第7話 アバター作成
「おっちゃん! 頼むよ! 作ってくれよ!」
今広場でダイケンにねだられていた。
「レア素材なら有料でやってもいいぞ?」
「有料かよ! でも頼むよ!」
「頼むんかい!」
武器を作るのは時間がかかる。
他のゲームはわからないが、このゲームでは実際に打ち込まなければならないのだ。
「私もその時はお願いしていいですか?」
「ああ、シャーロック君もアカネコさんもいいよ」
「やった!」
そう言うとシャーロックとアカネコさんは嬉しそうに喜んだ。
今三人は新しい武器を携えている。
クエスト報酬の武器だ。ところどころに緑の装飾が施されており、最初の武器より確実にグレードアップしている。
「おじさん報酬で防具作らないの?」
「ああ、自分で作ってみたいものがあるんだ」
「もったいない。この素材で防具作ると中堅になるまで使えるんだよ?」
このクエストの報酬で手に入った素材を使って防具を作ると、脱初心者になるらしい。
正確には脱超初心者らしいが。
しかし俺はすでに自前の防具があり、それがなかなか強い。
確かに今回の素材で防具を作れば今よりアップグレードできるが、重要度は低い。
もちろんどんな装備が作れるか調査済みだ。ダイケンが情報を持っていたので聞いただけだが。
今は時間が惜しい。
正確には早く素材を使ってモノづくりをしたいだけだが。
「ステータスと……」
今回の狩りでレベルが上がった。
その成果としてスキルを覚えたのだが、これまた生産系のスキルだった。
「アバター作成」
キャラクターの見た目を変えられるアバターを作れるようになったのだ。
もちろんこれを使い今回はアバターを作る。
今は防具を素でつけていて無骨な感じだが、アバターは見た目を変えて防具は変わらないので、オシャレに最適なのだ。
---ステータス---
名前:コウ
Lv:7/30
HP:120/120
SP:170/170
物攻:160 物防:35
魔攻:60 魔防:5
速度:5 器用:50
スキル: 『ハンマーブロウ』『アイテム作成』『武具作成』『アバター作成』『不壊の探究者』
パッシブ:「創作神の加護」「ハンドメイド」
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相変わらず戦闘系スキルはなく、生産系ばかりだ。
クリエイターが戦闘向きではないと言われる道を真っすぐ進んでいる気がする。
「でも素材集めるには冒険しなきゃな。大手ギルドに入って自由が制限されるのは嫌だし」
ギルドに所属すれば素材はたくさん貰えるかもしれないが、それで自由は失いたくない。
それに、戦いは嫌いじゃない。いい刺激をもらえるのでモノを作るときの気力も上がる。
さらに自分の作った武具で活躍した今回で分かったことだが、性能を実感できるのも嬉しい。
ステータス的にはレベルが2上がってステータスポイントが10入った。
それを『器用』に振り器用ポイントが50になった。この時点で他の職業の10倍ほど器用になったことになる。
「さっそく作るか」
アバター作成のスキルを発動させる。
まずはベースになる生地を作り、それらを服の形にしていく。
今は直接縫っているのではなく、事前に用意されている型を選択して組みあげていく。
「これは早いな」
一から叩いて作った武具とは違い作業はスムーズだ。
もちろん一から手作業をした方が自由が利く。
火の粉を途中で投げ入れるなどが今回はできない。
まあ、できても服にそこまで時間をかけようとは思わないのでサクサク作る。
少し和風テイストの着物っぽい服にする。
下はズボンだが、足首のところをキュッと絞める。
色は白を基調に黒の模様を付け、その中に緑を織り交ぜる。
「こんなものかな?」
完全オリジナルで作れているわけではないが、なかなかいい出来栄えである。
出来上がった服を装備欄から着ける。
今は自分で見られないため後で自宅のパソコンで確認するしかない。
「そういえばアバター作ったら連絡してほしいって言われてたな」
フレンド欄の『リン』という名前をタップする。
「今はオフラインか」
オンラインだと名前が光る。
先ほどフレンドになった三人は未だに名前が光っていた。
「えーと、自身のアバターを作りました。よければ見て下さい。俺に依頼するかはお任せします!」
メールの文面を打ち込み、アバターのスクリーンショットを撮ってリンさんに送る。
これで注文されなかったら悲しいが、実質手作りではないので仕方ないのかもしれない。
アバターをハンドメイドで作るのは練習が必要かもしれないが、いずれはと考えている。
「今日はもうログアウトするかな」
ゲームを終わろうとメニュー画面を開くとお知らせの部分にビックリマークのアイコンが出ていた。
「初心者応援イベント開催?」
お知らせの内容を見ると、今度レベル10以下のプレイヤーのみを対象にイベントが開催されるという。
参加者はイベントマップに収容され、エリア攻略クエストをランダムで割り振られたパーティーで協力してクリアを目指し、タイムを競い合うという方式のようだ。
「せっかくだし参加してみるか」
報酬もそれなりにおいしいので参加することにした。