のろまな亀
題名『のろまな亀』
--------------------------------------------------
「序論」
ここまできてくれてありがとう。
我々には考えもしなかった。希望。感動。勇気。
それらを体現する柱となって、今。
君はここにいる。
我々に残された時間は長いようで、短い。
そんな短い人生に一発の花火を打ち上げよう。
今、ここから。
------------------------------------------------
ここ最近、考えることが多い。
悩みというのは実に悪魔的で一度飲み込まれるとなかなか抜け出すことが困難になる。
おまけに悩みは、我々の考えるという能力を著しく食い尽くす。
人間から考える能力を奪い去る観点から、悩みは最も解決困難な一種の錯乱効果を持っている。
この悩みを巧みに利用する事で人は他人を意図も簡単に支配する事が可能となる。
ただし例外もある。
悩みを解決した人間は成長するし、二度と同じ悩みでは錯乱しない。
これを一種の超越した人間という。
悩みを超越した人間に解決できない事案など存在しない。
しかし、この世界のどこを探したところで、その境地に達した者は誰一人としていないだろう。
「破論」
我々は今革命を強いられた一市民に他ならない。
政府の人間は人殺しを正当化するために日々忙しなく悩み、そして命令する。
いつの時代も時代錯誤に狂った老害が若者たちを殺すのだ。
人を殺すために考えを巡らせている人間ほど、醜い生き物はそういない。
現代はすこぶる平和だった。
1年も前に戻れるのなら、どんなことでも私はしよう。
半年でもいい...不可能だが。
この国が一方的に他国を侵略しようなどと、一体誰が考えただろう。
国に所属している私でさえも予期することのなかった出来事だ。
胸が痛い。
私は幼い頃から、この国で育ち。
この国で人を愛し。泣き。喜び。そして怒った。
怒りの矛先は馬鹿な大人達と、もっと馬鹿な政府の役人。
私よりも多くの時間を生きているのに何もわかっていない。
人間は贅沢をすると呆れるほど物事に無関心になる。
平和を維持することを放棄する貪欲さこそが毒なのだ。
自ら毒を飲み続けることでしか己を生き長らえさせる事ができないのか。
私は違う。
他人を慈しみ共存できる環境こそが必要最低限の常識である。
我々はその常識を守るために行動を起こす。
「急論」
革命を起こす前夜。
私は故郷の街を歩き続けた。
考えることを放棄した人間たち。
優雅で閑静なこの街の片隅にいつだって闇は息を潜めて、我々を嘲笑うのだ。
そして、それと同等に我々もあんたらを嘲笑う。
※あとがき
ウクライナとロシアの戦争が激化している昨今。
首都キエフへ進行を進めるロシア軍。
それに抵抗するウクライナ軍。
そんな戦争の最中、ロシアで生まれた主人公(学生)が、
この戦争への疑問を学徒たちと話し合った。
結果、彼らは革命を選択することになる。
革命へ参加する市民を陰ながら招集するまでに時間を使ったが、
多くの市民と学徒が集まってくれた。
これから内戦を起こして、ロシア革命を行う前夜。
革命を主導する主人公と仲間たちの苦悩と葛藤を描いた短編小説。
「序論」は主人公が仲間を引き入れる際の謳い文句。