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選ばれなかった未来
本来、死ぬはずだった人物が生きていた。
下級貴族の青年。
三年後、暗殺事件の隠蔽のために消される男。
――今は、まだ生きている。
それを知った瞬間、私は震えた。
「助けたかった?」
ヴァレロの問いに、答えられなかった。
「未来を変えれば、救える者もいる。だが同時に――」
「別の誰かが、代わりに死ぬ」
ヴァレロは容赦なく続ける。
私は理解していた。
理解していたからこそ、怖かった。
未来は、一本の線じゃない。
私が触れるたび、無数に枝分かれする。
――どれが、最善なのか。
夜、部屋に戻り、私は一人で問い続けた。
それでも答えは出ない。
「……それでも」
私は、進む。
止まる勇気より、
進んで壊す覚悟を選ぶ。




