第9話 イベント開始
メモを投稿してしまいました。申し訳ありません。
ご報告助かりました!ありがとうございます!
カバンの中身と装備を確認する。
といっても実際のカバンを背負っているわけではなく、ウィンドウを開いているだけなのだが。
今回のイベントに備えカバンの枠を拡張しておいた。
このゲーム唯一の課金要素と言ってもいいだろう。
枠拡張は課金だけでしかできないが、こまめに整理すれば困らないのでとても良心的なゲームだ。
ではなぜ今回お金を払ってまでカバンを拡張したか?
今回の秘策が「アイテム」なのと、生産職にとって素材をいっぱい持てるというのは利点が大きいからだ。
回復アイテムが限界の99個まであるのを確認する。
生産は素材命と言ってもいいだろう。
逆を言えば戦闘職にカバン拡張は必要ないと言ってもいい。
拠点に帰れば無限に預けられる倉庫があるし、レアドロップはカバンがいっぱいでも出てくれる。
その際にカバンの中身を整理して入れ替えるシステムだ。
イベントへの参加申請も終わり、あとは時間まで待って専用マップで飛ばされるのを待つのみだ。
「コウく~ん!」
後ろから女性の声で俺を呼ぶ声が聞こえる。
俺を君づけで呼ぶ人など一人しかいないので誰かすぐにわかる。
「リンさん! どうしました?」
「これ!」
「これは?」
リンさんが何か武器のようなものを差し出してきた。
「これは緊急回避用に使えるワープアイテムだよ!」
「ワープ!?」
「超ーーーー! 貴重なんだからね!」
確かにワープアイテムが蔓延っていたら凄い世界になりそうだ。
「これがある場所に一度だけ飛べるから緊急回避用に使ってね」
「こんな貴重なもの……素材を聞いてもいいですか!」
思わずリンさんの顔に迫ってしまった。
「う、うん!」
若干避けられている気もするが今は素材が大事だった。
「鉄鉱石と時空石だよ」
「時空石?」
鉄鉱石は普通のドロップでも手に入るし、採掘しても手に入る珍しくもないものだ。
クナイ型のアイテムをカバンに入れると一つしか持てないようで、限界の合図の赤文字で個数が表示された。
「そう、エンシェントドラゴンを倒した時に低確率でドロップする超レアアイテムだよ!」
「そんな物をどうやって」
「ひ・み・つ!」
「そうですよね、不躾な質問失礼しました!」
情報は武器でもある、おいそれと他人に教えるものではない。
ここまでリンさんに教わったことは、調べればネットで書かれていることばかりだろう。
「それよりも! あれ! できた?」
「はい! これです」
俺はメニュー画面のカバンからあるものを取り出しリンさんに渡す。
「わあー! これこれ! ありがとう!」
リンさんは満面の笑みでそのアバターを装着した。
「やっぱ猫人には尻尾だよね!」
リンさんは今まで尻尾アバターを探していたようだ。
納得のいく尻尾に出会えなかったとか。それを今回俺に完全フルオーダーで頼んだということだ。
「似合ってますよ!」
「えへへ」
「もう時間ですね! それでは行ってきます!」
「うん! ファイトね!」
時間が迫り、リンさんと別れる。
ついにイベントマップへと飛ばされた。
◇◆◇◆◇◆
視界が戻るとどうやら何か建物の中にいるようだ。
俺はすぐさまパーティーをチェックする。
「『リンドウ』『ダナさん』『もちこ』」
名前を確認してマップを開く。
同じ建物内に全員いるようで、味方を指し示す緑の表示が重なって濃ゆい色になっていた。
「みんな集まってくれないか?」
男戦士が声をかける。
特に異論もないので大人しく従う。
全員集まったところで男戦士から自己紹介が始まった。
「俺の名前はリンドウ。硬直の少ない中火力のスキルを多用している」
「私の名前はダナさん! 連撃タイプだ! さんづけはダナさんさんになるからやめてくれ」
「私はもちこっていいます。魔法使いですがバフ型です!」
三人の自己紹介が終わった。
前衛二人に後衛は下位職にはめずらしいバフ型らしい。
「俺はコウ。生産職のクリエイターだ、得意なのはアイテム作りだ」
そう自己紹介するとリンドウが少し嫌な顔をした。
「攻撃スキルは何ができる?」
リンドウに聞かれたので正直に答える。
「ハンマーブロウ」
「だけ?」
「だけだ」
「そうか、今回はアイテム補充を頼むことが主になるかもしれないから、素材管理をしっかりな」
リンドウという男は経験者なのか、この場を仕切っている。
「わかった」
初めての参加なので様子を見ることにした。
「俺はキャラクター作り直し組だ。何度かこのイベントをこなしているから指揮をとってもいいか?」
他の二人も異論はないようで、全会一致でリーダーが決まった。
「じゃあスキル確認とこれからの予定を話し合おうか! と、その前に」
リンドウは扉を開けて何かの”手”を取り建物内に何かを引っ張ってきた。
「これがNPCのヒーラーだ。基本的に俺たちが指示を出さないと何もしてくれないから頼りすぎないように」
経験者は語るというやつか。
戦闘中に命令ばかりしていたら集中力が欠けてしまうということだろう。
全員のスキルや戦闘スタイルを把握した後に作戦が告げられた。
前衛はリンドウとダナさんが担当し、後衛のもちこがヒーラーの管理とバフ要員。
俺がアイテムの使用をしながら前衛後衛のサポートに入るというものだった。
「前衛がデスったらこの小屋まで絶対戻ること。後衛がデスした場合はヒーラーの運用が続く限り続行で」
後衛は実質戦力外のようだ。
もちこさんは中距離攻撃魔法も使えるので、本当に言いたいことは俺がデスっても問題ないということだろう。
本当にそうかもしれないので何も異論は言わず、心の奥底で見返してやると思いながら攻略がスタートした。
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