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第2話【忌み子】

そんな場所に、二つの足音が近付いていた。




姿は無い。だが、『そこにいる』という事は漠然と分かる二つの気配は、光が漏れ出ている布にまっすぐと向かっていった。






気配のうちの一つが、その布を捲り、その姿に感嘆の声を上げる。






『……これはこれは、驚いたな』




『あぁ、この森に我々と似た気配の《何か》が現れたのを感じて来てみれば……』






布に包まれていたのは、長い髪から柔らかな光を放つ白髪の赤子であった。




【禁忌の森】の中だと言うのに、スヤスヤと寝息を立てている。









気配の一つが赤子を抱き上げる。その髪を見て、同時に理解した。






『……なるほどな、この髪の色。おそらく、この子は【忌み子】だな。それもこの世全てに影響を与えてしまうレベルの……だからこんな場所に連れてこられたのかもしれん』




『まじかよ、人間ってのはバカだね〜。【忌み子】に呪いの類は効かないってのに」



ここの瘴気は呪いのようなものだからな、ともう一つの気配が付け加える。



『となれば、することは一つだな―――』




『あぁ』






そう答えた気配は、もう一つの気配から赤子を受け取ると、赤子を持つ方とは反対の手に力を集め始めた。






『……この子には悪いが、ここで消えてもらおう。その方が世のためだ……だが、この子に罪はない。せめて苦しまないように……即死させてやれ』




『了解』








そして、力を高めた手が赤子の首に伸びて――――――






『……なんで止めんだ?』






もう片方の気配の手に止められていた。






『…………?』






と止めた方の気配は困惑していた。






『なんで邪魔をする。お前も感じただろう?この子は危険なんだよ』






邪魔をされた気配は少し不機嫌そうだった。



『……分からない、ただ』


『ただ?』



止めた気配はその手をじっと見ながら答えた。



『この子は―――殺してはいけない。そんな気がした』


『それはさぁ、お前の勘?』




『あぁ』






うーん、と止められた気配は考え込んだあと






『お前の勘はよく当たるからな……なら、殺すのはやめておく。でもさ、だったらどうするんだこの子?また人間の里に返すのか?』






止めた方の気配は、まさかという返事をした後、再び赤子を手元に戻して赤子に(顔は見えないが)笑いかけた。






『私が面倒を見よう。私がこの子の持つチカラを正しい道へと導く』






『なるほどな、俺たちと同じようにその力をコントロールできるようにするんだな』




『あぁ、そういう事だ』







『……なら、頑張ってくれ。一応言っておくが、俺は一切関わらねぇからな? なんかあった時に責任取りたくn『もちろんそのつもりだ。全責任は私が請け負う』




言い終わる前に即答すると、言われた方の気配はキョトンとして




『……そっか。んじゃま、頑張ってくれ』





そう言い残し、片方の気配は霧のように霧散した。






『行くか』



残された気配は赤子を抱えて、ゆっくりと森の奥へと向かって行った。

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