第6話 最強の通常攻撃
「俺は戦士のダイケンだ! スキルは単体高火力が多いぜ!」
「私は魔法使いのアカネコです。範囲多段型が得意です」
「僕は魔法使いのシャーロック。範囲高火力型。今回リーダーを務めさせてもらいます」
それぞれの紹介が終わった。
俺の自己紹介の時戦士のダイケンに嫌な顔をされたが、それ以外は何も問題なさそうだった。
全員で出発しようとする前にダイケンに話しかけられた。
「おっちゃん! モンスター狩れるのか? サポートなら初心者には意味ないぜ?」
「何故?」
火力で負けるつもりはないが、初心者にサポートは意味ないということが気になった。
「そりゃ序盤は攻撃力あげなくても一撃か二撃で倒せるからさ」
サポートするぐらいなら狩る人数が多い方がいいらしい。
といっても未だにサポートスキルは覚えていない。
下位職は多少変わるぐらいで、ほとんど同じスキルが現れるらしい。
しかし周りの認識からクリエイターは完全にサポートスキルばかりと思われている。
「火力なら大丈夫だ」
そういってハルバートを振って見せる。
「おお! 属性武器かよ! もしかしてスキルもついてるのか?」
「ああ、ついてるぞ」
「すげー! 露店で買ったのか?」
「露店?」
「露店しらねーのか? プレイヤー同士で色んなものを売り買いできる機能だよ!」
「そんなものがあるのか?」
「ああ、基本的にはみんなG(ゲーム内通貨)を貯めて武具を買うんだぜ!」
「そうなのか? ドロップした装備を着けるんじゃないのか?」
「それも有りだけど、自分より強い人の武具買った方が強くなれるからな。運任せより強くなりやすいんだぜ!」
ダイケンは色々知っていそうだ。
確かにトッププレイヤーの装備を買った方が早いかもしれない。
「それいくらだったんだ?」
「自分で作った」
「作った?」
「ああ」
「おっちゃんすげー! 武器作成スキルとか超レアじゃん!」
武器ではなく武具なのだが、騒がれそうなので言わないでおく。
「そうなのか?」
「ああ、クリエイターって基本ソロプレイでアイテム作ってる人が多いけど、武器を作れる人は大手ギルドに所属してギルドの武器作成やってたりするんだぜ?」
雇われ鍛冶師といったところだろうか。
そういった処に所属したら自分のペースでモノづくりができなさそうだ。
「今度俺にも武器作ってくれよ! これ素材にして!」
「Gを払ってくれるならな」
「ちぇ! そうだ! 今日の俺の活躍次第で作ってよ!」
「君が活躍した分俺が恩恵を受けるからってことか?」
「そう! 悪い話じゃないだろ!」
「わかった。じゃあ俺と競争だな」
ダイケンと約束をすると、他の二人も羨ましそうに話しかけてきた。
「コウさん! クリエイターより多く討伐するのは簡単ですよ? それでいいなら僕たちも作って欲しいです!」
「おういいぞ! でも費用とか素材は自分たちでもってくれよ?」
「やったー!」
初心者装備より明らかに強い武器を持ってる人が作る武器だ、期待値は高いだろう。
こちらも何か要求しようと思ったが、恐らく年下であろう彼らに求めるのは恰好が悪いと思い働きに期待することにした。
「じゃあ行くか!」
徒歩でエリア移動は時間がかかるのでポータルを利用する。
このポータル草原エリアなら最初から使える。
他のエリアに行くには一度そのエリアまで到達しなければならいが、一歩でもエリアに入ってしまえば使えるようになるのだ。
それぞれがポータルに入り、目的の草原エリアを指定する。
「よっしゃ! スタート!」
一番最後の俺が出てきた瞬間に戦士のダイケンがスタートの合図を出す。
「ははっ!」
思わず笑ってしまう。
「いかんいかん、若者のやる気を笑ってはいけないな」
「なんか歳を感じる発言ですね」
アカネコさんが俺の発言を聞いていたようだ。
「アカネコさんはいかないのかい?」
「私は大丈夫ですよ?」
「そうみたいだね」
アカネコは少し離れた場所に魔法を発動させているようで、モンスターを順調に倒していた。
「それよりコウさんこそ行かないんですか? 他の二人はもう狩り始めてますよ?」
「そうだな、このままだと負けそうだから行ってくるかな」
「なんか余裕そうですね」
「そうでもないよ?」
俺はそう言うと狩りを始めるべくフィールドを駆け抜ける。
基本スキルを使って戦う。
例に漏れず他の三人はスキルを多用してモンスターを倒している。
それもそのはず、スキルは通常攻撃よりも威力が高い。
スキルにもよるが、基本2倍の威力が出ると考えてくれていい。
しかし俺はスキルを使わずモンスターを攻撃する。
普通ならば通常攻撃では倒しにくいモンスターであっても通常攻撃をする。
「そんなのありかよ!」
ダイケンが気づき非難の声を上げる。
スキルはクールタイムが存在するので連続使用はできない。
かといって通常攻撃を挟んでも結局はスキルの方が早いとなる。
しかし、俺の通常攻撃は他の三人に比べて3倍ほどの威力が出ている。
そう、ハルバートの攻撃力に頼って上からたたき伏せたのだ。
体力という概念がないこのゲームでは走り放題だ。
走力との相性がいい通常攻撃は、クールタイムもなければ硬直もない。
序盤だけ使える裏技みたいなものだ。
「ほらほら! 頑張らないと!」
「ダー!」
そうは言っても初心者に隠された奥の手みたいなものはない。
アカネコさんと良い勝負になったが、最後は大人の知恵というやつで何とか競り勝った。
「私が倒そうとしているモンスターを攻撃するなんてずるいです!」
社会の厳しさを学べたようで何よりだった。
「クールタイム長すぎ……」
最後にシャーロックが何か呟いていたが、聞こえなかった。