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第10話 初遭遇

誤字脱字報告ありがとうございます!

「序盤の戦闘はできるだけ避けるぞ!」


 最初は経験値を得ることを優先するようで、レベルを上げやすいように奥の方。

 つまりエリアボスのいる方向へ近づく。

 このエリアボスを一番最初に倒したパーティーが優勝ということになるらしいが、実はこのエリアボスの討伐推奨レベルが12となっているため、レベリングが必要になってくるのだ。


「よしここらへんで狩るぞ!」


 みんなのレベルを事前に打ち合わせて、狩り場所はリンドウにお任せである。

 ゴブリン型のモンスターが現れ後ろからゾロゾロと出てくる。


「もちこさん! バフを!」


 前衛が突っ込んでしまうとバフがかけづらいだろうと思い指示をだす。


「は、はい!」


 攻撃力と防御力の上がった前衛二人はゴブリンの集団に突っ込んでいく。

 一体一体は弱いが、集団となると流石に手こずった。

 俺は前衛のうち漏らしや、二人の後ろに回り込もうとしているゴブリンを倒す。

 さらに二人のSPが切れないようにSP回復薬を投げつける。


「ふぅ、初戦としては上出来だな」


 倒し終わりリンドウが戦評を述べる。


「こ、コウさん凄いです!」


 いきなりもちこさんが興奮したような声を出した。


「ん? コウさん後ろで何かしてたの?」


 前衛には見えていないだろうが、俺の働きを見てもちこさんが興奮しているようだ。


「ああ、うち漏らしたゴブリンとか、後ろに回ろうとしていたやつを倒したことかな?」

「それであんなに戦っても余裕があったのか、コウさんありがとうございます」


 リンドウから礼は言われるが、それがなくても余裕でしたよという態度が見え隠れする。


「戦闘中にアイテム作成までやってしまうなんて……」


 もちこさんの最後の呟きは誰にも聞こえていなかったようで、俺は苦笑いをした。

 結局俺の評価は判断力が多少イイおじさんというところで収まったようだ。

 まあ実際前線に加わればもっと楽になるだろうが、このパーティーで求められる役割をこなすこともまた勉強になると思い、今は役に徹することにする。

 機会があれば『秘策』をお披露目してもいいかもしれない。


「薬を使った人はいますか?」


 消耗品やステータスのチェックをして消費したものを追加する。

 結局俺以外薬を使っていなかったので補充は必要なかった。

 自らの分は戦闘中に補充を済ませてしまった。

 外からみると全く何もしていないように見えてしまうな。

 一緒に後ろにいたもちこさんは気づくだろうけど。


 レベルあげをしばらく行い、ついに前に進もうとなったときに問題は起きた。


「ん?」

「どうしましたコウさん?」

「静かに!」


 事前に決めていた敵を発見した時の合図を手で出す。

 パーティーメンバー全員の顔が緊張でこわばる。

 俺はリーダーのリンドウの元へ近づき小声で報告する。


「前方1時の方向から何かが移動している物音がする」

「ああ、了解した」


 リンドウも気づいたようで、前に視線をやっていた。

 全員が話せる範囲に集まり作戦を共有する。


「敵を確認して俺が合図を出すから作戦通りに」


 簡単に行動指針を決め、リーダーのリンドウに判断を委ねる。

 ここまでリンドウは無難にリーダーをこなしているので皆から信頼されていた。

 ついに木々を分けて進むものの正体が見え始めた。


 リンドウが手を後ろに回しハンドサインを飛ばす。


 ――プレイヤーだ


 ここに来て初めて他パーティーとの遭遇となる。

 他パーティーとの競争となるこのクエストで協力などありえないらしい。

 やったとしても最後は出し抜きあいになる。

 ここは戦うか逃げるかの判断が迫られる。


 ――リンドウが交戦の合図を出す


 相手の装備などを見て判断したのだろう。

 ここでライバルを潰す選択に出たようだ。

 しかし俺は何か引っかかるものを感じる。

 相手が無警戒過ぎる。新人プレイヤーだとしてもあまりにも警戒が薄い。

 まるで餌のように食べてくださいと目の前にぶら下げられているようだ。


 しかしここでリンドウに提言する時間や余裕はない。

 敵は戦士二人の魔法使い一人。もう一人が姿を現していないのでまだ待機だ。

 しかし最後の一人がなかなか現れない。


 ――背筋に悪寒が走った


「クソッ!」


 後ろに控えていたもちこさんを突き飛ばし自分も回避行動を取る。

 しかし避けきれず敵の刃が肩口を抉る。


「奇襲だ!」


 前の二人に奇襲を伝えながらハルバートを振るい敵と距離をとる。


「大丈夫か!」


 リンドウとダナさんは前の敵と交戦が始まったらしい。声だけの確認になってしまう。


「大丈夫だ!」


 俺はもちこさんを守るように敵と対峙する。


「相手が戦闘職なら無理はするなよ! 俺たちが助けに行くまで持ちこたえろ!」

「了解した!」


 それが一番確実だろう。相手を見る限り目の前のやつは他の敵と明らかに雰囲気が違っていた。


「ヒヒッ! 舐められたものですね」


 引き笑いをした相手は不服と言わんばかりに武器を振るう。


「蛇剣か!」


 敵は、紫色の蛇剣を両手に切りかかってきた。


「ヒヒッ! この剣の攻撃に当たったあなたはもう終わりです!」


 二刀流の攻撃をどうにか捌くが、敵の言う通り結構危ない状況だった。


「毒か、けど俺は一人じゃないぜ?」

「コウさん!」


 もちこさんが状態異常回復薬を投げてくる。

 これに当たれば状態異常は治る。人数で勝っている分有利だ。


「させませんよ!」


 敵は回復薬に向かって飛び込んできた。

 もちろん俺はそれを阻止するように攻撃を加える。


「なっ!」


 しかし敵は攻撃を避けることもせずそのまま一直線に回復薬を叩き落しにいった。


「ヒヒッ! これであなたは依然ピンチですねぇ」


 深々と攻撃を受けたことを意にも介さない不気味な男に、もちこさんとの間に入られてしまった。

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[気になる点] 初心者応援クエストが全く初心者応援していない件について [一言] 新規には相当難しいとかトライ&エラー前提とかキャラ作り直し参加可能とかは全然問題ないけど PK有りって時点で糞運営乙な…
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