第2話 作成スキル
「それでは武器を装備してみましょう!」
NPCがチュートリアルでこのゲームの世界観を説明してくれる。
今は拠点となる街中で突っ立っている状態だ。
「なお、中位職になると職業変更ができなくなるので注意してくださいね!」
最後に注意事項を述べられて終わる。
「やっぱリアルだな!」
最近はVRをやっていなかったので、久しぶりの感触を楽しむ。
この世界は自由がモットーで、生産系を極めるのもよし、戦闘を極めるのもよしということらしい。
スキルを覚えるのだが、ランダム性があり必ず他の人と同じスキルが手に入るわけではない。
さらに、中位職に上がる時もプレイヤーの行動で全てが決まるという、なんともワクワクさせてくれる設定だ。
「さて、まずは初戦闘か」
チュートリアルさんが言うにはまずは戦闘をしてみろということだ。
初心者装備でフィールドに繋がるポータルに入る。
「おお!」
草原エリアだ。
一面緑の広大な土地の真ん中に巨木がそびえ立ち、所々に岩が点在している。
モンスターらしき生き物がちょくちょく目に入る。
この場所は、攻撃をしなければ襲われないらしいからステータスのチェックをする。
---ステータス---
名前:コウ
Lv:1/30
HP:50/50
SP:100/100
物攻:10 物防:5
魔攻:10 魔防:5
速度:5 器用:20
スキル: 『ハンマーブロウ』
パッシブ:「創作神の加護」
悪くないステータスだ。
その職の特徴となる部分が20と高めで、不得意なのが5と低めに設定されている。
スキルのハンマーブロウは、火力はあるが範囲が狭く、単体攻撃だ。
友人からは魔法職を勧められたが、やはりもの作りをしなければやる意味はない。
このゲームはもの作りの範囲が広く、クリエイターは戦闘ではなく、創作物だけで成り立っている職だと聞いている。
早速ものを作りたいのはやまやまだが、まずはその為に必要なスキルを覚える必要がある。
「よし!」
俺は早速モンスターを倒しにいく。
初期装備のハンマーを片手に、近くの小型恐竜グリーンリザードに攻撃する。
「おらっ!」
上からハンマーを振り下ろし、グリーンリザードの頭に直撃させる。
流石初心者エリアというべきだろうか、一撃で仕留められる。
周りには他の初心者プレイヤーもいるが、魔法職の人は一撃で倒せず苦労している。
魔法職の初期職はメイジだ。レベルが低いと苦労するが、後々範囲火力というわかりやすい強さを発揮したり、回復役に転職したりと職の幅があるそうだ。
そして最後の職が一番人気のウォリアーだ。
シンプルに火力、防御が優れている。
範囲技もあり、複数の敵にも対応できることから人気だ。
今いる初心者の中でも一番多いだろう。
二体目を倒したところでレベルアップのアナウンスが流れる。
「お!」
同時にスキルも覚える。
『アイテム生成』
念願の作成スキルだ。
自分の器用の数値と、VRの特徴でもある「現実世界の実力」も加味されるので、作れるアイテムは千差万別になる。
まぁそれが不人気職の理由でもあるのだが、とにかくこれでようやく自分のやりたいことができる。
早速拠点に帰り、人目の少ないところを探しスキルの説明を見る。
『アイテム作成』
・SPと素材を消費してアイテムを生成する。
現在作成できるものは作成画面で見れるようだ。
「この項目かな」
明るく光っている項目「回復薬」をタップする。
・HP回復薬 薬草+薬草
今はこの一つしか表示されていない。
多分素材がこれしか揃っていないのだろう。
とりあえず生成してみる。
すると目の前に薬草二つと、すり鉢セット、瓶が現れる。
「なるほど。これを混ぜるのか」
この工程がクリエイター不人気の理由の一つでもある。
ボタンを押せば完成ではなく、簡略化されているとはいえ実際に作ることを要求される。
回復薬は比較的簡単にできるのでここでつまづく人はいないと思うが、価値のあるものほど作るのも大変になっていくという構図だ。
「いいぞ!」
薬草を作りながら思わず呟く。
もの作りが好きな俺からすればこの工程は楽しみの一つである。
「できた!」
初めてのアイテム生成に気持ちが弾んでいる。
出来上がった回復薬は何も特別なものではないだろうが、ものを作った喜びが体を満たしてくれる。
「よし! そうと決まれば狩るぞ!」
他の人はレベルを上げるために狩りをするだろうが、俺は素材を集めるために狩りを始めた。
☆
「今日はこのぐらいかな」
夜になり人が増えてきたころに今日の狩りを終える。
レベルも5まで上がり、草原エリアでは経験効率が悪くなってきた。
そろそろ別エリアに移動を考えなければならない。
しかし今は新しく手に入ったスキルを試したくてウズウズしていた。
さっそく拠点となる街エリアに帰る。
「マイルームが欲しくなるな」
ゲームなので別に家などは必要ないのだが、ものを作る時に外ではあまりやりたくない。
人がいる場所でのアイテム生成は周りの目が気になってしまう。
「この辺りでいいかな?」
隠すものでもないが、人目は避ける。
新しいスキルを試すためにウィンドウを開く。
戦闘スキルならショートカットに登録するが、作成スキルはすぐに発動しなくてもいいので、スキル画面から発動させる。
「お待ちかねの作成だ!」
ワクワクした気持ちで作成を開始した。