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 あれから一ヶ月、PCを触っていなかった。

 しかし、もしかしたら偶然だったかもしれない。そう一縷の望みを捨てきれず、もう一度だけあのソフトを使ってみようと思い立った。


 きっかけは倒産した会社の総務の同僚が殺されたからだ。美人な人で、警察に相談するほどではないがストーカーに遭っていると聞いたことがあった。その人と仲が良かったわけではないが、生理がずれて唐突に来てしまった日にナプキンを持っていなくて困っていたところを助けてくれたことがあった。


 そんな同僚がそのストーカーに暴行を受けた後に殺されたというニュースが数日前に流れた。同僚は幼い時に両親が離婚し、母親が女手一つで育ててくれたと聞いたことがある。ニュースでもその通りの情報が流れていた。苦労してきたことが伺える善良な同僚だった。

 犯人はまだ逃走中で捕まっていないらしい。善良な同僚が一体何をしたというのだ。犯人がもしこのまま野放しになったらと、どうしても気にかかってしまった。だから、あのソフトをもう一度使ってみようと思ったのだ。


「……やってみるか」


 書斎でPCの電源を入れ、あのソフトを立ち上げた。

 例のメッセージに書いてあったように、ソフトの画面の右上にデリート履歴というボタンが新たに表示されていた。押してみると、隣人の名前と死因載っていた。この履歴には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 トップ画面に戻り、ストーカーの名前を入力し、死因には“今日、××山に逃げ込み山奥を目指す途中、斜面で足を滑らせ転倒しそのまま転がり落ち、頭を打ち付け死亡”と入力した。

 紗由はふぅーっと深く溜め息をついた。発見までに少し時間が掛かるかもしれない。あまりに早く見つかるような死因にするのを敢えて避けてしまった。


「本当に現実になるのかな……」


 早く結果が知りたいようなそうでもないような、何とも言えない気分だった。

 そんなに早くは結果が出ないだろうと思っていたが、昼食時にニュースを見ていたら、逃亡中のストーカーが××山に逃げ込み、警察が捜索にあたっていると流れた。


「……まじか」


 素人感覚だが、それでもこの調子だと夜までに見つかりそうだ。気分が悪くなり、寒気がしてきた。紗由は温まりたくなり、お風呂に入った。

 風呂から上がってもまだ寒気はおさまらず、落ち着かない気持ちのままベッドに潜り込んだが、眠気が来るはずもなく。SNSを眺めたりしてみたが、どうしても続かず、度々ニュースサイトを開いてしまう。

 適当にドライブでもしてこようかと思ったが、今のこの状態だと事故を起こしかねないので、ベッドの中でそうしてしばらく過ごしていた。


 結果はやはり夜を待たずして、夕方にニュースサイトの速報で犯人が捕まったことを知った。


 「やっぱりあのPCとソフト、ガチなんだ……」


 じわじわと夢でも詐欺でもないことを実感すると、吐き気がこみ上げてきた。紗由はトイレに駆け込み、しばらく胃液以外何も出てこなくなるまで吐いた。

 それから数日、引っ越しの疲れもあり、熱が出て寝込んだ。



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