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翌朝、目覚めるともう昼が近かった。
ほぼ昼ご飯のような朝ご飯を食べ終えると、紗由は昨日のことを思い出し、落ち着かない気持ちになった。
重い足取りで書斎に向かうと、恐る恐るPCの画面を確認してみたが、真っ暗だった。
コンセントを抜いたままなので当然といえば当然だが。昨日のあのあり得ない出来事は夢だったのか詐欺だったのか、きっとどちらかだったのかもしれない。
気を取り直して、紗由は初期設定をしようとコンセントをさし、深呼吸をしてから電源を入れてみた。
特に何もメッセージは出てこず、一般的な初期設定の画面になった。紗由は体から力が抜けるのを感じた。
「なーんだ、やっぱり夢か詐欺だったか~」
少しボーっとした後、初期設定をしていった。最後まで進むとトップ画面が表示されたが、その瞬間、血の気が引いた。あのソフトがデスクトップに表示されている。
「嘘でしょ……」
往生際悪く、一度目を閉じてみた。見間違えた可能性もある。薄っすらと目を開けると例のメッセージが表示されていた。
『チュートリアルが完了しました。デリートの履歴が見れるようになりました。今日からこのソフトを自由に使用してください』
背中に冷や汗が伝う。
「ガチなの……?」
今日以降、ニュースか新聞で隣人の死亡情報が流れてきたら、これは詐欺でも夢でも何でもないことになってしまう。
紗由はそれ以降、すぐに電源を落とした。
死因の欄には特に時間を書いていなかった。今日のいつ頃起こるのか分らないと思ったが、ふと先ほどのメッセージが思い出された。
チュートリアルは完了しました、と出ていた。
紗由は慌てて、書斎のテレビをつけニュースを流しているチャンネルに変え、片手では携帯を操作してニュースサイトで今日火事が起きていないか検索した。
「嘘ぉ……」
ちょうどニュースサイトで今朝早く火事があったというニュースを見つけ、テレビではその話題を取り上げていた。
被害者にあの隣人の名前が出ていた。
今、自分の身に起きていることは現実なのだ。