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商人と異国の少年

作者: 七村圭

挿絵(By みてみん)

Copyright(C) 2012 瑠々樒





 とある小さな国の、とある小さな町角で。


 その商人は、道端に敷物を広げ、通りすがる人々にさかんに話しかけていた。


「へい、そこの旦那。旅の途中かい。そんな旦那には、この金の腕輪が役に立つぜ。これは魔力が込められた神聖な腕輪で、身につけただけでみるみる力が……っておい、無視かよ! ああ、そこのねえちゃん。このネックレスなんかどうだい。あんたにちょうどお似合いだ。この淡いブルーの宝石は、はるか東方で取れた貴重なもので……っておい、ちょっとくらい話聞けって! あ、そこの貴婦人方、このマジックブレスレットはそんぞそこらじゃ手に入らない、ガルーダの涙がしみこんでいて、つけただけであなたの魅力が数千倍にアップ……って、鼻で笑って去っていくんじゃねえよ! くそっ」


 男は、黄色い縁取りの藍の敷物の上にどかっと座り、売り物の品――指輪や、ネックレスや、ブレスレットなど――を並べ、小さな町の道端で、通りすがりの住民相手に商売をしていた。無精ひげをはやし、横に伸びた髪をくくり、頭に小豆色のターバンを巻いた、いかにも流れの人間だという風貌。売り物に説得力をもたせるためか、自身も両耳にイヤリングをつけ、両手の指という指には金銀の指輪が光る。右目を覆い隠すような白い仮面も、男の風貌を特徴づけていた。


 彼は今日の朝からずっと、町の中央を通る川にかかる橋の上で、商売にいそしんでいた。


 いろんな町を渡り歩き、道端に陣取っては、通りすがりの人に話しかけ、あやしげな装飾品を売りつける。彼はそんな流れの商売で生計を立てていた。今日は山すそに近いこの小さな町で、愛用の敷物をひろげ、さまざまなところから手に入れたきらびやかな品を並べて、いつもの商売をはじめたのだった。


 だが。


「そこの兄ちゃん、これからどこにいくんだ? え、アメリア共和国? そいつはいけねえな。あそこはつい昨日、戦争が始まったばかりだ。そんな装備で行くのは危険だぜ。そんな危なっかしい兄ちゃんにおすすめなのが、この魔法のランプだ。この金色に輝く由緒正しいランプは、横をこするだけで中からゴーレムが――いや、本当なんだって! え、ためしにこすってみろだって? いや、これには実は回数制限があってだな。兄ちゃんに渡す前に俺が使っちゃ、もったいないだろ。だからここはあえてこすらずに渡そうと。やってみてのお楽しみってやつだな――ちょ、ちょっと待てって! そんな不信そうな目でゆっくり遠ざかるな!!」


 売れ行きは――あまり好調とはいえなかった。


 いつもの調子でおおげさなことを述べながら、彼は橋を渡る客相手に怪しい装飾品を売りつけようとしたが、なにをやってもからきしだめ。また一人客を逃し、彼は不機嫌そうに毒づいた。


「くそっ。この町のやつらは全員守銭奴かよ。だれも買おうとする気配すらねえ。カネの臭いがしてここを選んだってのに、完全にハズレだぜ」


 男はひとつ息をついて、橋の上の敷物に腰を下ろす。小さな町なので、人通りは元々それほど多くない。それでも彼は直感的に、自身いわく「ここにカネの臭いがした」のだった。


 だがいまのところ、ボロもうけの気配はみじんもない。


 まだ昼だが、なかばあきらめ気味の男。早々に他の場所へ移るべきか思案していた、そのとき。


「……これ、きれいな指輪だね」


 声に気づき、男は沈んでいた顔を上げた。


「お、らっしゃい――」


 だが、そこにいたのは――


 緑色のうす手の服に身をつつんだ、まだあどけなさの残る金髪の少年だった。


「こっちの腕輪も……あっ、この首飾りもきれいだなぁ」


 少年は敷物の前にしゃがみこんで、並べられた商品をまじまじとみつめている。その光景をみて、男はため息をついた。


「なんだよガキ。なにしにきた」


「なにしにって、おじさんの売ってるものをみてるんだよ」


「しっしっ。お前みたいなガキに用はねえんだよ」


「えー、どうして。僕だって立派な客だよ」


「あのなあ」男はターバンの上から頭をぼりぼりかきながら云った。「ここにあるものは、お前みたいなお子様には手のとどかねえような、異国の高級品ばっかだ。ガキなんか相手にしてるヒマはねえんだよ」


「でも、見るだけならいいんでしょ」


「だめだ。買う気がねえんならやめろ。商売の邪魔だ」


「ケチ」


「んだとガキ。あんまり調子に乗ってっと、ふんじばって金持ちの貴族に売り飛ばすぞ」


「そんなこともしてるの……?」


「たとえばだ! 本気にすんな。ほら、もういいだろ。あっちいけ」


 だが、少年はなかなかあっちへいかない。それどころか、ますます男の座る方へにじり寄ってきた。


「ところでおじさん、どこから来たの」


「俺は隣町のサラゴダからだ――ってまだいたのか!?」


「うん。おじさん、変わった服装してるな~、って、気になってるんだ。指にもいっぱい指輪をつけてるから、きっと特別な仕事をしてる人なんだな、って」


「悪かったな。俺はただの流れの商人だ。この服装は演出。飾りだ、飾り。ご期待に添えなかったな。ってかそれをいうならお前こそ、よそ者じゃねえか」


 少年はきれいな金髪に、透けるような青い眼をしている。このあたりの人間はみな、髪の色は黒か茶、たまに灰色がいるくらい。眼も同じだ。一目で異国の者だとわかる少年こそ、歩くだけで目立っているはずだった。


「この町の人間じゃねえだろ。アリエラ地方か? それともルガールの方か?」


「僕は……」


 すると少年は、急に顔をくもらせた。


「僕は、その……あ、あの家の裏からきたんだ」


 そう云って、彼は橋の近くにあった、赤い屋根の民家を指差す。


「……そういうことを言ってんじゃねえ。どこの出身かって訊いてんだよ」


「ま、まあ、それは、プライベートなことだから、お互いに秘密ってことにしようよ。僕も訊かないから」


「お前から訊いてきたんじゃねえか! ……ったく」


 なにか後ろ暗いことでもあるのか。家出でもしてきたか。そんなことを男は考えた。


 少年はそんな男の心を知ってか知らずか、さらに図々しく寄ってくる。


「これなんか、ものすごく高そうだけど……いくらくらいするのかな」


「しつけえぞ、ガキ。お前みたいなお子様が身につけるもんじゃねえんだって」


「これ、つけてみてもいいかな?」


「だからやめろ! 勝手にさわんじゃねえっ!!」


「でも、このブローチくらいならいいでしょ」


「なにがだ!? お前に売るもんは無いっていってんだろ!」


「おじさん、怒りっぽいね。あんまり怒ると、健康によくないよ」


「お前が怒らせてんだろうが!! くそっ。いい加減、あっちいけよ。なんで俺にばっか話しかけてくんだ」


「おじさんが一番、話しかけやすそうだったから」少年は云った。「おじさんも、よそ者みたいだったから……。いっぱい宝石をつけてるところとか、ターバンを巻いてるところとか」


 少年は好奇心に満ちた目で男のほうを見つめてくる。


「右目だけ仮面みたいなのつけてるのも、すごく似合ってるなって思ったんだ。それも飾り? あんまりそんなのつけてる人、いないよね。だから僕、おじさんのことがとても気になって――」


「黙れガキ」


 すると。


 なぜか突然、男の声がこれまでになく、すごんだ。


 態度を急変させる男。これまで乱暴な言葉でもどこかくだけた調子だったのが、一気にかたくなになる。


 少年は驚いた顔をみせ、なにも云えないまま。それへ、男は押しつけるように云い放った。


「滅多なこと言うなよ。もうお前の相手は一切しねえ。すぐに俺の前から消えろ」


 少年は、ひるんだように表情を戸惑わせた。


「ど、どうしたの、おじさん。僕、なにかおじさんの気にさわるようなこと――」


「それ以上しゃべったら、手元にあるナイフでのどをかき切るぞ。さっさと消えろっつってんだ!」


 鋭い左目で、男は少年を突き刺す。


 少年はなにも云えず、ただ男の視線に縛られるだけ。ショックが大きかったのか、少しだけくちびるがふるえている。


 しばらくして、少年は顔をうつむかせた。そして、ゆっくりと立ち上がる。


「……ごめん、おじさん。僕、いくね」


 それだけ云うと、少年は一度も男と目を合わせないまま、背を向けてとぼとぼと去っていった。男はこわばっていた表情を解き、小さく息をつく。


「……くそ」


 男は、少し苦い顔をした。


「またやっちまった。なにムキになってんだ俺は」


 男は頭をかきむしると、だれかに見られることを避けるように、顔をそっぽむける。


 右目のことに触れられると、どうしてもな――。


 男は左にひとつだけある黄色い瞳で、視線を遠いところに投げた。そこには町が見え、山が見え、空がみえるはずだった。だが彼の目には、どこか遠い郷愁の光景が、幻のように映りこんでいたのだった。











 結局、売れ行きは散々だった。


 あれから橋を渡る人渡る人に声をかけるが、いっこうに物は売れない。もっとにぎやかな町なら、ものめずらしさや面白半分に寄ってくる者も少なくないはずだった。


 やや郊外の町を選んだのがいけなかったのか、それともたまたま今日のツキが悪いのか、だれも彼のところで足を止める気配すらなかった。


「くそっ。ダメなときはとことんダメだな。……へい、そこのだんな。だんなにお似合いの、いい指輪がありますぜ。この銀の指輪は、とある王宮の貴族がつけていた、由緒正しい魔法の指輪で――って、せめて顔くらいこっち向けろよ!」


 がくっ、と首を下ろして、彼はただうちのめされただけだった。


 そろそろ今日は店じまいかと思って彼があきらめ始めていると、そこへ杖をついた老人がやってきた。


 彼はそれに気づくと、客かと思って笑顔をつくった。だが、老人の目が不信にあふれているのを見て、すぐにそれをやめた。


「なんだよ。俺になにか用か」


「全く、こんなところで物売りとは……。卑しい商売じゃのう」


「なんだ、冷やかしか。客じゃねえなら帰れ、ジジイ」


「わしは、この町の町長じゃ」老人は杖に両手を置いてから云った。「変な男が橋の上で怪しげなものを売っていると聞いて、様子を見にきたのじゃ。まったく、話に聞いたとおりじゃな」


「別に怪しいものを売ってるわけじゃねえ。それに、だれにも迷惑がかからなけりゃ、どこで商売したって勝手だろ」


「どうかな。わしには怪しい物ばかりにしかみえんがな」


「そりゃジジイの目が節穴だからだぜ。こっちはこれで一応まじめに商売してんだ」


 実際、彼が売っているものは安物も多いが、まともな物も決して少なくなかった。出自は怪しいものばかりで、彼が口八丁で安物に色をつけて売ることもあるが、中には性能的に、歴史的に、本当に貴重なものもあった。だから彼のところには、目の肥えた魔法使いや収集マニアの貴族が訪れることも、少なからずあるのだった。


 しかしこの町長は、どうやら彼の身なりやそぶり、雰囲気をみて、怪しい商売だと決めてかかかっているようだった。


「お前さんがやたらとこの町の住人に話しかけるもんじゃから、みな橋が渡りにくいと云っておるのじゃ」


「そうか。俺の方はあいにく、全住人に無視されてるんだがな。こっちこそ、こんな商売のやりにくい町はねえと思ってるさ」


「なら、いますぐ店をたたむんじゃな。全く、こんな光景を『白き聖者』がご覧になられたら、さぞ嘆かれるだろう」


「白き聖者……?」


「しょせんよそ者じゃな。『白き聖者』のことも知らぬとは」


 知らないわけではなかった。だが、聞いたことがある、というレベルのもの。いまこの町長にそれを云ったところで、やはりバカにされるのがオチだ。男はそう考えて黙っていた。


「『白き聖者』とは、異国にすまう聖なる王。代々、家系の者には、百年先の未来を読み解く力や、千の怪物を一度に打ち滅ぼす力が宿るとされている、いにしえの王族なのじゃ。白き聖者の国は遠く離れた島国にあるから、滅多に王家の方がこの町にいらっしゃることはないが、それでも一年に一度は、昔から親交の深いこの町へ必ずいらっしゃる。絶大な権力を有しながら、下々の者にはもったいないくらいの心遣いをかけてくださる、尊敬すべき方々なのじゃ」


 諭すように、町長が話す。それへ、男はイライラしながら云い放った。


「だからなんだ。そいつが俺の姿をみたら、『へっ、きたねえツラしてやがる』とでも言うってのか」


「王家の方々はそんなはしたない言葉は使わん。ただ、まじめな商売に戻るよう、優しく話しかけてくださるだけだろう」


「うるせえ。ひとの商売にケチつけんじゃねえ!」


「せいぜい強がっておくんじゃな。この国では、お前のような商売はなじまん。早々に立ち去った方が懸命じゃぞ。あくまで親切心で言っておるのじゃからな」


「よけいなお世話だ!」


 男が怒鳴り散らすと、老人はやれやれといった表情で、また杖をつきながら離れていった。


 男は大きくため息をつく。調子の出ない状況にさらに追い討ちをかけるような町長の口撃。


(あー……なんか一気にテンション下がったな。今日はもう店じまいにすっか。でも、あのくそジジイに言われたからやめるみたいで、気にくわねえな。ちっ。なにが白き聖者だ。あのジジイの話が本当なら、ただもって生まれた力に頼って生きてるだけの、日和見家族じゃねえか。そんなやつら尊敬できるかよ)


 納得しかねると云った顔で、彼はまた頭をかきむしった。


 釈然としないまま、目の前に並んだ手つかずの商品を集め始める。こんな陰気な町とは早々におさらばだ。そう心に決めて、彼はそそくさと片づけをはじめようとした。


「おじさん……」


 そのとき。


 聞き覚えのある声が、男の耳に届いた。


 彼が顔を上げると、そこには今朝会った、なれなれしい金髪の少年の姿があった。


「……なんだお前。まだいたのか」


「ごめん、おじさん。話しかけたらいけないかなって思ったけど、やっぱりおじさんしか話す人がいなくて……」


 そう云う少年の顔には、さきほどの元気がみられない。男は仕方なさそうに云った。


「話すやつならそこら中に歩いてるだろ。ほら、いま行ったジジイなんか、優しそうなツラしてたぜ。お前でも相手してくれんじゃねえか」


 皮肉を込めてそういう男に、少年は首を振った。


「話しづらいんだ。なんていうか、その……うまくいえないんだけど、みんなにじろじろ見られてるっていうか……あやしそうな目で、みんな僕のことをみてるような気がして」


「そりゃ、お前がよそ者だからだな。警戒してんだ。俺だってそうさ」


「おじさん、も?」


 それには答えず、男は商品を集めながら、ぶっきらぼうに云った。


「――まあ、さっきは言いすぎたな。悪かった」


「えっ」意外そうな顔をする少年。男はそそくさと作業を続ける。


「悪かったな、って言ってんだよ。怒りすぎた」


「――ううん。僕のほうこそ、ごめんなさい。おじさんにとっては聞かれたくないことだったんだろうから……」


 少年は、少しだけまた元の笑顔をみせる。


「でも……じゃあ、またおじさんと話してもいいかな」


「だからな……なんで俺にばっか話しかけてくるんだよ。しつけえんだよ」


「どうして。おじさんと話しちゃだめなの?」


「そんなにあれやこれや話しかけてこられちゃ、こっちは落ち着くヒマもないっつってんだよ」


「でも今日、おじさん、ずっとヒマそうにしてたでしょ」


「みてたのか!?」


「うん。僕、この町を三周くらいしてたからね」


「お前こそヒマ人じゃねえか。んなことしてる時間があったら、さっさと家に帰って勉強でもしてろ」


「えっ」


「なんだよ」


「おどろいた。おじさんの口から勉強なんて言葉が出るなんて」


「どういう意味だ!!」


「ご、ごめんなさい……」思わず身を縮める少年。男はひとつ小さく息をついて云った。


「やることがないならさっさと家に帰れ。俺と話しても、一文の得にもならねえぞ」


 男がそういうと、少年はしばらく間をあけてから、聞こえるか聞こえないかくらいの小さく弱い声で、つぶやいた。


「――帰れないんだ」


 少年の言葉に、男は手をとめる。


 帰れない。そう云ったか。


 男が顔を上げると、少年が訴えるように云った。


「帰るところが分からなくて……だから、家も分からないし……」


「なんだ。迷子にでもなったのか」


 すると、少年はいたって真剣な面持ちで云った。


「記憶が、ないんだ」


「……なんだって?」


「だから、記憶が……なにも、思い出せないんだ。昨日から前のことが。今日の朝、気がついたらこの服を着てて、この町にいたんだ」


 少年は橋の近くにあった、赤い屋根の民家を指差した。


「さっき、そこの家の裏から出てきたって言ったでしょ。うそじゃないんだ。気がついたら、ほんとにその家の裏で、僕は倒れていて……。それから今日一日、町を歩きながらなにかを思い出そうとしたけど、なにも思い出せない。自分の名前も、わからないんだ……」


 真面目な顔で、不安そうに男の方を見る。そんな少年の様子に、男は徐々にこみあげる笑いを抑えきれずにいた。


「…………くくくくく」


 それが表情に出て、口元がゆがむ。少年は両拳をにぎりしめて、声を荒げた。


「な、なにがおかしいんだよ! 僕は真剣に言ってるのに!」


「くくく……いや、子供にしてはよくできた冗談だな。迫真の演技だぜ。演劇の才能でもあるんじゃねえか。思わずまじめに聞いちまった。よかったら俺のお得意の三流貴族にでも紹介してやろうか。見世物小屋で使ってくれるかもしれねえぞ」


「なんだよ! 全然信じてないじゃないか! 本当の話なのに!!」


「あのな、坊主」男は云った。「そんな思いつきの話、だれが信じんだよ。どうせ俺にかまってほしいから、町を歩きながらでも考えてたんだろ」


「うそじゃないよ!」


「へいへい、わかった。うそじゃねえんなら、お前の妄想だ。気がついたら知らない町でした、記憶が全然ありません、どうしたらいいのかわかりません、助けてください、で通るならだれも苦労はしねえよ。目的はなんだ。宿代でも払ってもらおうっていう腹か」


「そんなつもりじゃないよ! 本当なんだ! 本当に、僕は――」


 そこまで云って、少年は言葉を切った。男の目には不信しかみえない。


 気勢がしぼんだのか、少年は訴えるのをやめた。目を伏せ、あきらめたようにうなだれる。


「――だよね。こんな話、だれも信じてくれないよね。僕も、いまだに信じられないんだ」


 自嘲気味に話す少年に、商人の男は、小さく息をついてから云った。


「ま、百歩譲ってお前の記憶が無かったとしても、俺には関係ない話だ。ガキの面倒なんか、みてられないからな」


「うん……話した僕が悪かったよ。ごめんなさい」


 小さく、かすれるように、少年はつぶやく。その目が少しだけうるんでいるように、男にはみえた。


 ――意外に、本当の話だったか。


 だとしても、俺にはかかわりのないことだ。男は自分にそう言い聞かせ、また店じまいを進め出した。


 少しして、少年は気を取り直したように、声を張った。


「おじさん、せっかくだから、おわびになにか買うよ」


「おわびなんていらねえよ。ガキにわびられてもなんの得にもならねえ」


「じゃあ、記念。おじさんと会った記念に、売ってるものをひとつ買うよ。この青い宝石のついた、銀の指輪がほしいな」


「だから、ここにあるものはな、お前みたいなガキがとうてい買える代物じゃねえんだよ」


「でもどうせ、盗品かなにかでしょ」


「人聞きの悪いこと言うんじゃねえ! 全部まともな代物だ!」


 そして男は、少年がほしがっている銀の指輪を手にして、さらに云った。


「おまけにこの指輪は、俺の商品の中でも一番由緒正しい『とある筋』から手に入れたもんなんだ。特別な魔力が込められていて、つけただけでそいつの身を守ってくれる、貴重なお宝だ。当然、値段もほかのやつと比べてとび抜けて高え。だからお前みたいなガキには手の届かない――」


 そう男が云おうとして、途中で言葉を飲み込んだ。


 少年が、男に向かってみせつけるように右手を突き出している。その手の中には、札束。


「……この町の人が、お店でこんな紙と商品とを交換してるのを見たんだ。これで足りるかな。足りなければ、もっとあるよ」


 男がその札束を受け取って確かめる。まぎれもなく、この辺りで流通している紙幣。そして、どう見ても大金。ときどき男のもとにやってくる貴族らでも、ここまで気前はよくない。


 男は、あぜんとして云った。


「お前……どこでこんな金を」


「最初に目が覚めたとき、僕の服のポケットに入っていたんだ。たぶん、信じてくれないだろうけど」


 少年の言葉に、男は迷いが生じていた。


 本来なら、金さえもらえればなんでも売る。特にこんな大金、なかなかお目にかかれない。のどから手が出るほどほしい。だが――


 男には、少年の素性がますます怪しいものに思えていた。


 普通ならありえない。こんな王族でも貴族でもない、大商人の息子でもなさそうなやつが、これだけの金を持っているわけがない。ましてや「記憶が無い」とかわけのわからないことを主張しているこのガキの金だ。出所が怪しすぎるだろ。


 男は、札束を突きかえした。


「どうしたの。これじゃ足りない?」


「この金は受け取れねえ」


「えっ、どうして?」


「どうしてもだ。受け取れねえんだよ、こんな金」


「お金はお金でしょ。どうしてこのお金じゃだめなの」


「ヤバい金だったらどうすんだ、って話だ。たとえば、お前がどっかから盗んできた金とか。普通じゃぜったいありえねえ額の金を、お前は手に握ってんだよ」


「そんな……盗んでなんか――」


「記憶がないんだろ。じゃあ、それも盗んでないとは、言いきれないだろ」


「盗んで……盗んでなんかないよ! 絶対盗んでない!」


「なんでわかんだよ!」


「わかるよ! 僕はそんなことしないから!」


「説得力がねえんだよガキ!」


「ケチ!」


「うっせえ! 売れねえものは売れねえんだ。あきらめてさっさと帰れ」


 そう云って、男は札束を少年に放り投げるとまた自分の作業を始めた。


 むすっとほおをふくらませる少年。男はそれを無視して、少年のほしがっていた、由緒正しい銀の指輪を大切に箱にしまおうとする。


 少年はしばらくそれをながめてから、急に気がついたように云った。


「……あっ、おじさん。後ろからきれいな女の人が来てるよ。おじさんの商品がみたいって」


「なに」


 男が思わず振り返る。だが、そこにはひとっこひとりいない。


「……んだよガキ。きれいな女なんていねえじゃ――」


 そうして男がもとの体勢に戻ると――


 少年が、銀の指輪をいつのまにか手にしていた。


「――おいっ!?」


「うわあ、やっぱりきれいだね。傾けると七色に光るんだ。ねえ、つけてみていい?」


「だめに決まってるだろ! さっさと返しやがれ!!」


「あ、もうつけちゃった。サイズもぴったりだ」


「こ、こら、勝手につけんじゃねえ――」


 その時。


 少年のつけた指輪から、白い光がもれ始めた。


「……えっ」


「なんだ?」


 するとすぐに――


 その光は大きくふくらみ、間もなく周囲にまばゆい閃光を放ちはじめた。


「うわっ!?」


「ぐっ!?」


 とても直視できないほど、明るく光る銀の指輪。少年と男の周りに向けて、四方八方に光が散る。道を歩いていた町の住民らも、なにごとかと驚いた様子で二人のほうをまぶしそうに見た。


 指輪から、光の筋が何本も走る。少年は左手につけた指輪を遠ざけようと腕を必死に伸ばしながら、顔を背ける。商人の男は腕で光をよけながら、何が起きているのか把握しようとした。だがあまりの光の強さに、何が起きているのかまったくつかめない。


(ど、どうなってんだ、こりゃ――!?)


 きらきらときらめく光。それは、まだ近くにいた町長の目にもとまっていた。


「おお。あ、あれは――!!」


 驚きに目を見開く町長。まぶしそうに目を細める。そこには、少年の手元から真っ白な光がいくつもきらめいている光景が、確かに映っていた。


 ただひたすら光を散らす指輪。男は混乱して動けずにいる少年にさけんだ。


「指輪をはずせ!」


「で、でも……」


「いいから早く!!」


 男の言葉に、少年はおそるおそる左手につけた指輪を右手の人差し指と親指でつまむと、そのまま一気に引き抜く。


 とたんに、光の筋は止んだ。


 視界をさえぎっていたものが消え、男はゆっくりと光を避けていた腕をどけた。元通りの景色。ひとまず、なにも変わった様子はないようだった。


「おい、ガキ。目開けろ。もう大丈夫だ」


 男が云うと、少年はおびえるように少しずつまぶたを上げる。指輪をつけていた左手も指輪に触れている右手も、なんともなっていないことを確かめると、少年はほっと胸をなでおろした。


 少年はもう一度、手のひらに指輪を置き、それをみつめる。見る角度によって七色に光る指輪は、何事も無かったかのようにすましたまま、彼の小さな手の上に乗っていた。


「おじさん、これ……」


「知るもんかよ。俺が聞きてえくらいだ」男は若干、心に冷や汗をかいていた。


「客が試しにつけたこともあるが、いまみたいな光が出たことは無かった。お前、いったい何をしたんだ」


「し、知らないよ。僕はただ指輪をつけただけで」


「つけただけで、あんな強烈な光が出たってのか。そんなわけねえだろ。一体――」


 と。


 ぼう然としている二人のところへ、人影が現れた。


 男がそれに気づく。少年も遅れて。


 そこにいたのは、さきほど男の商売に文句をつけてきた、老町長だった。


 大きな杖を両手で地面につき、町長はにらむような目つきで、男――ではなく、少年の方をみつめる。


「あ、あの……」


「なんだよジジイ。俺たちゃなにもしてねえぞ。この指輪が勝手に光っただけだ」


 そう云う男の言葉が届いていないのか、町長はじっと少年の方を見据えたまま動かない。


 とまどう少年。男はもう少し強く云ってやろうと、口を開きかけたとき。


 突然、町長が両ひざを折った。


 ひざを地面に立て、頭を垂れる。杖を横に置き、両手を土につく。


 全く予期しない町長の行動に、少年も男も、とまどいを隠せない。


 そこへさらに、町長は口を開いた。


「白き聖者様とは知らず、これまでのご無礼、お許しくだされ!!」


「…………は?」


 男が面食らった顔で訊く。それにかまわず、町長は続けた。


「さきほどの、まばゆいばかりの聖なる光。あれこそ、白き聖者様の証。あなた様こそ、異国の王家の指輪に秘められた光の魔力を開放させられる、白き聖者様にほかなりませぬ。いままで気づくことができず、お恥ずかしい限り……申し訳なく思っておりますじゃ!」


「なんだって……」


 男は町長の言葉がうまく飲み込めずにいた。


(白き聖者? このガキが? んなバカな……)


 だが気づくと、二人の周りを町中の人々が取り囲んでいた。そして次々にひざを折り、二人の前にひれ伏す。


「聖者様!!」「さきほどの方が、やはり……」「いままでの失礼をおわびします」「聖者様~!」「白き聖者様……おお、なんとありがたい」そんな声がもれ聞こえる。人の輪はみるみるうちに拡大し、すぐに百人をこえる。そして皆が、少年に向かって平伏していた。


「おいおいおい、どうなってんだガキ。こりゃ、なんかすごいことになってるぞ」


「わ、わからないよ……僕、記憶ないし……白き聖者って、なに?」


「俺もよく知らねえが、なんだか遠く離れた島国を治めてる王族だって話だぜ」


「お、王族……?」


 二人がまさかそんな会話をしているとは思っていないのか、町長以下全町民が、さきほどの謎の光で完全に少年を白き聖者だと信じ切っているようだった。


「輝く金髪に、透けるような青い目。これが白き聖者様のしるしであると、町民もみな気づいておったのですが、まさかお一人でこの町におられるわけがないだろうと、みな戸惑っておったのです。そちらの方も、聖者様の護衛とは知らず、さきほどは失礼な態度をとってしまいました……。これまでの数々の無礼、ご容赦、ご容赦……!!」


 心から申し訳なさそうに何度も頭を下げる町長。地面に額をこすりつけんばかりに、頭を低くする。そんな町長にならって、周りの町民もみな頭を下げ続ける。


 少年は思わず男の方を振り返った。そうとう動揺しているのか、何も言葉を発しないが、目が「どうしよう」と訴えていた。


 男はしばらく考え込む。いま行うべき最善の策を導き出すために、彼は全力で頭の歯車を回転させる。


(……これは、利用するしかねえ)


 考えがまとまると、彼はぱっと顔を上げ、すばやく機転をきかせた。


「うむ。お前らの言うとおり、ここにおられるのは、なにを隠そう異国からはるばるやってきた白き聖者様だ。今日はお忍びで、この町にわざわざ足を運ばれたのだ」


(お、おじさん! 僕、お忍びなんかじゃ――)


(お前はだまってろ。なあに、ここは俺に任せとけって)


 ひそひそ会話する二人に気づかず、町長は恐れ多いという目で顔を上げる。


「おお、やはりそうでしたか……! 本当に、今日のことは謝っても謝りきれませぬ。必要であれば、この老いた町長の首を差し出しますゆえ、どうか町民だけは罪に問わぬよう、お願い申し上げますじゃ」


「いやいや、そこまでは求めん。お前らの誠意は十分に伝わっている。白き聖者様も、今回の件は寛大なお心で見逃すとおおせだ」


「おお、なんというありがたきお言葉……」町長は一気に涙を流しながら、声をふるわせた。


「その代わりといっちゃなんだが」男は云った。


「今日の宿を探しているんだが、じつはまだ決まってないんだ。町長の方で、この町の最高の宿を用意してくれねえか」


「も、もちろんでございますじゃ! この町最高、最上の宿を、すぐにご用意致します!」


「宿代は――」


「滅相もない! 白き聖者様に泊まって頂けるだけで、わしらは最高に幸せですじゃ! 貢ぎ物もたんと用意致しますゆえ、どうかお納め下さい!」


「うむ。悪いな。では案内してもらおうか」


 そう男が云うと、町民は宿を準備するために一気に散り散りになっていった。男はすばやく店の商品をまとめ上げ、いつでも出立できるようにする。


「お、おじさん……!」少年がおろおろしながら男に尋ねる。


「僕が白き聖者だって……王族だって、本当なの? もしそうじゃなかったら、僕ら、あの人たちをだましたことになるよ。それがばれたりしたら――」


「いんだよ。気にすんじゃねえ。向こうから頭を下げてきたんだから、間違いねえんだろうよ」


「で、でも……」


「今日は一日ダメだと思ってたが、最後に大逆転、ってやつだ。やっぱ俺の鼻に、間違いはなかったな」男は荷物をまとめると、立ち上がった。


「さあ、いきましょうか、白き聖者様」











 案内された宿は確かにこの町で最高の、格式と広さを誇っていた。


 部屋には十人くらいが泊まれるスペースがあり、二人で使うには十分すぎるくらいだった。窓からの眺望も、それなりにある。あくまで山すそにある小さな町であるため、豪華絢爛とまではいかないが、外にどこまでも広がる森と山の美しい景色は、むしろこうした宿の方が堪能できるに違いなかった。


 商人の男は、そんな宿の寝室に置かれた大きく広々としたベッドに腰掛け、思い切り背をのばすと、そのまま後ろへ勢いよく倒れた。


「いや~~、広い広い。いつもの安宿じゃ、身を縮めて寝てるからな。これだけ手足をのばせるのも久しぶりだ。これもお前のおかげだぜ。白き聖者さまさまだな!」


 そう彼が云った先にいる少年は、リビングにある木製のイスに腰掛け、どうにも釈然としないという表情をたたえていた。


「んだよ、辛気臭い顔しやがって」


「……僕たち、こんないい宿に泊まっていいのかな」


「気にすんじゃねえよ。あいつらが勝手に用意したんだ。ありがたく受け取っておけばいいんだよ」


「でも……やっぱりなにか、悪い気がするよ。僕が、その……白き聖者、っていう人なのかどうかも分からないし……」


「でもあいつらはそう思ってるんだろ。ならいいじゃねえか。どうせ長いこといるわけじゃねえんだし、あいつらも幸せでですじゃ~、とか言ってたじゃねえか。なら、ウソでもお前がその白き聖者のふりをしてれば、万事うまくおさまるってもんだろ」


「でも……ウソはやっぱりいけないよ。僕、やっぱり本当のことを――」


「やめとけって。そんな野暮なことすんな」


「やぼ……?」


 男はそれに答えず、ベッドから体を思い切り起こした。「そういや、指輪だよ、指輪」


 男が道具袋から、小さな青い箱を取り出す。それを手の中で開くと、さきほどの銀の指輪が顔を出した。


「まさかこいつに、あんな力があるなんてなあ……」


 男はそれをつまみあげ、まじまじと見つめる。指輪は何かを伝えたがるように、黄色に赤色に、青色に紫色に変化しながら、光り輝いている。


 少年はそれをみつけると、イスから立ち上がり、男の方へ寄ってきた。


「不思議な指輪だね、それ」


「お前。どうしてこれがほしかったんだ。色々あった中からこれを選ぶなんて、偶然じゃねえだろ」男がやや鋭く眼光を向ける。少年は、やや遠慮がちに云った。


「どうしてって言われても……本当に偶然なんだ。それが本当にきれいに見えたから、ほしいなって思ったんだ」


「勘、ってやつか……? よくわからねえな。ま、偶然でもなんでもいいけどな」


「おじさんこそ、その指輪、どこで手に入れたの? 由緒正しい、って云ってたけど」


 少年の問いに、男は言葉を濁した。


「あー……それはだな。なんつーか、由緒正しい家柄の人から授かったっつーか……」


「でも、白き聖者のものなんでしょ? じゃ、おじさんは王族の人と知り合いなの?」


「いや、そういうわけじゃねえんだが、その……王族のやつが落としたのを、拾ったっつーか……」


「……おじさん」


「……な、なんだ」


「……盗んだんだね」


「ぬ、盗んでねえよ!


「ウソだ。目が泳いでるもん」


「ち、違う。俺はだな、たまたまこれをやばい筋から手に入れた、っていう貴族のやつから買い上げただけで……」


「やっぱり盗品じゃないか」


「ま、まあ……そうともいうな」


 ようやく認めた男に、少年はため息をついた。


「どこの筋からなの。やっぱり白き聖者が関係してるの」


「そこまでは知らねえよ。俺はただ、これには強力な魔力が込められていて、元々高貴なお方がつけていた貴重な指輪だ、って聞かされただけだ」


「ほんとに?」


「本当だって。ってか俺だって知りてえよ。なんでお前がこの指輪を指に通したとたん、あんな光が出たんだか――」


 そこで、男は思いついたように、手にしていた指輪を少年に渡した。


「もう一回指に通してみろよ、これ」


「えっ……」


 少年がためらう。だが男は指輪を少年の前に突き出す。


「さっきの光がなんだったのか、また出るのか、もう一度落ち着いて確かめてえ」


 男の言葉に、少年も気おくれしつつ、ゆっくりとうなずいた。


「僕も、さっきは驚いてよく見えなかったし……うん。つけてみるよ」


 少年は男から指輪を受け取ると、右手でそっと、さきほどと同じ左の人差し指に通した。


 すると、みるみるうちに光の筋が――


「…………あれ」


 ――出ない。


 つけたとたんに強烈な光の渦に巻き込まれるものと思って警戒していた少年と男は、拍子抜けした。


「……なんだ、魔力切れか?」


「分からないけど……やっぱり、僕が光の聖者だなんて、なにかの間違いだったんじゃ――」


 そう云って少年が指輪を上からのぞきこもうとしたとき。


 突然、今度は放射状の青い光が真上に向かって放たれた。


「うわっ!?」顔に直接光を受けた形になった少年は、驚いて思わず後ろへのけぞった。その勢いで、背後にあったベッドに転がる。


「今度は青い光かよ! いったいどうなって――」


 そこで、男が気づいて云った。


「おい、ガキ! 腕伸ばせ! なにかいるぞ!!」


「えっ!? どこ?」


「指輪だ! なんでもいいから、指輪を前に突き出せ!」


「う、うんっ!」


 少年がベッドで後ろ手になりながら、左手を前へやる。


 するとそこに、青い光に照らし出された、長い髪の女性の姿が見えた。


 指輪の上で、空中に浮かぶようにして、現実感の無い半透明の女性がたたずんでいる。


 幾重にもかさねた、真っ白で裾の長い衣装を身にまとい、美しい青と白の宝石のはまった首飾りや腕輪をいくつもつけている。直線的な長い金色の髪を流した、青い目の神々しい女性。肌は珠のように白く、顔立ちは美しい。まだ二十代前半だろう。だが歳には不相応なくらい、芯から落ち着いた、清楚な雰囲気を醸し出している。性別は違うが、どことなく顔つきが少年と似ていると、男は思った。


 その女性は、少年の顔を見つけると、大きく安どしたような顔を見せた。


『レンヤ! ああ、よかった……。無事に転移できたのですね!』


 どうやら少年の知り合いらしい女性は瞳をうるませ、神に感謝するように両手を組む。少年も男も、突然指輪から現れた浮かぶ女性に驚き、口が開きっぱなしになっていた。


『遠くへ逃がしたまでは良かったのですが、それからの連絡手段を一切講じていなかったものですから……。まさかこんなに早く会えるなんて、夢にも思いませんでした。神に感謝します』


「あの……」


 ようやく、少年が声を絞り出した。


「あなたは……だれですか」


『えっ』


 女性は云い直す。


『だれって……私です。あなたの姉の、メイヤですよ』


「僕、その……」いいづらそうにしている少年へ、男が告げた。


「ここは正直に言ったほうがいいぜ」


「う、うん。あの……僕、実は……こっちの町に来てから、記憶が無くて……」


 全く予期していない言葉だったのだろう。少年の姉だという指輪の女性は、しばらく二の句が継げずにいた。


 少しして、ようやく少年の言葉をゆっくりと理解した女性が、口を開いた。


『記憶が……無い……?』


 明らかに動揺した様子の女性。だが、まっすぐに彼女へ向ける裏の無い少年の純粋な瞳が、ウソでないことを証明していた。


『まさか……そ、そんな……』


「本当なんです。僕も、どうにかしたいと思ってるんですけど……いまだになにも思い出せなくて……」


『記憶が……全てを忘れて……ああ』メイヤ、と名乗った女性はよほどショックだったのか、その場に力なく倒れた。


「あっ、だ、大丈夫ですか!?」


 少年が思わず駆け寄ろうとする。しかし、彼女の姿は少年がつけている指輪に合わせて揺れ動き、少年は近づけない。倒れてはいるが、体は指輪の上部に浮いたまま。男は試しに、半透明の彼女の体に触れようと手を伸ばしてみた。だが、腕はその体をすりぬけた。


(魔法か? 自分の姿を、どこか遠くから投影しているのか……)


 しかたなく少年が元の体勢に戻ったころ、メイヤは起き上がり、足腰に力が入らないながらも何とか立ち上がっていた。少年が声をかける。


「ご、ごめんなさい……僕のせいで」


『いえ。レンヤのせいではありません。きっと、極度の転移魔法があなたの体になんらかの負荷をかけた結果でしょう。でもまさか、記憶喪失をもたらすなんて、想定していませんでした……。ああ、白き神々よ。レンヤは一体、これからどうすればいいのでしょう……』


「なあ、ちょっと」そこで男がようやく口を開いた。


「こいつが記憶を無くした、っていうもんだから、なにがなんだか分からなくてよ。事情が全然わからねえから、一から説明してくんねえか」


『……この方は?』


 尋ねるメイヤに、少年は笑顔で答えた。


「僕の恩人だよ。良い人なんだ。この指輪も、おじさんのおかげで手に入ったんだ」


『まあ、そうでしたの。私の弟が、お世話になっております』礼儀正しく頭を下げてくるメイヤに、男は云った。


「いや、これくらい、どうってことねえよ。お安い御用さ。それより教えてくれ。こいつは、本当に『白き聖者』なのか」


『ええ。そうですね。ではそれも含め、ご説明致します』


 メイヤは憂いを含む沈んだ色の瞳を二人に向け、静かに話し始めた。


『私たちの国オルフェウスは、白き聖者と呼ばれる一族が昔から治めている島国です。白き聖者は、古くから邪悪な怪物を打ち滅ぼす聖なる力を持った血筋のことで、私とレンヤを含め、現在7人おります――いえ。いた、と言ったほうがいいでしょうね。レンヤはその中でも現王の息子、つまり、次期王となる者なのです』


「次期……ってことはつまり、レンヤは第一王子、ってことか?」


『そうです。レンヤはしきたりにより、オルフェウスの次の王になるべき者。もしくは、すでに王であるべき者なのです』


「……なんか奥歯に物がはさまった言い方だな」男の言葉に、メイヤはうなずいた。


『はい、すみません。実は――私たちの国は、昨日滅びました』


「えっ」そう声を上げたのは、少年だった。メイヤは悲しそうな目つきで話を続ける。


『私たちの島のはずれに、黒き穴と呼ばれる場所があります。ここは地下幾層にもかさなる長大な迷宮になっており、どこの世界につながっているのか、いにしえの時代から怪物が出現する場所となっています。私たち一族がこの国を治めているのは、この怪物に対抗するためなのです。一年に一、二度、怪物が多数発生する時期があり、私たちはそのたびに討伐にでかけます。その時々によって違いますが、この戦いはいつも激しく、一族から死者が出ることもあります。レンヤの――私の上にも一人、兄がおりましたが、四年前に怪物に不意を突かれ、致命傷を負ってこの世を去りました。


 そして三日前。その怪物が、また現れたのです。しかも今回は、これまでにないほどの数で、大挙しておしよせてきて――。いつも出現するはずの時期から大きく外れており、怪物の数もいつもの十倍ほどいたと聞いています。私たちはたいした準備もできず、ただ現れたあまりに多くの怪物になすがままにされるだけ……。それでも私たちは必死に抵抗を試みましたが、後から後から押し寄せてくる怪物の群れに、全ての町や村は破壊され、我々の一族もひとり、またひとりと倒れていき、ついに私たちのいる城にまで怪物がやってきてしまいました。


 多勢に無勢。とても勝ち目はありませんでした。そこで私は、第一王子であるレンヤだけでもと思い、私たちの国と昔から親交の深いそちらの町に、特殊な魔法で転移させたのです。本来なら一緒に、魔力を閉じ込めておける〔青き光の指輪〕をもたせたかったのですけど、なぜか城にあった唯一の指輪がどこにも見当たらなくて――。でも、そちらの方のおかげで指輪は手に入ったようですね。それだけでも幸運でした』


 まさか盗品(しかもメイヤの城から盗んだかもしれない)などとは云い出せず、男はただ苦い笑みを返すだけだった。


 少年はそれに構わず、メイヤに向かって云う。


「メイヤ――メイヤさんは、大丈夫なの」少年の言葉に、メイヤは目を伏せた。


『私の身より……レンヤは、自分の身を大事にすることだけを考えなさい。私たちの国は、きっといつかよみがえるわ。それまで――それまで、その町でしばらく身を隠しておくのよ』


「そんなのダメだよ! メイヤさんはまだその島にいるんでしょ? なのに、僕だけ記憶を無くしたまま、知らない町でじっとしてるなんて……」


『お願い、レンヤ。言うことを聞いて。私たちの国をまた復活させるには、あなたに生きていてもらわなくてはいけないの。あなたが、私たちの唯一の、希望だから――』


 と、言い終わる前に、彼女はなにかに気づいて後ろを振り返った。そして、ややあわてた表情になってまたこちらを向く。


『……どうやら、ここにも長くはいられないようです。これで魔法を切ります。そちらの方、お名前は――?』


「……俺か? 俺は、ランスだ」


『ランス様。どうか、レンヤをお願い致します。私たちは、あなたしか頼る人がいないのです。だから……。ああ、もういかねばなりません。レンヤに白き神々の祝福があらんことを……!』


「メイヤ! 待ってよ!!」


『元気でね、レンヤ――』


 それだけを云い残して、メイヤの姿は消えた。


 青い光がおさまり、宿の中にはまた何事もなかったかのように静けさが戻る。


 レンヤ、と呼ばれた少年は、ベッドの上でしばしだれもいなくなった空間へ視線を投げる。もう一度見えないか、またメイヤが姿を現さないかと期待するように。だがどれだけ待っても、少年と同じ色の髪、同じ色の目をした女性が戻ってくることはなかった。


 少年は視線を落としてうなだれる。その姿に、商人の男はなんと声をかけていいのかわからずにいた。


 あまりに――


 あまりに急激な展開に、男はその流れを頭の中で追うことで精一杯だった。


 町で偶然会った少年は、実は異国の王子様でした。その国は昨日怪物に滅ぼされて、少年は姉に魔法で遠く離れたこの町まで転移されてきました。でも無理な魔法がたたったのか、少年は過去の記憶を無くしていました。


 ――こんなこと、どうやって信じられる。


 だが男がみた、平常ならざる出来事の数々――少年がはめた指輪から強烈な光が散ったこと、この町の住民がみな少年に平伏し敬っていること、そして、指輪から青い光でかたどられた女性が現れ、少年の状況全てを説明したこと――が、男に理解と納得を強要していた。


 男は、いまの非現実的な少年の状況を否定できる根拠を、頭の中で探した。みんな、よってたかって俺をだまそうとしてるんじゃないか、だれかが仕組んだことなんじゃないか。そう思いたくもなった。だがそれにしては手が込みすぎているし、第一、彼にそんなことをして得をする者などどこにもいないはずだった。


 男は考えるのをあきらめた。とにかく、いま混乱しているのは俺よりも、あのガキの方だ。たぶん。


 男はベッドから立ち上がり、少年のそばによってそっと肩をたたいた。


「……まあ、よくわからねえが、いまの話が本当でもそうでなくても、とりあえずお前はこの町でしばらく暮らした方がいいんじゃねえか。町のやつらもみんなお前を助けてくれるだろうし。へたに出歩くよりも、ここの方がよっぽど安全――」


「僕、いくよ」


 少年は、つぶやいた。


 靴底に鋲を打ちつけたように、力強く。


「メイヤの――あの人のいる国へ、行く」


「おいおい、何言ってんだガキ」男は半分鼻で笑いながら云った。「あいつが言ってた通りなら、いまごろそのオルフェウスとかいう国は怪物であふれ返ってるぜ。むざむざ死ににいくようなもんだ。だいたい、お前その国へ行ってどうする気だ? 白き聖者の力とかで怪物を倒す気かよ。いまのお前は何にももってねえ、ただのガキ、子供なんだぜ。どうせ剣だってろくに使えねえんだろ。そもそもこの町から出る事だってできやしねえんだ」


 男が云ってのけると、少年は顔を上げ、男の方をじっと見つめてくる。


 反抗、かと思ったが、そうではない。どちらかというと、懇願するような目。


「……あー、ガキ。まさかとは思うが……俺について来いと?」


「お願いおじさん!! 僕、おじさんの言うとおり、剣も使えないし――記憶が無いから、魔法だって知らないんだ。おじさんがいたら心強いから、だから――」


「バカやろう。そんな危ねえ旅、できるわけねえだろ。 だいたい、俺には商売があんだ。そんなわけのわからねえことに首つっこんでいられるほど、ヒマじゃねえんだよ」


「なんだよ、ケチ!」


「い、いいやがったなこのガキ!!」


「何度でも言ってやる! ケチケチケチケチケチケチケチケチケチケチケチケチケチケチ!!」


「こんのやろう……いままでガキだと思って加減してきたが、もう我慢できねえ。鉄拳制裁だ!」


 殴りかかる男。それをかわす少年。広い部屋の中を、逃げる少年と追う男が駆け回る。


「待てガキ!!」


「おじさんのよれよれパンチなんて当たるもんか」


「言ったな!」


 そうやって追いかけっこをすることしばし。


 結局、健康的で若い少年が、まだ若いとはいえ不摂生な商人の男を息切れさせて幕が下りた。


「ハァッ、ハァッ……きゅ、休憩。ちょっと休憩だ……」


「なんだよおじさん。もう疲れちゃったの」


「うるせえ……こっちは一日中商売してていろいろすり減らしてんだ……」


「ただ橋の上で座ってただけじゃないか」


「だまれガキ……夜中にナイフで首筋をかき切るぞ……」


「卑怯者。――でも」


 少年はやや落ち込んだ様子で云った。


「おじさんが来てくれなくても、僕……一人でも行くよ」


 改めて決意するように、でも少しだけ不安そうに、少年がこぼす。ようやく息の整いつつあった男が、声をかけた。


「なんでそこまでこだわんだよ。あいつ――メイヤは、お前にこの町で隠れていてほしい、って言ってただろ」


「でも、このままずっとここになんて、いられないよ。ここの人たちには悪いと思うけど、記憶がないままで大切にされても、僕、居心地が悪いし……。それに、さっき会ったばかりだけど、僕、メイヤを助けに行きたいんだ。いま、僕のことを知っている一番確実な人はあの人だし、僕のお姉さん、っていうのも本当だと思う。……理由は無いけど、なんとなく、あの人が他人とは思えないんだ」


 少年が話すのを、男はベッドに転がりながら、改めて落ち着いて聞いていた。そして、考えをめぐらせていた。


 めぐらせながら、男は徐々に、考え方を変えつつあった。


(……はじめはとんでもねえ話かと思ったが、考えようによっちゃ、ボロいネタがいろいろ転がってるような気がしてきたぜ)


(ようは、危険な目に遭わねえようにすりゃいいんだ。あのガキは単純だから、なんとでもいってだませばいくらでも金が転がってきそうだし、あいつをダシに使えば、今日みたいに白き聖者を崇拝するやつらから、いくらでもせしめられそうだ。ぼろもうけ間違いなしじゃねえか)


(それにうまくいけば、オルフェウスとかいう国にとりついて、金品を――いや、それよりも貴族だ。貴族にだってなれる道も無くはねえ。少年の、白き聖者の力とかを引き出してうまく怪物を倒させて、国を救えば、一躍ヒーローだ。王族のメイヤは俺の顔を覚えただろうから、もしあの女を生きて助け出せれば、出世は約束されたも同然だぜ……。なに、ヤバいとなったらいつでもガキを置いて逃げりゃいいんだ。こっちは、ガキにつきあう義理もなにもねえんだからな)


 それだけ考えてから、男は口を開いた。


「ガキ。なんなら、俺も行ってやっていいぞ」


「えっ」


 一瞬、なにを云われたのか分からずに、少年は訊き返した。


「……本当? 本当に?」


「ああ。なんだかお前をみてると、俺もこう、やる気になってきたっていうか――やらなきゃ男じゃねえ、みたいな感じになってきてな」


「おじさん!!」


 少年は彼のやましい思いなど知るよしもなく、一も二もなくいきなり男に飛びついた。


「おわっ!? なんだ、やめろ!」


「ありがとう、おじさん! 僕、とってもうれしいよ!! おじさんがいてくれただけで、どれだけ心強いか――」


「わ、わかったから、ひっつくのはやめろ! そういうのは苦手なんだよ!!」


 少年は離れるも、また男のそばへ寄り、その右手を両手でつかんだ。そしてそのまま、握手だというように上下に振る。


「よろしくね、おじさん」


「ああ。っていうか、おじさんじゃねえ。俺はランスだ」


「よろしくね、ランス」


「呼び捨てかよ! 俺の方が年上だろうが。『さん』くらいつけろ!」


「じゃあ、僕は白き聖者だから『レンヤ様』って呼んでね、ランスさん」


「調子にのんな!」


 少年は安心したのか、うれしそうに満面の笑みを浮かべる。それは彼がこの日に見た中で、一番明るい少年の笑顔だった。


 ――ま、いいさ。


 男はベッドに腰掛け直し、はしゃぐ少年を眺める。こいつを使って、俺は好きなだけ稼ぐ。国にたどり着いて、怪物を一掃して国を再建して、うまくやってそれなりの身分をもらえれば、云うこと無しだ。もし無理そうなら、いつでもやめりゃいい。


 それに――


 白き聖者の力を使えば、俺の右目も、治るかもしれねえ。


 彼は右目を覆う仮面にふれた。少しだけ暗い過去に触れるように。そこからの決別の機会を、探るように。






 かくして、商人の男と異国の少年の長い長い旅は始まったのだった。







 お読みいただき、ありがとうございました。


 いや~、ランスとレンヤのハラハラドキドキの旅。絶体絶命の場面。はかない恋。そして、感動のラスト。いかがでしたでしょうか。ほんと、二人がまさかあんな結末をむかえるなんて。私も最初は想像していませんでした。でも、自分で書いていてなんですが、すごい作品になったと思います。感動です。もう涙がとまりません……。


 ――い、痛っ! 石、石を投げないで下さい! 危ないですから! 自分でも冗談が過ぎたと思っていますから、ちょ、ちょっとやめて――。






 ――すみません、茶番はここまでにします(苦)。


 この作品は「集まれ創作クラスタ!! 絵師文師お見合い合同企画」(http://artnovel0kikaku.web.fc2.com/)用に書き上げたものです。


 絵師と文師が組んでひとつの作品を生み出すことで、お互い刺激を受けようぜ! という企画で、組み合わせの結果、イラスト担当の「瑠々樒」様が描かれた絵に、私が文を添えさせて頂くことになり、このお話を書いた、という次第です。


 瑠々樒様描かれたイラストは私の好みにドンピシャで、見たとたんにすぐ作品の構想がわいたので、私にしては珍しく文章をガンガン書くことができました。元々私はファンタジー系の小説を書いていたので、こういうライトなイラストをながめていると、どんどん書きたいことが出てきて――


 ――で、あまりに構想をふくらませすぎたため、結果できたのが「長編作品っぽい小説の導入部分のみ」でした。


 とりあえず瑠々樒様には喜んで頂けたみたいで、良かったと思っています。私としても、ひさしぶりにファンタジーということで、自分なりにかなり力を入れたつもりです。いまUPされているコメディ作品にはないような表現や描写も入れたりして、そういう意味では、コメディ要素をまじえつつも結構マジメな(?)小説に仕上がっていると思っています。もちろんまだまだ修行不足ですが。


 ……で、続きは? という話ですが、あいにくいまのところ書く予定一切がありません(苦)。


 実はこのお話に出ていない裏設定なんかも自分の中ではあったりして(実はレンヤの記憶は……とか、実はメイヤがオルフェウスを……とか)、いろいろ妄想は膨らむばかりなのですが、いかんせんそれを文字にする時間がつくれそうにない。メカプリの方で精一杯な状況なので……。「どうしても続きがみたい!」というお声があるようなら、考えるかも?


 ――という意志軟弱な私ですが、とりあえずこの作品はここまで、ということで。瑠々樒様のイラストあってこその作品です。少しでも面白かったと思っていただけたら、うれしいです。


「集まれ創作クラスタ!! 絵師文師お見合い合同企画」(http://artnovel0kikaku.web.fc2.com/)には、他にも私が決して書けないようなすばらしい作品が目白押しです。ぜひ一度のぞいてみてください。そしてもし面白いと感じたら、その作者様にツイッターでも何でも、ひとことだけでもお伝え下さい。そのメッセージが絵師・文師にとってのかけがえのない励みになります。どうかよろしくお願いします。

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[一言] 面白かったです! 少々テンプレな展開ではありましたが、続きが気になるお話でした。ぜひ続きを書いていただきたいです。楽しみにしています。
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