転生悪役令嬢は幸せで平穏な日々のために頑張りますわ!
あぁ。わたしは死ぬのね。
願わくは、今度こそ幸せで平穏な人生をおくれますように。
そうしてわたしは死んでしまいましたわ。そして、私に生まれ変わりましたの。
今度こそ私は幸せで平穏な日々を過ごしたいのですわ。
私は天宮愛結花として、幸せで平穏な日々をおくりますわ!
そう決意をしてから約5年が経ちましたわ。決意の通り、私は幸せで平穏な日々をおくっていますわ。ですが早くも平穏が立ち去ろうとしていますの………
「愛結花、愛結花は来年から小学生だよね。この学校に通わないかい?智也や愛衣菜も通っている桜宮学院だ。」
「愛結花ちゃん。こちらはパンフレットですよ。見てみて下さいね。」
小学校を紹介してくださったのがお父様、パンフレットを渡してくださったのがお母様です。そして智也とは私の6つ上の兄で、愛衣菜とは私の1つ上の姉のことですわ。
「ねぇ、愛結花。私も一緒に見てもいい?」
「勿論ですわ、お姉様。お兄様も一緒に見ませんか?」
「そうだね。よかったら、どんなところか説明しようか?」
「お兄様、私も一応、聞いておきたいな。」
「分かったよ…」
お兄様がお姉様と私に学校の説明をしてくださいますがわたくしにはそれどころではありませんわ。
だって、桜宮学院に天宮愛結花といったらある少女マンガの世界ですもの‼
【初恋の君】という少女マンガが前世にはありましたわ。
主人公の一条菜穂はとある名家の庶子ですわ。ところが、母親が亡くなったことで引き取られることになりました。ですが、本家は無理ということで本家に近い子供のいない分家の養子になったのですわ。
そして、名家の子女が通う桜宮学院高等部に通うことになったのです。
そこで出会うのが昔出会った少年ー四宮翔ですわ。マンガの彼は天宮愛結花の婚約者でしたの。
二人は卒業までの三年間で恋を育みますの。そのことを知って天宮家の人々は激怒いたしましたわ。四宮家に問い合わせて四宮翔と一条菜穂が会うことを禁止にさせるほどに。ですが、それでも二人はこっそりと会いますの。そのことを知った天宮愛結花は一条菜穂に対しての嫌がらせを始めましたわ。
まあ、最後には断罪されるのですが。
他にも一条菜穂を好きになった神宮司忍という男が出てくるなど、盛りだくさんの内容になっておりますわ。
そんな少女マンガの世界あるいは類似世界に転生したみたいですわ。
ですが、悪役令嬢に兄や姉がいたというようなことは書いておりませんでしたわ。そこは謎に思いますが私の幸せで平穏な日々を守れるように頑張りますわ!
そして、少女マンガの事を思い出してからもう9年経ちましてわたくしは中学3年生になりましたわ。少女マンガの舞台の高等部に上がるまで後一年を切りました。え、わたくしの一人称が変わっているですって?そんなの、マンガとの差をつけるために頑張って直したのですわ。ちょっとした悪足搔きですわね。
そして、それ以外にもこれまで色々とありましたわ。その中でも特出したものといえば四宮翔の妹、凛さんと仲良くなったことですわね。凛さんはすごくブラコンでマンガでは天宮愛結花を認めず、一条菜穂を認めた方ですわ。
ですが、今はもうすっかり親友という存在となっていますわ。ほかにもわたくしのおともだちの方がマンガでは好戦的な方が多かったのですけど、今は平和主義の方しかおりませんわ。それに皆さまなんだかわたくしを妄信なさっている方が多いのですわ。やっぱり完璧に見せているからでしょうか?その影響でわたくしの陰口等に対しては好戦的な方が多いですし。あら?でしたら、マンガと大差ないですわね。
そんなこんなで原作とは違う日々を過ごしているわたくしですが、今、ピンチに陥ってますわ。クラスに真宮様がいらっしゃいましたの。真宮様ー真宮佑人は四宮様の親友の方ですわ。マンガでも真宮様は四宮様の親友として出てこられておりました。あと、一条様と四宮様が会う裏工作を手伝っていらっしゃいましたわね。そして、悪役令嬢を追い詰める手伝いをなさってましたの。
そのようなマンガでは天敵と言って差し支えない方が今、わたくしの目の前にいらっしゃいます。
「天宮さん。良かったら今度、うちのパーティーに来てほしいな。」
こんなに人の目があるところで渡されるとお断りでいませんわ。たくさんの女子を敵に回してしまうようなことですもの。それに、そもそも真宮家のほうが天宮家よりも格上ですしね。仕方ありませんわ。わたくしはあまり社交が好きではないのですが。
「まあ。ありがとうございます、真宮様。是非、伺わせていただきますわ。
ですがわざわざ手渡しではなくとも家に送ってくださればよろしいのでは?」
「そうだね。でも、桜会の人たちには手で渡したくてね。」
「そうでしたのね。」
それならよかったですわ。いらぬ苦労をかぶりたくありませんもの。ただでさえ、今年はわたくしの事を目の敵にしてくる方がいらっしゃいますのに。ピンチではなくなりましたわね。
あ、桜会というのは桜宮学院初等部から通っている方々の中から家格の上位5名が所属している会の事ですわ。四宮様、真宮様、凛さんに二宮小夜子さん、わたくしがこの学年の所属メンバーになりますわ。桜会とは桜宮学院の特権階級で象徴的なものですわ。そして桜会のメンバーは特に選民意識がある方が自分よりも下の方に嫌がらせや理不尽なことをするのを止めなくてはなりませんわ。きっと、マンガの天宮愛結花も止められてはいたのでしょうね。
「いやだわ。天宮さんって桜会だからっていい気になっているのかしらね。」
「本当ね。なんか私たちの事も見下してるみたいだし。」
「瑠奈様もそう思いませんか。」
「そうですね。天宮さん、私たちと話してくださらないもの。皆さんの言うとおりだわ。」
この方達は、わたくしの事を目の敵にしている夕島瑠奈様とそのおともだちですわ。ですが正直に言いますと、夕島家は天宮家にかないっこありませんの。ですが、小学校の時は違ったみたいですの。彼女のおともだちも夕島様と同じ小学校から中等部にいらしてる方がほとんどですもの。少々付け上がっているみたいですわね。凛さんによりますと、一年生と二年生の時は四宮様と真宮様と同じクラスだったらしくおともだちの方と側にべったりとくっついていたみたいですわ。
そのような方と同じクラスだなんてついてませんわね。これまで派閥争いに巻き込まれてことはなかったんですもの。同じクラスになった方々は夕島様みたくわたくしに敵対してこられなかったので。ほかの派閥に入るか小さなグループを作るかわたくしのところに来るかの三択でしたもの。はぁ、胃が痛いですわ。わたくしのおともだちの方々が言い返そうとするのを止めるのも大変ですわね。
そして今日は真宮様に招待されたパーティーに来ましたわ。夕島様も招待されていたみたいです。見つからないようにしておきましょう。主催者である、真宮家の方々に挨拶をした後は凛さん、小夜子さんと合流しました。四宮様は目を猛禽類のようにしている肉食女子の方に囲まれていますわ。
「凛さんは助けに行かれないのですか?」
「今はお二人といることのほうが重要ですわ!」
「まあ、それはうれしいですわ。」
「ねぇ、愛結花さん。最近クラスに面倒な人がいらっしゃるそうですね。」
やはり、ご存じでしたか凛さんは。
「えぇ。ですが、やりきって見せなくてはなりませんわね。これまではこういったことがなかったのですし。」
「だって愛結花さんですもの。こんなに素晴らしい方がいるのに敵対しようだなんて絶対に思いませんわ。だというのにあの、夕島家の女は…」
小夜子さんはわたくしのもう一人の親友なのですが、それと同時にわたくしの事を妄信している方の一人なのです。凛さんみたく、普通に仲良くしておきたいのですがね。
「愛結花さん、頑張ってくださいまし。手伝えることがあるなら手伝いますの。」
「なら、新たな防犯カメラの設置をできるだけ早めてくれませんか?うちでもやりますので。」
「頑張ってみますの。」
人が近づいてきますわね。おおかた、わたくしたちに顔つなぎしたいのでしょうが。庭にでも避難しておきましょう。
「少々外の空気を吸ってきますわね。」
「分かりました。」
さすが真宮家ですわ。とても庭が美しいです。わたくしの家の庭も美しいと思いますが真宮家も素晴らしいですわね。奥のほうだと人は来ませんわよね。奥のほうでパーティーが終わるまで本でも読んでおきましょう。
わたくしは前世から本が好きなのですわ。本だけでなく小説も好きですわね。今はweb小説というものがあることを知ったので家でWeb小説を読むこともありますわ。
そして、そろそろパーティーが終わるので本をクラッチバックにしまい、会場に戻ろうとした時の事ですわ。
「天宮さん、こんなところにいたんだ。会場にいないから何かあったと思ったよ。」
「ごきげんよう、真宮様。庭が美しいのでつい、見とれていただけですわ。ご心配おかけしました。」
会いたくなかった相手に会ってしまいましたわ。それに、真宮様がわたくしの事を心配なんてするはずないでしょうに。何か企んでいらっしゃるのでしょうか?
「良かったら、エスコートしていくよ。」
「結構ですわ。」
なんてありがたくないお誘いなのでしょう。もちろん即答で返しましたわ。変な憶測が出回ってしまいますもの。そうしたら夕島様がまた、何かおっしゃいますし。嫌ですわね。
そんなわたくしを見て真宮様は無理やり腕を絡ませてこられました。
「最近、大丈夫?」
真宮様もご存じだったとは。同じ桜会だから情報として持っているのかもしれませんわね。
「えぇ、何とか。ですので、やめていただけますか。」
「ごめんね。それは無理。」
今度、クラスで何を言われるのでしょうか?あの方たちならわたくしが無理やりエスコートさせたとでもおっしゃるのでしょうね。本当は反対なのですが。
沈黙のなか、真宮様が急に話されましたわ。
「ねぇ、僕たち婚約しない?」
一瞬、何をおっしゃっているのかわかりませんでしたわ。
「御冗談を。どうされたのですか?真宮様。」
「うーん。まぁ、そうなるよね。明日、放課後に裏庭のガゼボにきてくれない?話をしたいから。」
嫌ですけど話とは婚約の事ですわよね。わたくしはお父様とお母様が決められた相手ならどなたでもいいんですよね。恋愛はする気はありませんし。真宮家との婚約は天宮家にメリットをもたらしますし、聞いてみる価値はありますわね。裏庭にガゼボがあると知っている方はほとんどいないですしね。なにか、噂を立てられることもないでしょう。
「分かりましたわ。何時くらいに行けばよろしいでしょうか?」
「良かった。そうだね、16時半くらいは大丈夫?」
「大丈夫ですわ。」
話しているうちに会場につきましたわ。真宮様にエスコートされてはいってくるわたくしを見て、ざわめきます。凛さんと小夜子さんも驚いていらっしゃいますわね。ですが、エスコートに対してにみえますわ。わたくしが庭にいると教えたのはお二人でしたのね。真宮様ですからまだましですけど、どなたにも伝えられないほうが嬉しかったですわ。今度からは口止めをいたしましょう。
学校では昨日のパーティーのせいでまた、夕島様に色々と言われてしまいましたわ。何か彼女を大人しくする事があればよろしいのですのに。まあ、そのために新たな防犯カメラの設置を早めているのですがね。クラスで何かあったときにお話できるようにしておきたいのですから。
放課後になってさっさとクラスから出ます。早めに移動しておかないと夕島様に絡まれてしまいますのよね。本当に厄介な方です。
ガゼボには先に真宮様がいらしてました。
「ごきげんよう、真宮様。」
「天宮さん、いらっしゃい。」
さっさと帰りたいですし話を早く終わらせましょう。
「それで、真宮様。話をしていただけますか。」
「うん。僕、天宮さんの事好きなんだよね。」
聞き間違いでしょうか?それとも、何かのドッキリなのでしょうか?ですが、周りにわたくしたち以外の人はいませんし…
「それは、天宮家の令嬢が好きだということですか?」
そうであってほしいという一縷の望みをかけて聞きます。
「僕って、天宮さんの信頼得てないよね。」
真宮様が苦笑しながら仰る言葉は図星で思わず目を逸らしそうになります。
「もちろん、天宮愛結花さんという一個人にむけてだよ。
天宮さんは男性に近づかないよね。近づいてきてもさらりとかわしているし。僕と婚約したら、近づいてくる男はいなくななるし、僕の事好きでなくてもメリットはあると思うんだけど。
後、僕は天宮さんに好かれてないこと知ってるし婚約して好きになってもらえるよう頑張りたいんだけど。」
いいえ、デメリットが上回りますわ。確かに、男性には近づきませんけど。近づいてきても避けますけど。婚約したとすると、嫉妬の嵐ですわ。そちらのほうが大変ですに決まっておりますわ。
「別に僕は天宮さんに猛アピールをしてもいいと思ってるんだよね。
天宮さんはそういう風に目立つ事嫌いでしょ?」
なぜ、真宮様はそのことに気付いて……?
「わたくしの意志は関係無いではないではありませんか。どちらにせよ婚約させる気ですわよね?」
「僕の気持ちは伝えておきたかったからね。だって、天宮さんまだ僕の事信じてないでしょう。」
この言葉はスルーしておきます。それにしてもむかつきますわね、このしてやられた感は。
「今日はいろんな顔を見れて良かったよ。いつも、笑顔でいるだけだから。」
「それは真宮様もでしょう。できれば、婚約を発表するのはもっと後でもよろしいでしょうか?」
婚約すれば、周りに騒がれます。学年の女子のナンバー1は凛さんなので、大丈夫です。凛さんが静めてくださるでしょう。ですがクラスはどうでしょうか?絶対に夕島様にさわがれますわ。他の方なら簡単なのですがね。
「別に僕は大丈夫だよ。二人の時は佑人個人としているから。
これからよろしくね、愛結花さん。」
非常に疲れましたわ。今日は早めに休むとしましょう。
それから三週間ほど経った深夜の事。激化する派閥争いにわたくしは疲れてしまいましたの。ストレスや不安から寝付けなくて眠りも浅くなってしまいました。たまに夜、泣くこともありました。
今日も全然眠れません。そして、少しのどが渇いたので水を飲みに部屋を出ましたの。ちょうど部屋に戻るとき、お兄様にお会いましたわ。
「愛結花、眠れないの?なにか学校で困ったことがあるのなら僕に話してみてよ。僕が無理でも他の誰か信頼できる相手にさ。」
あぁ、お兄様にも学校での情報はいってますのね。ですが、わたくしはあまり誰かに頼りたくはありません。
「大丈夫ですわ、お兄様。ご心配をおかけして申し訳ありません。」
すると、お兄様は急にわたくしの手を握りしめてきました。
「愛結花。愛結花は僕のいや、僕たちの可愛い大事な妹で家族なんだよ。心配くらいさせてよ。辛いなら相談してよ。」
ふと、前世の死ぬ直前に言われた言葉を思い出しました。
僕だけの可愛い大事な……
い、や。嫌ですわ。あんなのと一緒にするだなんて。
今の家族は前世とは違いますわ。友人だってそうです。ですが、それでも、前世のトラウマはひどいのですわ。わたくしに深く根付いているのです。わたくしはお兄様の腕から抜け出しました。
「ありがとうございます、お兄様。嬉しいですわ。それではおやすみなさいませ。」
今のわたくしに前世の事を考えるのは無理ですわね。さっさと休むに限りますわ。
そしてわたくしは、お兄様が悲しそうな寂しそうな顔をなさっているのに気づけませんでしたわ。
真宮様いえ、佑人様と婚約してから、三ヶ月程が経ちましたわ。わたくしのクラスにも防犯カメラが設置されました。そして、わたくしのおともだちの皆さまの怒りも頂点に達しそうですわ。そんな中、今日の昼休みにわたくしの本がズタボロになった状態で発見されました。この本は去年、お兄様から誕生日プレゼントにもらったものですわ。既に絶版となっている貴重な本を普通のものと著者のサイン入りの二冊を贈ってくださったのです。これにはわたくしの堪忍の緒も切れましたわ。見つけてからすぐ、職員室に行って教室の映像をもらってきましたわ。教室の前にはやはり、人だかりができていますわね。あら、凛さんに小夜子さん、佑人様もその中に紛れていらっしゃいますわ。次の時間は自習である事を確かめましたし少し位、遅れても大丈夫ですわよね。
「ちょっと、どいてくださいませんか?」
「あ、愛結花様。こちらを。」
といって、本を見せてくださったのはわたくしのおともだちのまとめ役みたいな方、結城葵さんです。
「葵さん。こちらは?」
「愛結花様の本ですわ。いったいどなたがやったのでしょうね。」
葵さんの目が笑っていらっしゃいませんわね。まあ、わたくしも同じようなものでしょうけど。
「本当にどなたなのでしょうね。お兄様がわたくしの誕生日プレゼントにとくださった本をこのような状態になさったのは。是非とも犯人を見つけましょうか。」
「まあ、天宮さんはたかが本一冊でそれほどの騒ぎにするのね。」
「天宮家はそれだけ、大変なのかもしれないわよ。」
ここでこのようなことを仰ったら、
「まあ、愛結花様が大事になさっている本ですのにあのような言い方はないでしょうに。」
「本当ですわ。愛結花様のために愛結花様の兄君が用意なさったからこそ、ここまで犯人を捜そうとなさっているというのに。」
あぁ。やはりですわね。
「あらあら。天宮さんのおともだちがそのようなことを必死で仰るということは。彼女達が仰った事は本当なのでしょうか?夕島家でもたかが本一冊程度すぐに取り寄せられますのに。
おともだちが言ったことぐらい、責任をとれるのでしょう、天宮さんは。
ですから、真実味を持たせた言葉を放っても放っておいたんですよね。」
あら、これは都合が良いかもしれませんわね。
「そうですわね。ねぇ、夕島様?おともだちが行ったことは責任が夕島様も取れますわよね。」
「えぇ。もちろんです。」
「でしたら、こちらをご覧くださいな。」
先生に貰った、教室でわたくしの本を傷つけている映像を見せます。犯人は夕島様のおともだちです。
「責任、取れるのですよね。でしたら、同じ本を取り寄せてくださらない?
こちらの本の題名は『悠久の青』で著者の『エーリッヒ』さんが自費出版されたものですの。それにこの本、サイン本なんですの。もちろん、用意できるのですわよね?」
一つ、嘘をつきました。これはサイン本ではございません。流石にこの状況で貴重なものをほったらかすマネは致しませんもの。とはいえ、この本を傷つけられるのもとても嫌なのですがね。
「ねぇ。『悠久の青』って、絶版になった幻の本じゃなかったっけ?サイン本は確か世界に百冊も無いって。」
「あ、それ僕も聞いたことある。確か、作者が気に入らないからすぐに絶版にして書き直そうとしたときに死んじゃったやつだよね。」
流れがわたくしにとっていい方向に向いてきましたわね。
「な、そんなはず、ありません。そんな貴重な本だなんて、嘘をついているとは。」
「嘘ではありませんわ。こちら、貰った時に写真を撮りましたの。」
スマホの画面にうつした写真を見せます。
「それで、天宮家の事をそこまで仰ってくださったんですもの。それに夕島家なら本一冊程度すぐに取り寄せられるんですよね。ですから、この本を取り寄せてくださいな。」
「む、無理です。そのような本だなんて聞いてないんですから。」
「あら、ですがたかが本一冊程度、ですのよね。まさか、ご自身で仰った言葉をお忘れになったのですか?
天宮家よりも夕島家のほうが上だというような事を仰ったではないですか。」
別にサイン本は家にあるので、何とかなるんですけどね。サインがない本でしたら簡単に取り寄せられますもの。
「それとも、別の形で責任を取ってくださるのでしょうか?」
その場合は良くて停学、悪くて退学ですわね。
「そ、それは。」
まさか、自分で言った言葉で自分の首を絞めるとは思っていらっしゃらなかったのですのね。こんな方に悩まされていたとはなんだか自分が嫌になってきましたわ。
その後、夕島様と実行をした方は退学となりましたわ。本来なら夕島様は退学の必要はありませんわ。指示を出したということで停学になる程度でしょう。ですが、責任を取ると仰ったんですもの。ですから、責任を取ってもらいました。少し、何だか嫌な気持ちになりましたわ。最初はこんな風にしたかったわけではなかったので。
そして、他にこれといったトラブルはなく、無事高等部に入学いたしました。四宮様と一条様の二度目の出会いをしたみたいですわ。クラスで一条様と一緒にはなりませんでしたし一安心ですわね。因みに桜会のメンバーは初等部以外では同じクラスになることはあり得ませんわ。初等部は三クラスなので、あり得るのですがね。ですから、四宮様と同じクラスになることはございませんし、マンガと同じく一条様は四宮様と同じクラスになったようなので違うクラスで安心して良いのかマンガと同じでより警戒を強めたほうが良いのか分からなくなってしまいましたわ。
さてさて、これからどうなるのでしょうか?
類似世界だとは早い段階で分かっておりましたわ。後は巻き込まれないようにしておきましょう。
続編あります。
【転生悪役令嬢は幸せで平穏な日々を望んでいますわ!】
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