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3-9. ノヴァウィングの活躍




帝国のメンツは完全に潰れ、外交的な信用も失墜したバルトス。逆上した彼は、本国への言い訳を作るため、そして自分を侮辱したノヴァウィングを根絶やしにするため、視察団の護衛として潜伏させていた正規軍の一個大隊に、サラムへの総攻撃を命じる。





「全軍、突撃! 抵抗する者は皆殺しだ! 街の設備は破壊して構わん、ノヴァウィングの首を獲れ!」



バルトスの叫びと共に、重装騎兵と魔導工兵からなる帝国の精鋭部隊がサラムの正門へと殺到した。




使節団の人々は悲鳴を上げながら避難し、街の住民たちは怯え、逃げ始めた。しかし、シリルは展望塔の上にのぼり、懐中時計を眺めながら静かに数えていた。




「……三、二、一。リオヴェン、ゲイル。第一段階を開始してください」



通信魔道具にそういうと、二人はそれぞれ動き始める。




街の門を突破しようとした帝国の騎兵隊が、突如として激しい衝撃に襲われた。



ゲイルが展開した、超高圧の空気の断層真空のエア・シュレダーに阻まれたのだ。



「悪いけど、ここから先は『立入禁止』だよ!」



ゲイルの風は、矢や魔法弾をすべて空中で叩き落とした。



さらに、焦った歩兵隊が脇道から侵入しようとすると、ジオルドルが地面に手を当て、仕掛けていた魔法を起動した。



「流砂の牢獄デザート・ジャイル

強固だったはずの石畳が、一瞬にして底なしの流砂へと変わり、重装備の兵士たちは自らの鎧の重さで砂の中に沈み込んでいく。


あっという間に兵士たちは飲み込まれ、残った兵士たちは戦意を喪失してしまう。





「化け物どもめ! 後ろから回り込め!」




混乱する帝国軍の指揮官たちが、残った兵士たちに命令する。その進行は影の多い裏路地へと兵を向けられた。しかし、そこはリオヴェンにとって最高の狩場。そうこれはここまで進行することも想定した作戦だった。



「……貴方たちの影が、俺を呼んている」




闇の中から伸びる無数の黒い触手が、兵士たちの手足を音もなく絡め取りっていく。叫ぶ暇さえ与えず、兵士たちは次々と影の中へと引きずり込まれ、無力化されていった。



バルトスは街の中心で、その様子を確認していた。彼は自身の周りにいる兵士以外はもう役に立たないことを悟った。



ついにバルトスは、禁忌の魔導兵器である『大焦熱の魔晶砲』を運び出させた。

これは世界対戦時に作られ、現在は使用を禁止とされている危険な魔道具。


この作戦が失敗しそうな時には使うように、全ての証拠を消し去るようにと、帝国の重鎮たちが密かに運ばせたものだった。


「街ごと焼き尽くせ! 灰になれば、誰が勝者かなど関係なくなる!」



放たれた巨大な火炎の奔流。サラムの街が飲み込まれるかと思われたその時、街の中央からカグリナが歩み出てきた。





彼女は杖を掲げることもなく、ただ一歩、前に出る。



「その程度の粗末な火で、私から何を奪うつもりですか?」



カグリナが手をかざすと、襲いかかった爆炎は彼女の手の平に吸い込まれるように収束し、小さな、しかし超高密度の蒼い火球へと凝縮された。



「返すよ、これ。……貴方たちの悪意を添えて」



彼女がその火球を軽く弾くと、それはバルトス目掛け飛び、みごと着弾。帝国軍の魔導兵器を、周囲の兵士に傷一つ負わせることなく、兵器の心臓部だけを正確に溶かして沈黙させた。



カグリナの緻密な火の操作技術には、過去の優秀な魔道具では太刀打ちできなかったのだ。




戦闘はわずか一刻ほどで終了した。


帝国の大部隊は、ノヴァウィングのたった数名によって、誰一人として街の深部へ入ることなく無力化された。



バルトスは、冷たい砂の上に這いつくばって、シリルに見下ろされている。



その目の前に、シリルが近づいていく。



「バルトス殿。他国の使節団の前で、非武装の街を軍隊で襲撃した。……この事実は、明日には世界中の新聞に載るでしょう。ゼノス帝国という名は、今日をもって『蛮族の国』へと成り下がりました」



シリルは冷徹な瞳で、かつての仇敵を見下ろした。



「貴方の負けです。……サラムの住民に、そして我々に、正式な謝罪と賠償を。さもなくば、リオヴェンの影が貴方の寝室まで追いかけることになりますよ」



バルトスは絶望に顔を歪め、ただ震えることしかできなかった。


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