足音
段々と山と空の際が白く染まっていく。
少し明るくなり、雲が細く伸びている。
それは、多くの生き物が活動し始めていた少し前の時間帯のことであった。
初夏の涼しい風が草木を揺らし、赤茶けた鎖のブランコをきぃと押し鳴らす。
まだ日が差してこない、夜と朝の間。いわゆる、東雲の時である。
悲しみを乗り越え、明るい気持ちへと移り変わって行くかのように空は紺色から青へ、青から水色、そして白色へと徐々に変化して行く。
毎日、毎日、晴れた日は、この時間に決まった音がする。地面を駆け、草を踏みしめる音が。
幾度となく同じところを踏まれた草原は、そこに足音が通れるほどの小さな道を作っていた。
その音はやがて、すべり台の階段を登る音に変わり、てっぺんで音が止む。
すると、それに合わせたかのようにお日様が昇り始め、山からその輝かしき顔をちらと見せる。届くところ全てに温もりと元気を届ける為に、精一杯手を伸ばして優しく包み込む。もちろん、足音も優しく、愛おしく包み込まれていく。
こうして暖かな抱擁をされる為に足音は晴れの日は毎日やってくる。
太陽がその顔を全てお見せになると、すべり台を滑る音がする。砂場がじゃりりと鳴くと、ゆっくりと砂を踏みしめて、来る時とは逆にゆっくりとした音を立てながら去ってゆく。
朝日に染められた山間の建物は朽ち果て、見るも無残な姿へと変わっていた。そんな中、ただ一つ古くはなっているが、まだ生きている家が一つだけあった。そこに、足音の主はモーター音を鳴らしながら今日も戻って行った。
その家に住んでいた女の子の真似をしてから幾度となく夏を迎えて来たがそれももう時期終わってしまうだろう。
この公園にあったたくさんの遊具達の様に錆び付いて、全ては誰も記憶しない遠い昔へと追いやられて忘れられた過去になっていく。
だいぶ前に書いたものが出てきたのでそのまま掲載しました。
テーマもメッセージもグダグダですが、読んでくださりありがとうございました。
Twitterの方もよろしくお願いします。
IDは[@sousaku_dango]です。よろしくお願いします。