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プロローグ「精霊に拾われた少女」
「じゃあ、今日は皆にこの絵本でも読もうかしらねぇ……」
一人の老婆は椅子にゆったりと腰をかけると、持ってきた手提げ袋の中から分厚い本と蝋燭を1本取り出した。
本のタイトルは『純白の英雄』
蝋燭に火をつけると、老婆の顔に暖かな光が映る。
顔は皺だらけで、シミも多い。ただ、表情は明るく優しさを感じさせる。
「この絵本は、もう知ってる子も多い気がするけどねぇ」
「でもボク、この本がおばあちゃんの読む絵本の中で1番大好きだよ!」
「うん、ワタシも!」「ボクも」「私も!」
「まぁ、嬉しいことを言ってくれるわねぇ?」
そう微笑むと、老婆は本の最初のページを捲った後、子供たちに見えるようにそのページを子供たちの方へ向けながら、何度も何度も読んだ絵本の書き出しを、そっと読み始めた。
「むかしむかし、精霊に拾われた少女がいました……」
これは遠い遠い昔に、『全てを統べる英雄』と呼ばれた、とある一人の少女の物語。