第2話 彼、居酒屋にて
2人で会社を出て、最寄駅に向かって歩き始めた。
駅前に行けば、店は居酒屋、焼鳥屋、焼肉屋、中華、イタリアン、喫茶店、定食屋から牛丼まで選び放題だ。
定食屋や中華なら食べてさくっと帰れるが、どうかな。希望を聞いてみるか。
「どの店に行こうか?中原さんは何か食べたいものある?」
「少し飲みたいので、居酒屋がいいですね」
そう来たか。っていうか、そうだよな、飲みに言った話から始まってるもんな。
「じゃあ、そこの店に入ろう。」
チェーン店は騒がしすぎるから、落ち着ける感じの店にした。
まずは飲み物とおつまみを注文。すぐに、飲み物が来たぞ、この店使えるな。
早速飲み始めよう。
そして2人で乾杯。
「明日は土曜ですけど、藤井さんは休みの日は何してるんですか?」
「いつも大したことはしてないよ。なんとなく過ごしてる」
「趣味とか無いんですか?」
「これだっていうのは無いなぁ」
「じゃあ、何してるんですか?」
「だから、なんとなく」
「出かけたりはしないんですか?友達や、カノジョとか」
「そりゃ、時々は出かけることもあるよ」
なぜか、随分と聞き出す感じで聞いてくるな。尋問でも受けてる気分だ。
「どっちとですか?友達?カノジョ?」
おっと、そこ突っ込んできたか。
「そういう、異性関係を探るみたいなの、聞いてはダメだよ。何とかハラスメントとか、すぐに言われちゃうからね」
「えぇ~、そうなんですか?」
「まぁ、女の子が質問する側の時は問題にならないことが多いけど、逆だったら、ヤバい事が多いよね。自分がおじさん達にカレシがどうとか聞かれたらイヤでしょ。一般的にはアウトの話だな。だから、そういうのは普段から話の中に入れないように、気をつけてた方がいいよ」
少し真面目に答えつつ、質問の答えはスルー。
「じゃあ話を変えて、藤井さん、独身ですか?」
「今、言ったことわかってないだろ」
「そうじゃなくて、もしかして悪い事しちゃったかなって思ったので、聞いてみただけです」
「どういうこと?」
「夕方お誘いして、飲みに来たじゃないですか。独身ならいいんですけど、もし結婚してるなら、奥さんに悪いことしたなって思っただけです」
「それなら、気にすることはないよ。来るか来ないかは俺の判断だから」
「ふーん、そうですか」
少し間があいた。
「私は独身ですよ。今はフリーです」
「突然どうした?」
「いや、質問するのはアウトでも、自分のことを話すのは自由ですよね」
「まあね」
「藤井さんとなら、こういう話題でも私はイヤでは無いので、話してみただけです」
「そうか」
「だから私との話なら、ハラスメントとか気にしてくれなくて大丈夫ですよ」
あとは、最近のニュースやテレビの話、仕事や会社の人の話などよくある話題で盛り上がり、気が付けば2時間以上経っていた。
「そろそろいい時間だし、帰ろうか」
「そうですね、いつの間にか結構な時間になってますね」
そうして店を出た。
駅について別れ際。
「それじゃ、また来週」
「今日はありがとうございました。また来週ですね」
「今日は楽しかったよ」
「私もとても楽しかったです。突然お誘いしたのにつき合っていただいて、ありがとうございました。
また、こうして帰りに寄り道しましょう」
ん?また?