本当の表情
キリがいい所で切りたかったので、少し長いです。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・、もう無理体動かねェ。」
鉄槌割りはメッチャ体力食うからなぁ。でも一撃で決めとかねぇと今までの繰り返しになってたしな。
「何故、私にとどめをささないんですか?」
俺が壊した墓石のことを考えてたらアイがそう声をかけてきた。もう意識が戻ったのかよ・・・・。
「何故って、さっきの攻撃で体力使い果たしてもう動けねぇからな。」
それにこんな美人さん殺すのはもったいないしな。アイに言ったら殺されそうだから言わねぇけど・・・。
「なるほど、ではまだ少し殺されるまで時間があるという訳ですか。ならば少し私の話を聞いてくれませんか?」
「?なんで急に?今まで殺しあってきた仲だぞ?」
「いえ、決めてたんですよ。いつか私が死ぬときが来たら、傍にいる人に私の生い立ちを語って、聞いてもらって、感想をもらって、それから死にたいと。」
・・・なんで?わけわからん。そんなに自慢な生い立ちなのか?しかも勝手に自分が死ぬと思ってやがる。よし、今日1日振り回された仕返しに全部聞いてから「ざんね~ん!殺す気はありませんでした~。」みたいな悪戯をしてやろう。
「そういう事ならいくらでもどうぞ。」
「ありがとうございます。では・・・・・・」
アイの話はこんな感じだった。
自分の母親はある名家の娘さんで、頭も良くて美人で気立てもいいという最高の女性だったらしい。だが、そんな彼女の才能を羨んだ兄が彼女を監禁し、無理矢理猫と獣姦させられ、そして子供を孕んだことにより家を追い出されてしまった。
それからしばらくして、彼女は女の子を産んだ。最初は喜んでいた彼女だったが、その子供に生えている猫耳とシッポを見た瞬間、
「気味が悪い。」
と言って川に投げ入れたと言う。その赤子がアイで、アイは溺れかけのところを牧師に拾われ、孤児院で生活していたのだが、その姿を怖がった子供たちから苛めを受け(その時の影響で顔からほとんど表情が消えたんだとか)、耐え切れなくなり孤児院から逃亡。冒険者ギルドに入って各地を転々としていたらしい(ちなみにそんなに強くてランクEなのは、「強くなるだけなら高いランクは不要」とか)。
すげぇ暗い話だった。これ聞いて悪戯は無理・・・・・・・・・・・・・。
「私は、自分を認めてもらえるように冒険者になったんです。そして、今まで全ての戦いを勝ってきました。それでも、認めてくれるのは一部の貴族だけ・・・。」
いや、それは認めてるんじゃないと思う。
「そんな中でやってきたのが世間で人間兵器と呼ばれるあなたの暗殺依頼、私はついに認めてもらえると思いました。」
俺はそんな理由で殺されかけたのか・・・・。
「その結果がこれです。結局あなたには勝てなかった。もう生きるのに疲れました・・・・・。」
おいおいおいおい、何言ってんだよ。
「話はこれで終わりです。さぁ、どうぞ殺してください。」
いいのか?それで、お前の人生終了でいいのか?いいわけねェ!!
「アンタにしてやるべき事が分かったよ。」
俺はそう言ってアイに近寄り、
「!?何をするんですか!」
アイを抱きしめた。
「お前は親にこうして欲しかったんだろ。普通に愛されたかったんだろ。」
「!??・・・・・・。」
「今までよく頑張った。でも、もういい。自分を痛めつける必要はない。」
「でも、私は・・・・」
「誰かに認めてもらおうなんて考えんな。どうしてもって言うんなら俺が認めてやる。」
「ッ!?」
自分でもクサいセリフだと思う。でも、これくらいしか俺は言ってやれない。
「・・・ありがとう・・・ございます。」
アイがそう言ってきた。・・・涙声だった。
「泣きたいなら泣け。もう1人じゃないから。」
「う、うぅ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
アイは俺の腕の中で声をあげて泣いた。赤子のように。
それは、彼女が俺に初めて見せた「本当の」彼女の表情なのかもしれない。
獅子王はキザ野郎です。




