第8話 イベント概要
「ハンドメイドじゃなくても良いんですか?」
「ハンドメイド持ってるの! すごいじゃない!」
リンさんに連絡したあとすぐに返信が来て、ゲーム内に舞い戻っていた。
「他の人が作ったのを見たことがないのですごいのかわからないんですよね」
「新規だからフレンドいないのか。仕方ないね! 露店は覗いたことある?」
「いえ、まだ見たことないですね」
「露店でアイテムや武具、アバター色々見れるからおすすめよ。出品されているのは全部プレイヤーのものだから参考になるんじゃない?」
「是非見てみますね! ハンドメイドってクリエイターみんな持っているんじゃないんですか?」
「まだ情報が薄いけど、私が聞いた中では『どんぐりかれー』さんが使えるくらいかな?」
「『どんぐりかれー』?」
「生産系ギルドのマスターよ。私の知る限り生産系ギルドで成功しているのはそこだけね」
「生産系ギルドとかあるんだ……」
「そうね、生産職はソロではキツイからギルドに入るのが一般的よ?」
「新規でも入れますかね?」
「流石に大きいギルドは無理だと思うわ」
「ですよね」
「でもあなたなら『ハンドメイド』があるから引っ張りだこかもよ?」
「そんなに珍しいスキルなんですか?」
「生産職が少ないというのもあると思うけど今のところあなたと合わせて二人ね」
そんなに希少スキルだとは思わなかった。
「もしかしてだけど、武器も自作?」
「はい」
「この間は防具も作ってたわね。いい? 生産職が少ない理由として玄人向けの職業と言われているのがあるわ」
「玄人向け?」
リンさんは俺より歴が長いこともあり、色々知っていそうだ。
「生産といっても色々あるのよ? アイテムだったり武器だったり建築物なんてものもあるわ」
生産できるものがたくさんあるということは人気が出そうだが。
「でもほとんどの人が一つの生産に特化しているわ」
「一つ?」
自分のスキルはすでに複数ある。そのうえハンドメイドという希少スキルがあるということは、かなり恵まれているらしい。
「そう、だからあなたは将来有望な生産職ということになるわね」
「そうなんですか。素直に嬉しいですね」
「そうね、詳しい情報はまだ出回っていないから、これから複数の生産スキルの獲得方法が見つかれば生産職も人気がでるかもしれないわね」
「そういえば聞きたいことがあるんですがいいですか?」
唐突だがこの際質問してみる。
「なに?」
「お知らせに新規の方を対象にイベントが開かれるってあったんですけど」
「あれね、今回で四回目になるわ」
「結構やってるんですね」
「毎週やってるわよ」
結構な頻度でやっているようだ。
「あれはね、パーティーの大切さを学ぶためのイベントね」
「パーティーの大切さ?」
「そう、ソロではまずクリアできないわね」
「そんなに敵が強いんですか?」
「いいえエリア攻略イベントはね、持久戦なのよ」
「持久戦?」
「そう、HPの自然回復がないのよ」
SP、HPは遅いとはいえ時間で回復する。
「ということは!」
「アイテムもしくはスキルで回復するしかないわ」
「やられたらどうなるんですか?」
「スタート地点からやり直し、しかもパーティーメンバーも倒されないと合流は絶望的ね」
つまりデスった人だけスタート地点に戻されるということだろう。
「下位職業で回復持ってる人いるんですか?」
回復は魔法職の派生であるが、下位職の間は魔法使いである。
「たまにいるけどほぼいないわね」
「じゃあアイテム頼りですか?」
「いいえ、NPCのヒーラーがつくわ」
「え!」
「回復しかしてくれないし、SP管理もプレイヤーがしないとダメよ?」
スキル発動のタイミングをこちらの指示でやらなければいけないらしい。
「結構難しいですね」
「新規さんにはほぼ無理ね」
「無理なイベントを毎週やってるんですか?」
「そうね、報酬がおいしい分何回か参加するわね」
レベルが10を越えなければ参加権があるようなので、トライ&エラーができるということか。
「わかりました。お話し聞けて良かったです」
「あら? 攻略法聞かなくていいの?」
「はい! 初見で挑戦できるのは最初の一回だけなので!」
「はは! 元気でいいね!」
何度か挑戦するなら一度初見で挑戦してみてから情報を収集してもいいだろう。
「あ! あとキャラ作り直してこのイベント慣れてる人もいるから気をつけてね!」
「気をつける?」
「PKされないようにね!」
どうやら新規に厳しいイベントのようだ。