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水と油  作者: 雨後晴
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第四章

コンコン、

「水原さーん。お兄さんがお見舞いに来られてますよ。」

看護師さんの明るい声がドアの向こうから聞こえた。

「どうぞ。」

ドアがゆっくり開くと、スーツを着た兄と、冬にも関わらず太い腕を自慢するかのように腕まくりをしている男が立っていた。

「よう拓哉。調子はどうだ?」


「一日じゃ良くも悪くもならねーよ。」

常に笑顔の兄が鼻につくので、つい悪い口調になってしまう。

「そりゃそーだな!」

ここが病院と理解していないのか、いかにも体育系の『腕まくり男』が大声で同意した。

「こちらが、昨日説明した上司の『田中 正義』さんだ。」

「はじめまして。水原 拓哉です。」

「おう!田中 正義だ!よろしくな、弟くん!」

語尾に!が付いたような話し方にテンションの温度差をひしひしと感じたが、裏表のない良い人なんだろうと思う。

「じゃ今から軽く事件のことについて聞いていくぞ。」

このままじゃ私が疲れると察した兄が、事情聴取を仕切り始めた。

「まず昨晩のことを整理するぞ。事件が起きたのは十二月二十日の二十二時頃、拓哉が駅から家に帰る途中に何者かに刺される。その後倒れている拓哉を仕事から帰る途中の俺が発見した。間違いないな?」

「うん。時間まではハッキリ覚えてないけど、いつも通りの時間だったから多分その位。あの日は原付のタイヤパンクさせられてたんだよ。」

「ただの悪戯か、弟君を刺した犯人が細工した可能性もあるな。後者ならかなり計画的な犯行かもしれないな。圭介、その原付も調べさせとけ。」

少し離れた壁に腕を組んで、もたれながら話しを聞いていた田中さんが口を挟んだ。田中さんは先ほどとは違い、仕事モードになったのか刑事の風格が漂っている。いつもその感じならかっこいいのにと思ったが、水を差すのは野暮なのでぐっと堪えた。

「拓哉を刺した奴の顔は見てないんだったな?」

「ずっと後をつけられてるのは知ってたんだけどね。振り向いた瞬間刺されて、暗かったのもあって顔は見えなかった。ただ女だったのはハッキリ覚えてる。」

「女か・・・・・・。弟君さ、付き合ってる女の子とかいるの?モテるんじゃないの?」 

友達を冷やかすような表情で田中さんが聞いてきた。さっきまでの風格は何処に行ったんだ。少しでもカッコイイと思った自分が恥ずかしくなる。

「まぁ、一応いますよ。もうすぐ付き合って一年になります。」

「そうか!やっぱり可愛い?今度写真見せてよ!その子以外に女の子と遊んだりしてない?」

「修学旅行の夜かよ!」

あまりにも関係のなさそうなことを聞いてくるので、思わずツッコんでしまった。

「すまんすまん。ただこの位ラフな関係の方が手がかりを集めやすいんだよ。弟君が何でもないと思っている所に事件解決の糸口があるかもしれないからな!」

やっぱりこの人はすごい人なのか?分からなくなっていた。


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