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2-1. 期待の新人パーティ『ノヴァウィング』





一行は、国境を越え、隣国「ユースティス王国」の首都に到着した。




ユースティスは、ギルド連合に所属して入るがギルドの中心地である大国とは異なり、自由な気風を持つ交易国家だ。


「ここなら、旧体制の目も一時的に届きにくい」


シリルは頷き、早速、首都ユースティスの冒険者ギルド本部へと向かった。



ギルドの受付嬢は、シリルたちの一行を見て戸惑っていた。シリルは文官風、ナナーリカは古めかしいローブ、ジオルドルは狩人の装い、そしてガレオンは武器も防具もなし。唯一普通そうなのは、駆け出し魔女のような格好のカグリナ。極めつけは、真っ黒な影のようなリオヴェンと、ピンク色の獣人のブリルだ。




「あの…皆さんの登録は、個人の登録? それともパーティ? …ん?」



「我々は、初めてこの国に来たので、全員個人でも登録が必要かと思うのだけど、どうかしら? 『新星のノヴァウィング』。パーティとしても登録します」


シリルは、登録用紙に堂々と名前を記した。

リオヴェンは、ギルドホールの隅の影に潜み、周囲の冒険者の視線と魔力の動きを観察していた。他の冒険者たちは、ノヴァウィングの異様な構成を見て、嘲笑を浮かべている。



(彼らは、このチームの真の力を知らない。技術、知性、そして絆が、既存のどのギルドよりも強力なことを)




ノヴァウィングの初期ランクは、当然ながらF級からのスタートだった。




シリルは、手始めに、誰もが避けるような低ランクであり、効率が悪いクエストを選んだ。



クエスト:『街の水道の詰まりを解消せよ』




「水道の詰まり?」


ガレオンが首を傾げる。


「俺が拳でぶち破れば一発だろ!」

「待って、ガレオン」


シリルが止めた。


「水道は複雑な構造だ。物理的な破壊は二度手間になる」




ここで、ナナーリカとジオルドルのコンビが本領を発揮した。


ナナーリカは、水道の設計図を見ただけで、「これは増設によるの『多重螺旋構造』が原因。水属性の魔力で、『氷のトルネード』を使い逆流させれば、詰まりの原因を破壊せずに押し出せます」と、規格外の解決法を提示。




しかし、ナナーリカは力の制御が苦手だ。そこで、ジオルドルが土魔法で水道管の周囲の土壌を一時的に固定し、水道管自体も強化。ナナーリカの魔力が暴走しないよう二重の境界線設定した。



カグリナがナナーリカの魔力調整を補助し、ナナーリカの氷のトルネードが起動。詰まりは一瞬で解消した。



「すごい! 水道がすぐ直ったぞ!」



街の人々は歓喜した。


ノヴァウィングは、この手の誰もが面倒がる技術系のクエストを、驚異的な速さと効率で次々とクリアしていった。




クエスト:「魔獣の巣の生態を記録し、根本的な対処法を提案せよ」


リオヴェンが影に隠れて生態分析を現場で担当。ナナーリカの知識とシリルの発想合わせれば記録と発案も簡単だった。







クエスト:「遠隔地の薬草を、収穫から鮮度を落とさず最速で運べ」


ナナーリカの知識で鮮度を落とさない魔法を作り出し、ガレオンが不休で運んだ。





クエスト:「洪水災害地域での復旧作業」


ガレオンとジオルドルが力仕事を担当し、カグリナとリオヴェンは炊き出しを担当。ナナーリカとシリルは新たな被害が出ないよう対策を検討した。





彼らがクエストを達成するたびに、ギルド本部には驚きが広がった。



「ノヴァウィングの討伐報告書は、まるで専門家の論文のようだ…」



「E級の仕事で、S級並みの成果を出すな!」




彼らのランクは、すぐにE級、E級からD級へと、一週間足らずで駆け上がった。






D級冒険者となったノヴァウィングに、初の魔物の討伐と、周囲の浄化という本格的な戦闘クエストが指名で入った。討伐対象は、夜の森に出現する『瘴気の魔物』。



「ここが、リオヴェンにとって最も危険な戦場になる」


シリルは警告した。

闇属性であるリオヴェンは、瘴気の魔物と同系統の魔力を持つため、魔物の動きを正確に察知できるが、同時に、彼自身の存在が魔物に見つかりやすいという危険性があった。


ブリルとナナーリカ、その護衛にジオルドルは宿で待機。残りのメンバーで討伐に挑んだ。




 

夜の森。


リオヴェンは影に溶け込み、カグリナの護衛と偵察に集中していた。


シリルとガレオンは別部隊で探索、二班体制で討伐する予定だ。



リオヴェンは魔物の気配を感じると、その近くまで潜み情報を掴む。


「三時の方向、濃度が強い。その先に魔物の本体がある」


リオヴェンはカグリナに情報を送った。そしてシリルにも伝えるために影の中を移動する。



カグリナは、リオヴェンが危険を冒して得た情報に感謝を込めるように、白い浄化の炎を放つ。その炎は、魔物そのものを焼くのではなく、魔物が吐き出す瘴気を無害なものに変えていく。


「ーーシリル、九時の方向。カグリナが浄化しながら進んでいる。本体が見え次第たたけ」


「わかったは。ガレオンに指示する。くれぐれもカグリナを守るのよ」


「ーー分かってる」



リオヴェンが急ぎ、カグリナのところへ戻ると瘴気の魔物の手が、カグリナの背後から迫った。影の中のリオヴェンを感知した魔物は、リオヴェンを警戒するのではなく、浄化をしているより強い魔力源であるカグリナを狙ったのだ。



(しまった!)


リオヴェンは、自らの存在を露呈するのを厭わず、闇魔法で魔物の動きを瞬間的に拘束する。



「カグリナ! 右後方!」


リオヴェンの警告と同時に、リオヴェンの姿が闇から一瞬露呈した。


カグリナは振り返ると、拘束された魔物に炎の魔弾を撃ち込み、魔物を消滅させた。彼女は、リオヴェンの安否を確かめるように、静かな視線を投げかけた。



「……リオヴェン、無事ですか?」


「ああ。無事任務を遂行したよ。こちらは浄化を続けよう」


リオヴェンはすぐさま影に戻り、冷静を装った。しかし、カグリナの瞳が、彼を深く心配していることを、リオヴェンは知っていた。




カグリナたちが浄化を続け、本体が顕になった魔物は無事ガレオンが討伐した。






ノヴァウィングは討伐クエストも瞬く間にクリアし、ギルド内での評判は一気に高まった。



「あいつら、技術と戦闘力のバランスが異常だ」



「特に、あのピンクの獣人の子どもが、いつも現場で楽しそうにしているのが不気味だ……」


ブリルは常にチームのムードメーカーとして活躍していた。ブリルがいると不思議と力が湧いてきて、ご利益があるようだった。



そして、彼らがギルドに登録して1ヶ月が経った頃、ギルドの掲示板に、新しいランキングが貼り出された。



『ノヴァウィング』――C級への昇格が決定した。



リオヴェンはギルドの隅で、そのランキングを見つめた。彼らは、旧体制の腐敗した力とは全く違う、新しい力を武器に、この世界での足場を固め始めている。



(この街で得た経験と物資は、忌地を救う力になる。そして、俺は、この光を、永遠に守り抜く)



彼らの噂は、ギルド連合の本部がある大国へと、静かに、そして確実に向かっていた。




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