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33 コンラートと過ごす夜

今回は更新が遅くなり、大変お待たせ致しました!


「腹は満たされたか?」

コンラートは『えりな』に訊く。

「バッチリ!」

『えりな』は手でOKマークを顔の横で作ってみせた。それを見たコンラートは、口角を上げて満足そうに微笑む。

「よし、すぐに出発するぞ」


昨日と同じように、コンラートがリリアナの腰を掴んで馬に乗せると、セドリックが「今日は俺がリリーを……!」と叫んだ。

「……セドリック様?」

セドリックは咳払いをしてから照れくさそうにリリアナに訊ねる。

「リリー、今日は俺の馬に乗らないか?」

少し考えてから、セドリックの馬に乗ることを了承した。

「コンラートさん、折角乗せて頂きましたけど、今日はセドリック様の馬に騎乗しますね」

コンラートに断りを入れると、笑顔なのに寂しげな顔をされた。『えりな』はズキンと胸が痛くなる。


(何これ? 私がコンラートさんに対して悪いことをしたような気分……)


コンラートの馬から降ろしてもらうと、今度はセドリックがリリアナをひょいと抱え、軽々と馬に乗せた。そして、自身もひらりと馬に跨がる。

「俺の身体にしっかりと腕を回せ。落ちるぞ」

「は、はい」

セドリックの腰に抱きつくように腕を回すと、コンラートとは違った(たくま)しさを感じた。セドリックは軍人だから当たり前だが、普段からの鍛え上げられた強靭(きょうじん)体躯(たいく)だ。筋肉質でがっしりとしている。

セドリックは馬上で外套(がいとう)を羽織り、リリアナも外套(がいとう)に包まれる。

「リリーは風を直接受けない方がいいだろう。冷たい風は身体に障る」

「……セドリック様、ありがとうございます……」

「いや、俺もリリーに抱きつかれているのは存外に暖かくて良い気分だ」

「…………?」

「……い……行くぞ!」

セドリックは頬を紅潮させると、慌てて手綱を引き、コンラートたちの馬の後を追った。


それからの景色は、田畑やポツポツと点在する民家を見るだけで、遠くは山ばかりがそびえる山間のエイフォード領、オルグ辺境領を経た。

そしてとうとう国境の検問所に辿り着いた時には日が沈みかけていた。

「今夜の宿はどうしますか?」

セドリックが問いかけると、コンラートは検問所の警備兵に話を聞きに行く。

「すぐそこに宿屋が何軒かあるそうだ」



国境に近い宿から1軒ずつ空きを訊いて回ったが、なしのつぶてだった。最後の1軒でやっと空き部屋があると返ってきた。

「2人部屋と3人部屋のひとつずつしか空いてない?」

「……はあ……今夜はキャラバンが国境に来てまして、他の宿屋が満室なのでわたくしどもの宿へ訪れる方ばかりでございます」

白髪混じりの初老の男性が申し訳なさそうに説明する。

「昨日と同じ……」

3人は顔を見合わせる。

「じゃあ、2人部屋と3人部屋を頼むよ」

「こちらが部屋の鍵です」

宿の(あるじ)が部屋番号の彫られた木札の付いた鍵を2本、カウンターテーブルに置いた。コンラートは鍵を手にすると、2人部屋と3人部屋の鍵を懐に入れる。


宿の近くの酒場で夕食をとることにし、リリアナはコンラートから、他の客から見えにくい奥の席に座るよう指示された。

「酒を4つ。それと彼女にはレモン水を」

コンラートは店員に飲み物を注文する。


リリアナの前にはレモン水、コンラートとセドリック、コンラートの部下2人の前には酒が置かれた。

「公子様、お酒を頂いてもよろしいのですか?」

「景気付けだ。明日はいよいよルーデンベルク入りだからな。では、明日もよろしく頼む」

そう言って、コンラートはお酒の入ったジョッキを上に掲げた。他の者も皆、コンラートに(なら)ってジョッキを上に掲げると、酒をあおった。

「いいな~、お酒……」

「お前は妊娠中だし、そもそも酒は20歳からだ」

リリアナのやっかみにコンラートが口を挟む。

「それは前の世界の話でしょう? ここでの成人は何歳なの?」

「18」

「何で同じなのよ」

「俺が作った世界だからだ」


(そうだったーーーっ!!)


食事は美味しかった。食べ物が美味しいと酒が進むと云われるが、まったくその通りだった。

コンラートはもうすでに3杯目のジョッキに口をつけていたが、素面(しらふ)そのものだ。セドリックやコンラートの部下たちはアルコールが久しぶりなのか、3杯目で酔いが回っているようだ。普段は寡黙なセドリックもやけに饒舌になって、コンラートの部下たちと会話が弾んでいる。


「そろそろ引き上げるぞ。お前たち、(ここ)で寝るな」

コンラートの部下2人は酒が良い感じに回って、寝落ちしそうになっていた。

「セドリック様、宿に戻りますよ」

テーブルに突っ伏して眠そうにしているセドリックの肩をトントンと軽く叩くと、「リリー」と抱きつかれそうになる。コンラートが素早く動いてセドリックの動きを止めたおかげでリリアナは難を逃れた。


(危ない……! あの巨体がもたれかかってきたら、私まで倒れちゃう!!)


セドリックは両肩をコンラートの部下たちに抱えられ、宿に戻る。

「悪いがお前たちがセドリック(そいつ)と3人部屋を使ってくれ」

コンラートは懐から鍵を取り出し、部下に渡した。


(え……?)


「俺とリリーは2人部屋だ」

コンラートはリリアナを見て、不敵な笑みを浮かべる。


(コンラートさんと、今夜は2人きり……!?)


2人部屋に入り、コンラートが施錠をするとリリアナに寄り沿い、リリアナの髪をひと掬いし、キスを落とす。そして、リリアナを優しく抱きしめた。

「……今日は……リリーがセドリック(あいつ)とずっと一緒で……気が気じゃなかった」

「……コンラートさん……」


(ああ、やっぱりあの時の寂しげな笑顔は……)


「早くリリーを僕のものにしてしまいたい……」

コンラートはリリアナをベッドへ(いざな)う。リリアナの両頬に手を添え、そっと唇を重ねる。チュッと付いては離れてを繰り返し、コンラートの唇は顎から更に下へ、つぅとリリアナの白い肌の上を()う舌に、リリアナはぞくぞくっとする。

纏っていた服を脱がされ、夜更けまでコンラートからの愛を一心に享受するのだった。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

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