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第25話 プロポーズ

「え! どういう」


確かにこのまま賢者をポケットに入れておけば偽装はできるだろう。

 しかし、プレイヤーである俺はもちろん王室に婿入りなどできるはずもない。


「そこはゲーム的な解決方法があるのか?」


例えば、そのまま結婚して王城で暮らしているという風になっているパターンとかだ。

 このクエストが一回きりならそれで終わって問題もない。

 むしろゲームだからこそ結婚という選択肢も大丈夫なのかもしれない。

 普段から王女の夫として振る舞うことはないだろう。

 まあクエストをこなす時に必要になってくる地位なのかもしれない。


「賢者様を治す心当たりがあるのですか?」


「ない、けど」


「結婚式はもうすぐです! 時間がありません。コウさんがお嫌でしたら諦めますが」


ここは大事な選択肢なのだろう。

 俺はもちこさんを見る。


「もちこさんどうした方がいいと思う?」


もちこさんにクエストを進行するうえでどうしたらいいのか意見を求めた。


「コウさんの好きにしたらいいと思います!」


何故か少しキレ気味で返された。


「好きにしたらいいというか、クエスト的にどうなんだろうと思ってるんだけど……」


もちこさんの反応に困惑してしまったが、俺の言葉を聞いてもちこさんは顔を赤らめた。


「そ、そういうことですか! クエストを進めるうえでは流れに乗った方がいいと思いますよ?」


どうなるかわからない時は、とりあえず話が進みそうな方を選んだ方が無難かもしれない。


「わかりました。結婚しましょう」


人生初のプロポーズがNPCになるとは思わなかったが。


「本当ですか!」


これがVRMMOだからだろうか、王女の表情やセリフの抑揚で本当に喜んでいるのがわかる。

 すると部屋の外から再び人の気配がした。


「入るぞメリダ!」


「お父様!」


なんと国王が部屋に入ってきたのだ。


「神石に選ばれた男が現れたと聞いてな」


「はい! ご紹介しますわ。冒険者のコウ様ですわ」


職業を言った覚えはないのだが、冒険者ということになっているらしい。


「そうかそうか!」


王様の登場に棒立ちになっていた俺の手を取り王様が握手をしてくる。


「娘をよろしく頼むぞ! では早速式を挙げよう!」


「え!」


「予定では明日ではありませんでしたか?」


「それは王子の決めた時間だろう。夫となるものが現れたらすぐに式を挙げられるようにしといたぞ!」


王様は親バカなのか、すぐに式を挙げたがっていた。


「コウさんがよければ私は大丈夫ですわ」


「そうかそうか! では準備をさせてくるでのう」


そういうと王様が部屋から出て行った。


「まだ良いとは言っていないんだけどな」


そこからは怒涛の勢いで結婚式の準備が行われた。

 という設定らしい。

 廊下をメイドたちが忙しなく走っているのを見たぐらいで、俺自身は待機部屋に入って段取りの説明を受けただけだ。


「そしてこの神石をお二人で掲げて頂きます」


誓いのキスはないみたいで、少し残念だった。


「了解した」


このイベントが終わったら王子側の問題は片付いたということになるのだろうか。

 しかし事前に仕込みがある分何かおきるのではないかと勘ぐってしまう。


「それでは私が来るまでご待機ください」


段取りをしていた執事が部屋を出る。

 俺ともちこさんだけが残った。


「このまま終わるんですかね?」


「どうだろうね」


イベントとしてはそこそこ長いので、もう終わっても不思議ではない。

 二人で話していると、俺のポケットが光りだした。


「おー!」


賢者が勢いよくポケットから飛び出し、元の大きさに戻った。


「え!」


「えぇ!」


もちこさんと俺の驚きの声が響く。


「元に戻ったわい!」


もちこさんと目が合い、同時に言葉を発する。


「「どうしよう」」


そこには喜ぶ賢者と困惑顔の男女が立っていた。


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