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ドラゴンのぬいぐるみ

作者: 口羽龍

 太田聡子おおたさとこは都内に住む大学2年生。ここにやって来てもう2年目だ。すっかりここでの生活に慣れ、ここでやっていけると思い始めてきた。だが、まだまだ大学では学ぶ事がある。そう思うと、まだまだだと感じている。卒業まではあと2年ちょっとある。その間に、どんなことを学ぶんだろう。いずれにしろ、これからの人生に大切な事に違いない。


 聡子は東北の山村に生まれた。実家は農村で、祖父母は農家、父は会社員、母は専業主婦だ。兄弟姉妹はおらず、聡子は大切に育てられた。そんな聡子は成績優秀で、東京の大学に進学する事が決まった。東京に旅立つ時には、みんなが喜び、最寄り駅では同じ集落の人々が集まり、聡子を見送ったという。


 聡子はいつものように目を覚ました。今日も大学がある日だ。早く出発しないと。


 と、インターホンが鳴った。こんな朝早くに何だろう。里子は玄関を開けた。そこには宅急便がいる。


「宅急便でーす」


 宅急便は箱を持っている。誰からの贈り物だろう。聡子がその贈り物を受け取ると、宅急便の男は聡子の部屋を後にした。


 部屋に戻った聡子は、送り主を確認した。そこには、中川歩美なかがわあゆみと書かれていた。幼馴染だ。どうしたんだろう。


「あれっ、歩美ちゃんから?」


 聡子は首をかしげた。歩美からは何の連絡もなかった。なのに急に、どうしたんだろう。頑張っている聡子へのプレゼントだろうか?


「何だろう」


 聡子は箱を開けた。そこには、赤いドラゴンのぬいぐるみがある。赤いドラゴンのぬいぐるみはデフォルメしたようなデザインで、とてもかわいらしい。


「ドラゴンのぬいぐるみ?」


 だが、聡子は疑問に思った。どうしてこんなのを送ったんだろう。


「どうしてこんなのを」


 聡子は気になって、歩美に電話をした。だが、歩美が電話に出ない。どうしてだろう。


「あれっ、電話に出ない・・・」


 聡子は電話を置き、時計を見た。そろそろ大学に行く時間だ。早く部屋を出ないと。


「そろそろ大学に行かないと」


 聡子は部屋を出て、大学への道を歩き出した。大学までは歩いて10分もかからない場所にある。辺りには多くの若い男女が歩いている。彼らはみんな、大学生のようだ。とても賑やかな通りだ。


 と、聡子は振り向いた。誰かの気配を感じたのだ。いったい誰だろう。見えないな。


「ん?」


 聡子は首をかしげた。今さっき、後ろから誰かに付きまとわれているような気がした。でも、何にも見えない。


「誰もいないな」


 聡子は再び歩き出した。徐々に大学の建物が大きく見えてきた。そろそろ大学の敷地内だ。そう思うと、今日も頑張らないとと思えてくる。


 再び聡子は振り向いた。だが、やはり誰もいない。明らかにおかしいな。誰かに付きまとわれているように見えるんだが。


「誰だろう」


 だが、聡子は思った。そんな事でうじうじしていたら、大学にも影響が出てくる。あまり気にしないようにしておこう。


「まぁいいか」


 聡子は大学の敷地内に入った。その時、聡子は知らなかった。赤いドラゴンが後ろにいるのを。




 夕方、今日受ける講義を終えて、聡子は大学の敷地内から出てきた。今日も大変だったけど、ためになる事ばかりだった。これはきっと、これからの日々に役に立つだろう。


「さてと終わった終わった。帰ろう」


 聡子は自分の部屋に向かった。だがその時何かの気配を感じた。聡子は振り向いたが、誰もいない。


「えっ!?」


 聡子は首をかしげた。今朝からこんな事ばかりだ。明らかにおかしい。いったい何だろう。


「うーん、いないなー」


 聡子は再び歩き出した。そろそろ部屋のあるマンションにつく。いろいろあったけど、今日は疲れたので、眠ろう。


 聡子は部屋までの通路を歩いていた。マンションには様々な国籍の人が住んでいて、いろんな言語が聞こえる。だが、今の時間は静かだ。


 ふと、聡子は振り向いた。だが、そこには誰もいない。


「何だろう」


 もう気にしないようにしよう。里子はそう思い、部屋に入った。部屋に入るとすぐに、聡子はベッドに横になった。今日も色々疲れたけど、明日もあるから頑張らなければ。


「はぁ・・・」


 聡子は次第に眠くなり、寝入ってしまった。


 聡子が目を覚ますと、そこは朝の自分の部屋だ。もう朝が来てしまったのか? 時間的におかしいじゃないか。まさか、夢だろうか?


「ん? ここは?」


 と、聡子は何かの気配を感じて、振り向いた。そこには赤いドラゴンがいる。赤いドラゴンはぬいぐるみとは違って、ごつくでかっこいい。あのぬいぐるみとは正反対だ。


「キャー!」


 聡子は思わず叫んでしまった。だが、何にも起きないし、誰も助けに来てくれない。赤いドラゴンは聡子に大きな顎で噛みつき、噛みついた。聡子は何も抵抗できなかった。


 聡子は目を覚ました。夏ではないのに、汗をかいている。やっぱり夢だったようだ。よかったよかった。


「ゆ、夢か・・・」


 だが、聡子は気になった。今さっきの夢は何だろう。あと、歩美からもらった赤いドラゴンは何だろう。どうして歩美は赤いドラゴンを贈ったんだろうか? かわいいからだろうか? もっと別の意味がありそうで怖い。


「あの夢は何だろう」


 聡子は気を落ち着かせるために、テレビをつけた。テレビではニュースがやっている。聡子は見ていたが、なかなか好きになれなかった。やっぱりバラエティ番組が一番だと思っていた。


「ニュースでも見よう」


 と、ニュースには行方不明事件の事がやっていた。よく見ると、歩美の事をやっている。歩美の家の中には様々な人々が入っている。いったい何だろう。全く見当がつかない。そして、しばらく見ていると、歩美が昨日の夜から行方不明になっているという内容だ。


「えっ、歩美?」


 聡子は呆然となった。歩美の身に何があったんだろう。


「なんでこんな事に・・・」

「ガオー!」


 と、何かの声が聞こえた。夢の中に出てきたドラゴンにそっくりだ。いったい何だろう。


「えっ!?」


 聡子は振り向いた。そこには赤いドラゴンがいる。今日もらったぬいぐるみとはまるで正反対の見た目だ。


「キャー!」

「グルルル・・・」


 聡子は悲鳴を上げた。だが、赤いドラゴンはその叫びを全く気にせずに、聡子に噛みついた。聡子は驚いている。まさか、こんなのが襲い掛かってくるとは。


「イヤーーーーー!」


 そして、聡子は殺された。だが、遺体は見つからなかったという。残っていたのは、聡子の血だけだったという。




 その翌朝、信二しんじはポストを見ていた。と、ポストの中には、段ボールに包まれた何かがあった。信二はそれを手に取った。家の中でどんなのか確認しよう。


 信二は開封した。その中には、かわいい赤いドラゴンがある。


「あっ、ドラゴンのぬいぐるみだ! かわいい!」


 信二は送り主を確認した。それは、大学のガールフレンド、聡子からだ。


「聡子からの贈り物?何だろう。開けてみよう」


 信二は喜んでいた。だがその翌日、信二は突然、姿を消したという。姿を消した信二の部屋には、信二の血が残っていたという。

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