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裏切りの準備
社交界は、噂がすべてだ。
「最近のルシア様、冷たいらしいわよ」
「宰相に取り入っているとか……」
聞こえている。
すべて、聞こえている。
それでも、止めない。
私は、あえて人を遠ざけた。
親しかった令嬢の誘いを断り、
助けを求められても首を横に振る。
「ごめんなさい。今は、余裕がないの」
それは嘘ではない。
未来を変える余裕など、どこにもない。
ある夜、エドガー王太子と顔を合わせた。
「最近、君の噂を聞くよ。大丈夫かい?」
心配そうな声。
三年前も、同じだった。
私は微笑み、距離を測る。
「お気遣いありがとうございます。でも――」
言葉を選ぶ。
「これ以上、親しくするのは控えた方がいいかと」
一瞬、エドガーの目が揺れた。
「……どういう意味だい?」
「誤解を招きたくありませんから」
それが、最初の亀裂。
私は、未来で私を切り捨てた人間から、
先に距離を切った。




