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未来を売る女
宰相ヴァレロは、私を客としてではなく、
危険物を見る目で見ていた。
「未来を知っていると言ったな、ルシア」
「ええ」
机を挟んで向かい合う。
この距離で、私は三年後に処刑される。
不思議と、恐怖はなかった。
「では聞こう。その未来とやらを、何に使う」
私は一瞬だけ迷い、そして答えた。
「売ります」
ヴァレロの視線が鋭くなる。
「情報を、ですか」
「ええ。あなたに」
それは、命綱を差し出す行為だ。
同時に、首輪を自分で嵌める行為でもある。
「明後日、北区の穀物倉庫で横領が発覚します」
「……」
「関係者は全員、あなたの派閥です。切られる前に、切ってください」
沈黙。
やがて、ヴァレロは低く息を吐いた。
「君は、自分が何をしているかわかっているな」
「ええ。あなたの敵を、減らしています」
それは、私自身の敵を増やすことでもあった。
――これが最初の一手。
未来を知る令嬢ではなく、
未来を“使う”女になる。




