第6話 彼、昼の偶然
その後は何事もなく、水曜日のお昼時。
昼食はみんなそれぞれのスタイルで取る。お弁当持参の人、コンビニで買う人、店に食べに行く人など色々。
営業なので外回りが多く、普段は出先で食べることが多い。会社にいる日はコンビニが多い。
今日は何にしようか。
お弁当持参はない。そんなの作るの面倒だし、そもそも料理なんて滅多にしない。しかも出先ではお弁当なんて食べる場所もない。
今日もコンビニにしようかなとコンビニに来た。うわっ、めちゃ混みだ、何これ?しかもお弁当はほとんど残ってない。買う気が失せた。
仕方ない、どこかの店に食べに行くか。こういう時、会社は駅近なので助かるな。
何にしようかな。時間がかかる店は昼休みに会社に戻れないこともあるから、さっと食べられる店がいい。行列ができている店は、美味しいのだろうけど、時間が心配で入れない。
おっ、そば屋が列ができてない。よし、ここにしよう。
ドアを開けて、入店。中は結構混んでるな。店内を見回すと、待ちはいないけど、満席だ。
「今、満席です。少しお待ちいただければ、席もあくと思いますが、いかがなさいますか」
店を出て他に行くか、少し待つか考えていると、こっちに向かって手を振る人がいるじゃないか。誰だ?あっ中原さんか。ふたり用のテーブル席にひとりで座っている。
「お知り合いですか?ご相席でよろしければ、あちらへどうぞ」
では、相席させてもらうか。
「相席でよかった?誰か来る予定はなかったのかな?」
そう言いながら座った。
「大丈夫ですよ。ひとりだし、待ち合わせとかしてないですから」
「じゃあ、遠慮なく。満席で、どうしようかと思ってたから、助かったよ」
「お役に立てて光栄です。
私もさっき来て、注文したばかりです」
いいタイミングだったということか。
「いつもひとりで食べてるの?」
「いつもは会議室で女子で集まって食べてますけど、今日は休みとか外出とかでみんないなくて、ひとりになっちゃったんです。だから、たまには外に出てみようと思って」
「じゃあ、すごい偶然だね」
「そうですね」
お待たせしました、と店員が中原さんの分を持ってきた。
「冷めないうちに、お先にどうぞ」
「では、お先にいただきます」
そこから大して時間はかからず、自分の分も来た。
「いただきます」
この前に続いてふたりか。