第26話 彼女、ホワイトデー その1
今日は3月14日、ホワイトデー。やっと、この日が来た。期待してここ何日も期待して待ってたわ。
いや、期待通りになるなんて少しも保証は無いのだけれど。
出社して仕事をする。何も起きないまま、時間が過ぎてゆく。そしてもうお昼だわ。
午前中は何もなかった。もしかして、ひとり舞い上がってただけで、このまま終わり?
そうだとしても、不思議は無いわね。
自分から声をかけるのもお返しを催促してるみたいで厚かましい感じだし、悩ましいわね。
午後になり、廊下で藤井さんとすれ違った。すれ違いざまに声をかけられた。
「中原さん」
「はい」
あっ、ついに来た?
「机に伝票を置いといたから、いつものように処理してくれるかな」
あぁ、普通に仕事の話だわ。一瞬期待してしまったのが恥ずかしい。
「はい、わかりました」
席に戻ると言われた通り伝票が置いてあった。あ、これね、と思い伝票を手にすると、下に小さな箱が置いてあるわ。
何だろう?もしかして??
箱にはメモが添えてあった。
「中原さん
ホワイトデーとバースデープレゼントありがとう。
これはそのお返しです。
プレゼントとても嬉しかったです。
藤井」
やった~っ!
中は何だろう?クッキーとかお菓子には見えない。今ここで開けて、後ろを誰かが通ったら困りそうだ。とりあえず鞄にしまおう。
そして、さっと鞄にしまった。
さて、どうしよう。どこで中を見ようかしら?席では誰かに見られそうだし、かと言っていつまでも開けないのも喜んでないみたいだし、早く見ないと藤井さんとの会話にも困るわ。
いや、まずは伝票を処理する事ね。
内容を確認すると特に問題もないので、システムに入力してファイルに閉じる準備をした。でも、そんな作業は上の空だ。なんとか体が勝手に作業してくれてる感じだわ。間違わないように気をつけないといけないわね。
なんとか伝票を処理した。早く箱を開けたくてしょうがない。伝票を処理しながら少し落ち着いた。冷静に考えれば藤井さんとの会話も席で箱を開けるのは目立っちゃうから開けてないです、といえば納得してくれるわよね。
でも、自分が嬉しくて早く開けたくてしょうがない。ハンドポーチに入れてトイレに向かった。あまりいい場所ではないけど、個室の中なら誰にも見られることはないから安心ね。
ゆっくり何もないふりをしつつ、トイレに駆け込んだ。個室の中も包装紙をガサガサと音を立てていたら不自然なので、ゆっくり静かに開ける。
そうして出てきたものをみて、とても嬉しくなった。
藤井さん、こんなに気にかけていてくれたのね。
中身は、私と一緒にショッピングした時に欲しいと思ったけど買わなかったイヤリングだった。
うれしいっ!




