安息の地
決闘までのつなぎです。
「よう砕牙。こんな所で会うなんてな。」
戦場でもアニキは相変わらず人の良い笑顔を浮かべていた。だが、場所が場所だ。
「何が『こんな所』だよ。アンタ国の政治なんて興味ないだろ?何で反乱軍なんかに?」
いっつも新聞を鼻紙の代わりに使うようなヤツだった。反乱軍なんかに入る性格じゃない。
「いやなに、仕方ないんだよ。あんなされちまったらな。」
「・・・何をされた?」
アニキが反乱軍に入らねぇといけなくなるようなこと?まさか、ミンクを誘拐されたとか?有り得ねぇ、そんなことしたらその日の内に反乱軍は壊滅する。
「ある夜にな、気配を感じて起きたら目の前に下着しか着けてねぇ女の子がいたんだよ。」
「ハァ!?」
何を言ってんだコイツ?
「その後は、何も言わねぇ。ただ、俺の聖(性)剣を久々に鞘に収めたとだけ言っておこう。」
「おい・・・。」
それってまさか・・・。
「そしてその女の子はこう言った。『お願いがあ「もういい。」はぇ?」
もういい・・・。これ以上は小説の為にやめておこう。
「ったく。籠落されてんじゃねぇか変態が。」
ちょっと心配した俺が馬鹿みてぇだ。
「だが、後悔はしてねぇぜ義弟よ。おかげで良い女が抱けたし、それに、お前と全力で殺り合えるからな・・・!」
そう言って俺に拳を向けるアニキ。オイオイ・・・、
「本気かよ・・・。」
「あぁ、大マジだ。」
そう言ってアニキは俺を見る。その目はどこまでも真剣だった。
「思い出せば懐かしいお前との修行の日々。あの頃のお前は毎日と言っていいほど俺に挑んできた。毎回片手であしらわれていたにも拘わらずにな。2年前に別れてからも俺の耳に入ってくる俺の関与していない研究所襲撃の情報。嬉しかった。お前はちゃんとやれてる。魔力を見る"眼"と俺の叩き込んだ"業"、生き延びる"力"を持って何処かで生きていけてる。そう思った。だから追っ手が来なくなったあの日、俺はお前を一目見ようとビギンの街にやって来たんだ。」
そこまで言うと、アニキは一転して鬼のような形相になり、叫んだ。
「それが何だあの有り様は!!弱い雑魚を狩り続け、書なんぞ書き出し、挙げ句相手が少女であることも見抜けない!!!よく『隻眼の獣王』なんて呼ばれられるな!!!何が神風 豹牙に並ぶ二大人間兵器だ!!!?お前のような弱者が、ふざけるんじゃない!!!!」
「違う!俺は別に修行をサボった訳じゃない!!アンタが言う"力"もつけた!!だけど、あの街にいると、アイツらといると、この10年間休まる時の無かった"心"が休まれる。やっと手にいれた安息の地なんだよ!!!アニキも分かるだろ!?」
もし、分からねぇって言うんなら、俺は豹牙を許さない。あそこまで親身になって接してくれたアイツらの気持ちを踏みにじることになるから。
「・・・確かに、ビギンの街は居心地が良いし、フェレちゃん達は親身になって接してくれてる。あの街は俺にとっても安息の地だ。」
「だったら「だが!」・・・!?」
何だ?ここまで真剣になっているアニキは見たことねぇ。
「だが・・・いや、だからこそ俺らはその安息の地を守らねぇといけねぇ。その力と資格がお前にあるのか、俺が見てやる。来い!『隻眼の獣王』獅子王 砕牙!!!」
そういうことかよ・・・。良いぜ、俺にその力と資格があるってことを、
「見せてやる!受けてたつぜ!!『狂人』神風 豹牙!!!」
王歴960年11月23日
この日、王国の歴史史上最悪の戦争、「王都大決戦」が開戦した。たった2人の男によって・・・。
次回、やっとこさ決闘開始です。




