第30話 彼、お花見 その2
最近気になって仕方のないので、思い切って聞いてみた。
「ところで、お花見に来る相手に、俺以外に誰かいい人いなかったのかな?他にも行きそうな人と言うか、俺よりもこういうイベント好きな人は会社にもいっぱいいるのに」
「藤井さんと来たかったからです」
中原さんは、少しうつむき、少し考えてから答えた。
「えっ?」
ドキッしてしまう。思いもしなかったストレートな言葉が返って来た。
それから、こちらを向いて話す。
「前にも言いましたけど、私にお付き合いしている人はいないので、そういう意味でふたりで来る相手はいないです。
それに、私は必ずしもイベント好きな人達と騒がしく来るのが好きなわけでは無いんです。嫌いではないですけど、今日は落ち着いてお花見がしたかったんです。
最近、藤井さんと一緒の機会も多いですし、藤井さんとふたりで来たら落ち着いて過ごせるので、そうしたんです」
「そうなんだ」
ドキッとしてしまったが、こう言われると自分が勘違いをしていたようで恥ずかしくなる。でも、受け取り方によって、色んな意味になる。
落ち着いて過ごせる相手って、どういう相手だろうか。立ち位置が微妙だな。
しかし、勘違いしてたとしても、出かける相手に選ばれたことは、悪い気はしない。
少しハッとしたような様子になり、
「藤井さんは私とお花見は気が進まなかったですか?もしかして、無理に付き合わせちゃいましたか?」
「そんなことはないよ。嫌だったら来ないし、俺も騒がしいのはあまり好きではないから、こういう感じの方がいいね」
「じゃあ、良かったです。最近、こういう風に色々出かけたりしてますけど、私はいつも楽しいですよ」
「ありがとう。そう言われると、嬉しいな」
こう言われると勘違いではなかったかという気がしてくる。
気持ちが読み切れないが、少なくとも並以上には思われているだろう。そうでなければ、ふたりでお花見なんて来ないはずだ。
「最近、色々と付き合わせちゃって、面倒をかけてないか心配だったんです」
そう言って、本当に心配そうな顔をしていた。
「それなら心配しなくていいよ。俺もこうして来てるときは楽しいし、無理な時は断わるから」
「それなら安心です」
ホッとした顔に変わった。
それからは話題を変え、しばらく桜を楽しんだ。
「桜も充分見たし、そろそろ帰ろうか」
外なので少し冷えてきた、時間は短めだがいい頃合いだろう。
「そうですね、お花見は堪能しました」
「じゃあ、片付けよう」
大して散らかしてはいないし、買い込んだのも少なめだったので、すぐに片付いた。
「ところで、少し冷えましたし、軽くしか食べてないので、どこかで夕ご飯というか、二次会というか、寄っていきませんか?」
そう来たか。




