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09 ジェラルドとの模擬対戦


「リリアナは今日は寮に帰るの? それともメアリ王女殿下と一緒に王宮?」

「さあ……? どっちかな?」

「寮だったらリリアナと一緒に帰りたかったのに」

「リリアナは俺とローズウッド家に行ってもいいんだぞ」

リリアナとアルヴィンの間にナシュダールお兄様が身体を割って入ってきた。

「お、お兄様!」

「アルヴィン、俺の目が黒いうちは妹に手出しはさせないからな! リリアナ、リボン似合ってる。誰にもらったんだ?」

「メアリ様からよ、お兄様」

「……くっ!」

アルヴィンがナシュダールお兄様を恨みがましく睨む。


「リリアナ! 帰るわよ」

「あ、メアリ様が呼んでるから行くね!」

ナシュダールお兄様が学園で私と会えるようになってから、監視の目が厳しいのよね。アルヴィンともなかなか話が出来なくて、寂しい限りよ。


「今日は王宮に帰るわ。リリアナも一緒に帰るわよ」

「はい、メアリ様」

「リリアナー!」

うげっ! レイノルドが手を振ってこちらに走ってきた。

「今日は寮? 王宮? どっちに帰る?」

「レイノルドお兄様! わたくしがリリアナと帰りますから邪魔しないでくださいまし!」

メアリ様は私を気に入ってくれているので、親きょうだいでも容赦しないところがある。

「えー!? じゃあメアリが居てもいいや」

アルヴィンとナシュダールお兄様が側に居ることに気が付くと、レイノルドは2人に対して勝ち誇った顔を見せた。当然、2人とも憤慨している。

何これ、超メンドクサイ……。


「……レイノルド様はオマケですよ。勘違いしないでくださいね」

と念押ししたらショボーンとなって抜け殻みたいになった。アルヴィンとナシュダールお兄様の機嫌も直った。

「……馬車の相乗りは仕方ありません。レイノルド様もご一緒しましょう」

その言葉で、抜け殻だったレイノルドが元に戻った。

毎日こんな感じなんである。


王宮に戻ると、私はレイノルドに追いかけ回される。

士官たちや侍従たちにはお馴染みの光景になっているようだ。

いや、殿下のお戯れ、誰か止めようよ……。

一度捕まると、レイノルドの私室に連れていかれて、抱きしめられること数回。はっきり言って貞操の危機なんだけど!

で、今日もレイノルドに捕まって抱きしめられている。しかし、今日はいつもと違う気がする。


『バラあな』(このゲーム)って18禁ではなかったから、(エッチ)なことはされないはずなのに……。

「えっ!?」

どうして、スカートを(めく)ってパンツを脱がそうとするの!?


「……いやっ……やめてレイノルド!」

「リリアナ、僕と気持ちよくなろう」

ぶわっと全身の汗腺から冷たい汗が噴き出たように感じた。私の中の遺伝子レベルでレイノルドを全拒否しているっ!!

レイノルドの胸を押してレイノルドの部屋から飛び出すと、自分の部屋に向けて逃げる。

「待って! リリアナ、僕の部屋に戻って!」

レイノルドが追いかけてくる。

必死の全速力も虚しく、廊下でつまづいて床に転がった私はレイノルドに捕まる。

「……はあ、はあ……」

「はあ、リリアナ……戻ろうか」

「───殿下? その女性はいかがなされたのです?」

城の者に声を掛けられ、気が緩んで涙を流してしまった。

「……涙が! 何処かお怪我でも!? 医務室へお連れ致します」

「あ、ああ……ジェラルド、頼む」

レイノルドは引き下がって、自室の方へ歩いていった。


「……助かりました。あの、ありがとうございます」

「リリアナ・カルダス……キミが……?」

顔を赤くしたジェラルドがリリアナの足首に巻き付いている布に気付く。

「足に布が……」

「……布?」

リリアナは全身が燃えるほどに恥ずかしかった。足からサッと布を抜くと、手の中に丸め後ろ手にして背中に隠す。

「も、もう大丈夫ですから」

ジェラルドが立ち去るのを待って、リリアナも立ち上がると、自分の部屋に戻る。


リリアナが握り締めた手を広げると───パンツ。

「~~~もう! あのエロ王子!!」

『えりな』が『バラあな』をクソゲーと断言する理由のひとつが“王子の性格が残念”なのだが、ハッキリ言うと王子(レイノルド)所謂(いわゆる)ヤンデレだ。

「何だか私の知ってる内容と違ってきてない!?」

ゲームが始まるよりも前の中等部の間にレイノルドに私の初めてを奪われそう……!

『えりな』はリリアナの頭を抱えた。


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


翌日、リリアナの3限目の授業は剣術だった。

「模擬対戦の相手は同じくらいのレベルの者に合わせたつもりだ」

リリアナの対戦相手は、ジェラルド。

「昨日の……」

「俺はジェラルド・ハンスブルグだ。キミと同じクラスだったんだけど、気付いてなかったんだね」

「……ごめんなさい」

「謝らなくてもいいよ。それより、キミ……」


「───始めっ!」

打ち合い開始の合図がされたので、リリアナはジェラルドの右を狙う。リリアナの初手を難なく防御してかわすと、ジェラルドは左を狙った。

リリアナも剣で防御すると、ジェラルドから突きの連続攻撃を受ける。

いくら模擬対戦とはいえ、一撃が命取りとなるのにこんなに集中攻撃をされるなんて、と『えりな』は憤慨する。

防御した瞬間にジェラルドの剣に突きを当てると、ジェラルドが尻餅をついた。そこをリリアナはジェラルドの首筋に自身の剣を当てる。

「───そこまで!」


「……強いなあ……」

「……こう見えてもメアリ様の護衛ですもの」

「決めた!」

ジェラルドはすっくと立ち上がると、リリアナの前に出て顔を赤く染め、胸に手を当てて宣言する。

「リリアナ、結婚を前提に俺の婚約者になって欲しい」

「……はい?」

どこに惚れられる要素があったの!?

「俺は本気だよ」

ジェラルドはリリアナに向けて綺麗な笑顔を見せる。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

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