋で二十四時間体勢)まぁ、近かったので現れたのである。

「・・・誰もいない?」

 不意に後ろから襲い掛かられるような感じを受け、彼はあっという間に次元を裂いて相手の後ろ側に回りこみ・・・首筋に刀を当てて・・・・

「・・・柏木さん?」

 途中で止めたのであった。

「あ、ああ・・・しかし、本物なんだな?あたいが悪かった。」

 とりあえず刀を向けたことに対して侘び、雪那は彼女に尋ねる。

「一体どうしたんですか?」

「まぁ、一種の試験というか、あたいの中の何かが訴えたとか・・・・そんなものだ。でも、まぁ・・・」

 そういってうんと頷く様子の芹奈に雪那は首を傾げる。

「他の二人は知らないけど、あたいはあんたを助けるよ。」

 そういって片手を差し伸べてきたのであった。勿論、雪那はその片手を掴んで握手を交わしたのであった。彼の心の中では感激の嵐が通過していったのだった。


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