第25話 彼女、誕生日翌日
藤井さんの誕生日の翌日、会社で会うと、タイピンを使ってくれていた。
良かった、全然使えなかったり、好みではなかったらどうしようかと思ったけど、そんな心配はしなくて良かったのね。
タイピンというものは目立つものではないし、新しいものだとは誰も気が付いてないわ。ふたりだけの秘密って感じで、嬉しい。
「おはようございます」
挨拶しながら、ちらっと視線をタイピンに落とした。
「おはよう」
藤井さんもタイピンに目線を落としながら、笑顔で返してくれた。
ああ、満足感。声に出した挨拶と、ふたりだけわかる声以外の会話。
次はどうしようかしら。
なかなか美術館みたいなことはないし、そういうことがないと声をかけるネタがない。
前みたいに会社帰りやお昼時に声をかけるのも、周りの目もあるし案外簡単じゃないのよね。
もう少ししたらホワイトデーだから、少し期待して待ってようかしら。
バレンタインと誕生日のお返しが何かあるかもしれないわね。
何もなかったら少しショックだわ。
「早速使ってるよ。ありがとう」
藤井さんに廊下ですれ違いざまに声をかけられた。
「どういたしまして。使ってもらえて良かったです」
「デザインもよくて使いやすいよ」
「そう言ってもらえると、嬉しいです」
「選ぶの大変じゃなかった?」
「まあ、色々と考えましたけど、大変というよりは、考えるのが楽しかったです」
「そうなんだ。俺なんて、プレゼント買うのは慣れないから、悩んで時間かかっちゃうんだよね。それでもいいものが見つからなかったりしてね」
「そうやって色々考えながら決めてくれたプレゼントって、それだけで嬉しいものですよ」
「そういうものか」
「私はそうですね」
そう話して離れた。
それからしばらくは何もなく、普通の日常が過ぎた。
そんなものよね。
ホワイトデーはこちらが準備する事はないし、何しようかしら。
そうだ、あれを帰りに探してみよう。
とりあえず、帰りに電車に乗って、それから、、、
お店探し。




