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 帰宅してから色々ぐぐって調べてみた。

 実は以前も興味本位でぐぐって自分がもし億万長者になったらとイメージトレーニングをしたことがあった。

 そのときと思ったことは大して変わらなかった。


 ―—突然、派手にお金を使わない

 ―—身内含め、だれにも高額当選したことは言わない

 ―—変な勧誘が来てもすべて無視もしくは断る

 ―—仕事はなるべく続ける


 変に興奮して眠れなかったので、紗由は次の日仕事を休み。

 少し落ち着いた頃にようやく数時間程度眠った。

 そして、換金日当日にみずほ銀行の本店へ赴き、手続きを済ませた。噂に聞いていた通り、別室に通され例の冊子をもらった。


 当選金はおおよそ一週間後に口座に振り込まれていた。

 記帳された通帳を見て、その日はベッドでゴロゴロしながらぼんやりと過ごした。気づけば寝落ちしていた。


 次の日、妙に引っ越しをしないとという気に駆られた。

 紗由は賃貸情報サイトで戸建の賃貸で駅から二十分圏内かつ庭があり、隣家と程よく距離が取れている角地の物件をいくつか探し、その日の内に内見しに行った。

 そして、某市のとあるこじんまりとした戸建に決めて、数日の内に引っ越しをした。


 引っ越してから一週間ほどは生活を整えるため、バタバタとあわただしく過ごした。

 ようやく落ち着いたとある昼下がり、頼んだ覚えはないが宅配便が届いたので、受け取りに玄関へ向かった。


「……ええ、なにこれ」


 買った覚えのないデスクトップPCが届いた。

 何回も確認したが、間違いなく自分が某オンラインショップで買っていた。確かに昨日妙にパソコンを買い替えたくなって見てはいたが、買わずにそのままやめたはずだ。寝ぼけて買ってしまったのだろうか。


「どうしよ……。欲しかったけどさぁ。ううーん……」


 あまり派手な買い物はしないようにと心がけてはいるが、念願のデスクトップPCを買うくらいは良いだろうと思って昨日見ていたので、思い切って開梱した。

 四苦八苦して、何とか二階の書斎に設置した。それまで使用していた挙動の怪しいノートパソコンはデータ移行が終わり次第、処分しよう。


 疲労困憊だったので、ちょうど夜ご飯のころ合いでもあり、一旦休憩することにした。

 ご飯を食べ終えるとまた書斎に戻った。

 なんとなくすぐにPCをつけないといけない気がしたのだ。


 「……はっ? え、なに、これ……」


 PCの電源を入れた途端、画面にメッセージが出てきて、エラーメッセージかと思い読んでみるとそこには訳の分からない内容が書かれていた。


『このソフトを使うと人を殺せる』


 紗由は自分の目がおかしくなったのだと思って、一度目を閉じてみたが、やはりメッセージは表示されていた。


「やば……、これ乗っ取り……いや、乗っ取りとは違うのか? なんかやばいもん送り付けられたの? 詐欺でも流行ってる?」


 慌てて携帯でSNSでエゴサしてみたが、似たような内容はヒットしなかった。


「一回電源切ってみる?」


 怖すぎたので、紗由はコンセントごと一旦抜いた。


「嘘でしょ……」


 コンセントを抜いているのに、メッセージは画面上に表示されたままになっている。


「やばいやばい。無理……あり得ないでしょ。なんかおかしいって……」


 怖くなり、箱に詰めて送り返した方が良いと頭では冷静に判断できているのに、そのメッセージとともに表示されているソフトをどうしても見ないといけない気に駆られた。妙に抗い様がなく、やめた方がいいとわかっているのに、そのソフトをクリックしてしまった。


 ソフトの仕様は非常にシンプルなものだった。


 ―—フルネームを入力もしくは対象の人物の画像

 ―—死因


 この二つの項目しか表示されていなかった。

 

「絶対やばいだろ、これ。……あ? え?」


 最初、PCを起動したときと同様にまたメッセージが画面に出てきた。


『チュートリアルとして、あなたの以前住んでいたマンションの騒音隣人をデリートしましょう』


 鳥肌が立った。

 紗由は以前住んでいたマンションの隣人の騒音行為に何年も悩まされていた。自分のことをすべて知っていそうなただならぬ気配を感じ、紗由は恐怖した。

 しかし、隣人への恨みが沸々と蘇ってきた。どうせこれは夢か詐欺か何かだろうし、入力してみてもいいんじゃないか。ふとそういう考えが過った。


 郵便や宅配の誤配で何度か隣人の名前を目にする機会があり、紗由は隣人の名前を知っていた。

 隣人のフルネームを入力し、死因には“明日、火事の現場に遭遇し焼死”と入力してみた。

 どうせなら自分が苦しんだ以上に苦しんでほしい。


 ぼんやりしていると画面が切り替わっていることに気づいた。


『この者をデリートしますか?』

 

 そのメッセージの下に、はい・いいえ、とボタンが二つ表示されていた。

 紗由は、はい、をクリックした。


「あ、はは……押しちゃった……。詐欺かなんかやばいのだったらどうなるのかな。逮捕されちゃうのかな。誰かがうちに来ちゃうのかな」


 せっかく億万長者になったというのに何をしているのか。

 紗由は急に感覚が戻ってきたかのように唐突に恐怖に駆られ、お風呂にも入らずベッドに潜りこんだ。

 なかなか寝付けなかったが、気づいたら寝落ちしていた。



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