第1話 キャラクターメイキング
「あー! 暇だ!」
一人声を出してみたものの、それに反応する人はいない。
絶賛暇人を謳歌している田辺 耕作31歳だ。
部屋の中にはプラモデルが多く飾られており、俺を取り囲んでいる。
昔からものづくりが好きで趣味に繋がっていた。
現在無職実家に帰省(寄生)中。
親が気を利かせてくれて充電中とでもいうのだろう状態だ。
しかし、引きこもっているわけではない。
昔から体が弱く、規則正しい生活は崩せない。
適度な運動に、適度な睡眠、野菜を取り入れた食事。
この三つを気を付けていれば大抵大丈夫だが、夜中まで仕事が続くと体調を崩したりする。
新しく買ったプラモデルも、もう組み立てが終わってしまっている。
「この間勧められたゲームでもやるか!」
ゲームは好きなのだが、いかんせん長続きがしない。
飽き性なのだ。
友人にモノづくりが好きな人にもおすすめなゲームがある、と言われて紹介されたゲームをダウンロードする。
『over world online』――――――そう表記されたゲームのアプリを開く。
頭に装着するデバイスをパソコンと繋ぐ。
デバイスにダウンロードを自動で行う設定にし、先にゲームを始めてしまう。
これで次回からはこの装着デバイスのみでゲームができるようになるのだ。
意識が沈み込むような感覚に陥る。
すると、目の前にNPCキャラが現れた。
「ようこそオーバーワールドの世界へ! お名前を教えていただけますか?」
キャラクターメイキングから、チュートリアルまで行ってくれるNPCだ。
音声でも認識してくれるが、たまに変な聞き取られ方をするので入力ボードを引き寄せる。
「名前は『コウ』で職業が『クリエイター』だな」
この職業はものづくりのできるスキルがある。
これがあるから友人は、俺に勧めたのだ。
といっても戦闘もできるらしい。
「見た目か……」
性別はいじれないので強制的に男だ。
「目指すは職人だな」
見た目を渋い男にする。
「う~ん。ゴツゴツさはいらないかな」
少し筋肉質な、渋い男を意識して作った。
「これでいいかな?」
「キャラクターメイキングが終了しました! なお、下位職は転職が自由となっております」
初心者に優しい設計だ。
下位の職業を全部試せるのはありがたい。
友人から聞いてやりたい職業はもう決まっているのだが。
「それではオーバーワールドの世界をお楽しみください!」
もう一度世界が暗転したかと思うと、景色が一変した。
一話目は短めですが、二話以降2000文字程度を予定しております。