第29話 彼、お花見 その1
仕事を進め、夕方になって、廊下で中原さんとすれ違いざまに会話をした。
「お花見って、いつ?今日かな?」
「藤井さんの都合が良ければ今日にしましょう。日を延ばして桜が散ってしまったら悲しいですから」
「そういえば、ニュースでもう見頃になったって出てたな」
「ですよね。今日大丈夫なら是非行きましょう」
「じゃあ、仕事が終わったら1階で」
「はい」
定番になりつつある1階での待ち合わせだ。
定時過ぎ、中原さんを見ると仕事は終わったようだ。目が合ったので頷いて、こっちも仕事は終わって会社を出られることを伝えた。
何もないかのように席を離れ、1階に向かった。そこで会い、どこへ行くか聞いてみた。
「どこかお花見のいい場所があるの?」
「はい、それで電車に乗るのですが、いいですか?2駅だけです」
それなら会社の近くと違って目立たなくていいな。
「いいよ、会社の近くではいい場所がないから、どこでお花見するのかなって思ってた。」
「あまり有名ではないけど、行きたかった、いい場所があるんです」
「色々と知っているんだね」
駅まで並んで歩いて行く。誰かに見られても同じ部署の人が話しながら帰っている、位にしか思われないだろう。
2駅先の駅で降り、コンビニで軽く食べ物と飲み物を買って少し歩くと、大きくはないが、桜が綺麗な公園があった。花見客はポツリポツリとまばらにしかいない。
「ここです。桜は綺麗で、あまり騒がしくなくて、いいと思いませんか?」
有名ではないだけあって、団体の花見客はいないようだ。
いるのは近隣の住民という雰囲気の少人数の主婦友グループっぽい人たちが少しと、他はカップルが多く、女性の少人数の人達もいる。
主婦グループが多少騒がしいが、大したこともなく、カップル達や女性グループは静か。これは落ち着いてお花見ができるいい場所だな。
こちらは男女2人なので、雰囲気に浮いてしまうことはないが、多少気恥ずかしい。
「そうだね、こんな場所があったんだ。俺は騒がしいのは好きではないから、なかなかいいと思うよ」
わざわざ電車に乗ってまで来たのだから、気に入った場所なのだろう。気恥ずかしさには触れず、場所を褒めることにした。
空いているベンチがあったので、そこにふたり並んで座った。
「桜にかんばいっ」
「ちょうど見頃で最高の桜だな」
「いい日に来ましたね」
「毎年お花見はしているの?」
「そうですね。桜は綺麗なので見たくなりますし、大体誰かと行く機会があったので、行く年の方が多いですね」
「この公園よく知ってたね。桜はきれいだけど、有名なスポットではないよね」
「落ち着いてお花見できる場所をチェックしてたら、たまたま見つけたんです。ネットは便利ですね。会社から遠くないし、一度来てみたいと思ってたんです」
しばらく、お花見についてをメインに会話をした。
さて、疑問に思ってることを聞いてみるか?
聞き方がムズカシイな。変に意識しないように、でもしっかり聞きたいし、なんて聞こうかな。
「ところで、お花見に来る相手に、俺以外に誰かいい人いなかったのかな?」
いい言葉が見つからず、かなり直球勝負になってしまった、、、




