表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラリラ聖女とラブピ魔王  作者: 人藤 左
プロローグ/setting,start up
9/20

暗躍

 聖都・王城。

 月明かりだけが照らす謁見の間に、包帯だらけのスターク王子と、痩せぎすの男が並んで立っていた。


「まさか、父上が魔界の大軍師からお声掛けいただいていたとは……フ、フフ……」


「こちらこそ。あのどっちつかずの男の息子が、これほど話のわかる男だったとはね。しかも、あのクレスから呪眼を奪ったときた。実はきみ、魔族なんじゃないのかい?」


 針金細工のような魔族は、モノクルをマントの端で拭きながらほくそ笑む。


「お世辞はいい。こうして姿を現したってことは、呪眼以外の用があるんだろ……?」

「察しもいい。気に入ったよ、スターク」


 息を首筋に吹きかけながら、大軍師は目を細めた。


「元魔王のクレスが亡命した。やつの消息を追うために人間界くんだりに来たのだが……ビンゴだ。ぼくは魔界大軍師リーヴ、以後よろしく」


「リーヴ……リーヴか。はは、あのクレスのヤツとは格が違うぜ……本物だ……本物の、魔族……!」


 瘴気にも似た魔力の香りに、スタークは酔う。なんと瑞々しい殺戮の甘露か。なんと芳醇な悪意の果実か。手を伸ばすようにして、彼はリーヴの前に膝をつく。


「クレスの行き先は知っている。聖女のアネモネも一緒だ。オレにやらせてくれ、リーヴ……!」


「きみに……きみが、人間が? は、ははは……。思い上がるなよ。いかに死に体とはいえ、貴様らの武力で魔族の暴力はどうこうできるものではないッ! スターク貴様……ふぅ、すまない。あのクレスの眼を奪ったきみだから許そう……」


 魔力のほとばしりで窓ガラスが砕け散った。冷たい夜風がカーテンを揺らした。


「聖女アネモネといったね? それはきみに譲るが、クレスはぼくたちが殺す。殺す、殺す。そのための尖兵もすでに送りつけた。きみの出る幕はないよ」


「待てよリーヴ……あなたの言いたいことはわかった。が、オレからも一つある。この呪眼、オレに植えてくれよ」


「なに?」


 月明かりに照らされて、悪意に満ちた瞳が輝く。


「もちろん、タダとは言わないだろうね」


「当たり前だ。リーヴ、クソ親父の命をやるよ。仮にもこの聖都の王だ、そのくらいの価値はあるんじゃないのか?」


「ふむ……スラーの命か。しかし、いいのかい? きみの想像以上に、その眼の力は強大だ。元とはいえ魔王クレスの力の要だ。受け止め切れるかな?」


「できるさ。オレ様はスターク、この世界の、人の王だ」


「ふぅん……。ますます気に入った。恨んでくれるなよ」


◆◆◆


「いずれ人間が魔族を脅かす、か。なるほど。あんな魔族の風上にも置けないようなやつが人の王だなどと……それは滅ぶだろう。魔族も、人も。いや、それも悪くない、悪くない……!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ