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第14話 ノックバック

「リンドウ伏せろ!」


俺の叫び声に反応してその場で態勢を低くする。

 カバンの中から”秘策”を取り出し両手に装備してそれを”投げつける”。

 それがボスに到達すると爆風が起こった。


「きゃあ!」

「う゛!」

「な、なんだ!」


俺は素早くカバンから同じ武器を取り出す。


「ハンドグレネードだよ! これで相手の態勢崩す!」

「ハ、ハンドグレネード!? 」


ボスのHPを確認するが、爆風のわりに削れていない。

 それもそのはずこの爆弾は失敗作だ。

 俺が勝手に失敗作と思っているだけかもしれないが、この爆弾ダメージがとてつもなく低い。


---ハンドグレネード--- 


物攻:5 魔攻0

属性:「無」

スキル:「ノックバック」


-------------


このゲームのノックバック効果は優秀だ。

 相手を後退させることもできて一定の割合で態勢も崩せる。


範囲は広くないとはいえノックバック効果のある爆風だ。使いどころは広いと言えるだろう。

 欠点は威力のなさと一回しか使えない消費型ということだ。

 威力が高ければこの武器で圧倒できるだろうが今は別の火力が必要だ。


「相手が攻撃をしようとしたら離れて! その時にノックバックさせるから!」


数が限られているので、できるだけ早く削り切りたい。


「わかった!」

「了解よ!」


リンドウとダナさんが返事をする。


「もちこさんも援護しつつ自分がターゲットになったら全力で逃げて!」


各自対応なのは変わらないが、他の人の援護を受けられるのは大分違う。

 完全にボスの攻撃を避けるということは難しく、リンドウとダナさんが何度か被弾するが、下がったら追撃が来ないという安心感が出てきた。

 もちこさんがヒーラーを操り回復とバフをかける。

 俺が前線の二人が安全に立ち回れるように、要所でハンドグレネードを投げ込む。

 最初はタイミングが難しく危険な場面もあったがなんとかなっている。


ボスのHPがついにレッドゾーンに突入した。


「警戒!」


ボスはHPの割合で行動を変えるらしいので、ここで何かが起こっても不思議ではない。

 とうに武器は放り捨て腕を振り回し、突進するというシンプルかつ高威力な攻撃なので被弾をしなければ問題ない。

 ボスは一瞬動きを止め屈む。


「何か来るぞ!」


いつでも逃げれるように距離をとる。

 するとボスは。


――跳んだ


文字通り空中へ跳んだのだ。


「何だ?」

「上から攻撃がくるかもしれない!」


跳んだままなにもしないということはないだろう。考えられるのは。


「全員全力で離れろ!」


リンドウが何か気づいたのか、回避を指示する。

 全員が離れるために走り出してすぐにそれは起こった。


――ボスが降ってきた


そのシンプルな攻撃が地面を揺らす。


「何これ! 動けない!」


地面が揺れている間その場から動けなくなってしまうようだ。


「嘘でしょ!」


そんな中この揺れを起こした元凶が動き出す。


「あいつは動けるのかよ!」


突進の構えをとり、一直線上に並ぶリンドウ、ダナさん、もちこに照準を合わせている。


「くそ! コウ! ボスのHPはあと少しだ! 俺たちがやられても諦めるなよ!」


回避は無理と悟ったのかリンドウが俺に言葉を残す。

 確かにこのまま揺れが収まるのをまちハルバートで戦えば勝てるかもしれない。


――だけど


「やれるさ」

「え?」


声が聞こえるはずない距離だが、もちこさんが俺の呟きに反応する。

 俺は片手にハルバートをもち片手にハンドグレネードを持つ。

 おもむろにハンドグレネードを”自分”へぶつける。

 爆音とともに吹っ飛ばされる。


「何やってるんだ!」

「それは!」


もちこさんが気づいたのか期待を込めた眼差しを向けてくる。

間抜けな行動に思われるかもしれないが、恐らくボスのスキルで足を止められている以上それを無効にできる何かが必要だ。

 現状その方法をとれるスキルがない以上『ノックバック』で無理やり動けることに賭けるしかなかった。


「うおおぉぉおおお!」


スピードがつきすぎて恐怖のあまり叫んでしまう。

 しかしそのおかげもあってボスが走り出す瞬間に間に合った。

 ハルバートを両手で構え直し走り出したミノタウロスの頭に向ける。


スピードに乗った俺とミノタウロスが正面からぶつかり合う瞬間にハルバートのスキル『爆炎』を重ねる。


――赤い炎が上がり一人と一匹を飲み込んだ


「コウさん!」


もちこさんの叫び声が響いた。

 

二つの影を包んでいた煙が晴れる。

 そこにミノタウロスの姿はない。


「コウさん!」


もう一度叫んで姿を探すが見当たらない。


「コウ!」


リンドウとダナさんも探すがどこにも姿が見えない。


「相打ち?」


リンドウがそう呟いたとき声が聞こえた。


「危ない! どいてーー!」

「ん?」


不思議なことに空から声が聞こえる。


「えっ! え~!」


もちこが上を仰ぐと空からコウらしき人物が降ってきていた。


「きゃあっ!」


突然のことに反応できずそのまま衝突してしまった。


「いたたた……くない?」


落下体験を初めてした俺は思わず痛いと思ったがそうでもなかった。

 もちこさんを踏んづけてしまったからだろうか?

 ある程度痛覚は緩和されているとしてももう少し痛いと思っていた。


「ちょっと! もちこが困ってるでしょ!」

「ん?」


何か柔らかい感触があったので下を確認すると真っ赤な顔をしたもちこさんがいた。


「あ、あのう、て、て」

「ああ、ごめんすぐどくよ……手?」


俺の手はガッチリもちこさんの胸をホールドしていた。





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