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第24話 婚活

「これでどうだ?」


「おお! これで研究が進む!」


弱いボスなら自分で取りに行くなり、他の人に頼むなりすればいいと思うが、タイミング的に丁度俺たちが来たということらしい。


「しばし待っててくれ」


若者と言えないが、なかなかハンサムな賢者は奥の部屋に入っていく。

 すると、部屋の中から変な煙や音が漏れてくる。


「大丈夫なんでしょうか?」


「演出だと思うけど……」


「ですよね」


「出てきたら化け物になってたりして」


「そ、そんなわけないじゃないですか!」


怖いのか、もちこさんの言葉に揺れを感じる。

 しばらくすると静かになり反応がなくなる。


「本当に大丈夫なんでしょうか?」


「わからないけど、入ってみる?」


「そうですね。このまま何も起きないなら、入るのが進行に必要だと思いますし」


もちこさんとの相談の結果部屋に入ってみることにした。


「入りますよー!」


ノックをしても返事がなかったためそのまま入る。


「お邪魔します」


もちこさんも俺の後に続く。

 部屋の中は何も変なところはなく、先ほどの煙や音の痕跡は何もなかった。


「いない」


「いないですね」


賢者の姿も見当たらず、実験室は誰もいなかった。


「ん?」


しかし部屋の隅をよく見てみると、”小さい賢者”が蹲っていた。


「コウさん!」


もちこさんも気づいたようで、賢者を指さす。


「賢者! どうしたんだ?」


「シクシク」


小さいおっさんが泣いている。


「ワシは不老不死の薬を作ろうとしただけなのじゃ」


結構どえらいことをしていたようだ。


「なんでそんなこと」


結果を見ればわかるが、完全に失敗だった。


「賢者といえば不老不死の研究じゃからのう」


プログラムでそう組まれているのか、悲しんでいるニュアンスが抜けて答える。


「まさかのアホ設定か!」


「コウさんどうしますか?」


「どうするも何も、この賢者はダメだろう」


神石が反応するとはいえ、小人を王族と結婚させるのは無理だろう。


「ワシを王女の元へ連れていけ」 


「マジかよ……」


「このままイベントは進むんですね」


今度は賢者を元に戻すイベントかと思ったが、一度メリダ姫と合流してかららしい。

 ポケットに賢者を入れ王城へ向かう。

 堂々と表からは入れないものの、侵入の時に使ったルートならば問題なく通れるようになっていた。

 部屋に入ると急に動けなくなった。


「これは!」


「何かのイベントのようです」


ステータスに異常がないので、強制イベントのようだ。


「捕まえたぞ!」


兵士達がなだれ込んできて俺ともちこさんを取り押さえる。


「観念するんだな!」


観念するもなにも動けないのだが。


「メリダをかどわかしていた奴らとはお前たちのことか!」


「お兄様やめて! その人たちは私のために協力してくれていたの!」


こちらが話さなくてもしっかり追い詰めてくれるようだ。


「やはりか、こいつらを牢へ繋いでおけ!」


「お兄様! 神石に選ばれた人を連れてこればその人との結婚を許してくれるのではないですか?」


「ふん! そんな奴どこにもおらんではないか!」


メリダ姫はおもむろに歩きだし、俺のカバンに入っていたではずの神石を地面から拾い上げ、近づいてきた。


「その男がそうだというのか?」


メリダ姫がそのまま俺に神石を近づけてきた。

 すると神石が輝きだし反応する。

 その行動をしたであろうメリダ姫自身が驚いた顔をしたが、すぐに表情を戻す。

 先ほど受け取ったときは反応しなかったので、無理もない。


「何!? この男がそうだというのか!」


「お兄様! これが証拠です!」


石が明らかに反応している。


「ぐぬぬ! ええい! 好きにせよ!」


約束は守る王子らしく、結婚が認められた。

 俺ともちこさんは解放され王子は部屋を出ていった。


「動ける?」


「そうみたいです」


もちこさんと俺は体の自由を取り戻し、立ち上がる。


「コウ様!」


メリダ姫が駆け寄ってくる。


「コウ様だったのですね!」


そのまま抱き着かれ、ウルウルとした瞳で見つめてくる。


「運命の人」


ポッ! と効果音でもつきそうな顔の赤らめ方をしている。


「あら? これは?」


メリダ姫が何かに気づいたようだ。


「んーっ!」


俺のポケットから何やら苦しそうな声が聞こえる。

 まあ俺に神石が反応したわけではないことを最初から分かっていたが、俺に反応したように見えた原因が出てきた。


「苦しいわい!」


賢者が飛び出しプンプン怒っている。


「きゃあ!」


メリダ姫が離れる。


「これはどういうことですか?」


当然の疑問だろう。


「メリダ姫、紹介しますよ。賢者のローレンスです」


賢者の名前を聞いたわけではないが、表示されているので聞くまでもない。


「け、ん、じゃ?」


メリダ姫はそれを聞いて固まってしまった。


「ああ、神石に反応したのは俺にではなくローレンスに反応したんだよ」


「小さいのですね」


小さい賢者の説明を求めているのだろう。

 俺は面倒だったので端折って説明をすると、それでよかったらしく理解してくれた。


「しかし困りましたわね」


「そうだな、賢者を元に―――」


賢者を元に戻すクエストだろうと思って話を促そうとすると、俺の言葉を切るかのようにメリダ姫が提案をしてきた。


「コウ様結婚しましょう!」




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