第1話 もしかして……転生?
ふわふわと温かくて、安心する。
まるで……守られているような、そんな感覚が私を包み込む。
しっかりとした何かの温もりに、このまま微睡みの中に居たいところではあったが……はてさて、このしっかりしたものは何だろう?
考えても思い当たる物がなかった私は正体を暴こうと目を開けようとした……うん、普通にいつもどおりに、瞼を開けようとしたんだよ!?
一回二回と開かない目に不思議に思いながらも、次こそはとばかりに力を入れると、何故か薄くしか開かなかった。
一応は開くことが出来たのだが、そのうっすらとしか開かなかった目は、今まで間近で見たこともない深い青い色の誰かの目と「こんにちは」したのである。
ちょっと待って……私に青い目を持つ外人さんの知り合いは居ませんけど!?
「母さん、この子……凄い目力だね。じっと、僕のこと見て動かないよ」
「この子にとって、貴方が珍しいのかもしれないわ。だって、今日が初めて会うんですもの」
「そっか……僕がお兄ちゃんだよ」
兄……お兄様ですと!?
私は一人っ子なので兄は居ないのですが……と、言葉を話そうとしたのに出てくるのは「うー」とか「あー」とか、聞きようによっては呻き声のようなものしか聞こえてこない。
「母さん、この子、何か言っているけど」
「きっと、“お兄ちゃん、よろしく”って挨拶しているのよ」
「ふ~ん……? じゃあ、僕もよろしく」
いやいや、よろしくの挨拶じゃないよ!?
言葉が通じない……というよりも、言葉を話せないが正しい私の今の状況に驚きの声を上げたいところである。
身体にしてもそうだ、手足が動かせない。どれ程力を入れようとも、自分の思い通りには動かないのだ。
目は薄ぼんやりとした状態で、はっきりとしない視界。
言葉を話そうにも話せず、母音を発する口。
体を動かそうにも自由に動かず、緩慢とした動作。
少ない要素かもしれないが、ファンタジーが好きな私には、これらから導き出されるものが一つあった。
「あら、眠いのかしら」
ちょっと待って……と、考えさせて……と訴えようにも、やはり言葉にならなくて。それが、ぐずっているように思われたのか、反対に大丈夫よと言われてしまう。
ポンポンと背中を優しく叩かれ、思考が定まらない。一定のリズムで叩かれるそれに、眠くはなかったはずの私も次第に眠りの世界へと導かれていく。
「んぅ……(ファンタジーだなぁ……)」
薄目ではあるものの開いていた目が、だんだんと眠気と共に閉じられていくのを感じながら、私は考えることは後回しにして、本能のまま眠ることに決めた。
寝る子は育つって言うからね!