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第3話 能力と王都

俺は煙の中にいた。煙で周りは全く見えない。

煙を振り払うよう前へ進むと、あの非常扉が現れた。

非常扉のノブを回すが、カギがかかっていて開かない。

何度もガチャガチャと回しているうちに、息が苦しくなってくる。

俺は苦し紛れに声にならない呪文を唱えた。

するとドアが勢いよく開き、光の空間が現れる。

その空間に体ごと吸い込まれ、光に溶けていくような開放感を味わいながら…


目が覚めた。

俺は部屋に横たわっていた。

何かとてつもない精神的ショックを受けたような気がするのだが…


“やっと目が覚めたか。お前さん話の冒頭はいつも目が覚めるとこから始まるな。こっちの話だけど”

「(声に)ん、師匠?…(見て)わ、おばけ!!」

俺は恐怖と驚きで後ずさる。

“まあまあ、そんなに驚くな。お前さんのことが心配で戻ってきちまったんだよ”

「そんな…ことって…アリ?」

“アリか、ナシかっちゅーと、アリだな。ただ、わしとお前さんの精神的なリンクだから他の者には見えないし聞こえないからそのつもりでな”

「分かりました。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!」

(マジかよ!やっと口うるさいのから解放されたと思ったのに)

俺は心の中でぶぅたれた。

“あぁそうそう。思ってることも多少は分かるので気を付けるように”

「は、はい!了解であります!」

(やべぇな)と思ってもいけない、口にも出せないなんてこりゃかなりやべぇな。


“そんなことよりも気絶してる間にお前さんの能力を一つ解放してやったぞ。その名も『アンロック』!”

「能力?ゲームのスキルみたいなやつですか?そんなものがあるなんて異世界すげぇな。で、どんな能力なんですか?」

“うむ『アンロック』とはその名の通り開錠、つまりカギを開ける能力じゃ。お前さんのカギで扉を開ければどこへでも行けるが、その行先での扉が開かないと困るじゃろ。その時に『アンロック』と唱えればどんなにロックされていても開くのじゃよ。ちなみに宝箱や封印なんかにも有効じゃ”

「え〜、そんな都合のいい能力なんてアリですか?」

“アリじゃよ。試しにやってみろ。宝物庫にカギのかかった箱あったじゃろ”

俺は宝物庫から小さなカギのかかった宝箱を持ってきた。

“どうじゃ?”

「確かに開きませんね」

俺は力づくで開けようとしたが宝箱はビクともしない。

“やってみろ”

「いきますよ『アンロック』!」

宝箱に手を触れながら唱えてみる。

するとカチャとカギの外れる音がする。宝箱はすんなりと開いた。

「おお、凄いですね!俺、スゴイ!!」

“これでわかったじゃろ。くれぐれも悪用するんじゃないぞ”

「は〜い、わかりました。ところでこの指輪もらっていいですか?」

俺は宝箱に入っていた指輪を手にしていた。

“そ、それは!…まぁいいじゃろ。その指輪、くれぐれも失くすんじゃないぞ!”

「はい、ありがとうございます。大事にしま〜す」

俺は右手の人差し指にはめた。高価そうな指輪で気に入った。


(あの指輪は覇王の指輪。特別な者にしか付けられぬもの。数多の宝箱からあの指輪の入った箱を選ぶとは、やはり選ばれし者なのか…)


“さて、お前さんこれからどうするつもりじゃ?”

「そうですねぇ、温泉でも行ってゆっくりと…」

“遊んどる場合か!町へ行って情報集めて来い。この世界のこと何も知らんじゃろが”

「はいはい、わかりました。街へ行っていろいろ聞いて来ればいいんでしょ」

(まぁ、街へ行けば遊ぶところもあるでしょ)

“よしよし、一番大きな街なら王都じゃが、遊びに行くわけではないぞ。分かったな!”

「あ!決してそんなつもりはありません!」

“やれやれじゃな”


俺はカギを使って情報収集のため街へ出ることにした。

俺は今気づいたが街へ行ったことがなかった。それどころかこの世界の住民と未だ接触すらしていなかった。

一年間も何してたんだよ!と思うかもしれないが、森の中や荒野で修行に明け暮れる毎日。

外界から閉ざされた場所で考える余裕もなかった。

というのは言い訳だが、今思えば師匠が意図的にやっていたことなのかもしれない。


頭に人の集まる街をイメージしながら扉を開く。

しかし農場の馬小屋だったり、山頂の山小屋だったりと何度か失敗した。

師匠にコツを聞きながら何度目かに開いた先は、安宿の一室だった。

簡易的な木のベッドしかない狭い部屋であった。

小さな窓から外を覗くと黄色い屋根の街並みが広がっていた。

2階建ての石造りの建物が多く、通りには多くの人が行き交う。

その街並みの中央にそびえ立つ大きな建物。この国の象徴である王の居城、トリノコール城。

そう、ここは人間の世界の中心、王都である。ここなら有益な情報が得られるであろう。


俺は部屋を出て、階段を下りる。

一階は小さな食堂になっており、何人かの冒険者風の男たちが酒と食事にありついていた。

俺はカウンターへ行き、主人に声をかける。


そういえば部屋を出るとき師匠が言ってたな。

(ワシはもうこの部屋から出ることが出来なくなった。じゃからお前さんに憑いていくことはできん。外ではお前さん一人でやるのじゃ。それと宿屋の主人に「ジュロウはぼちぼちやっとる」と伝えてくれ。それで通じるはずじゃ)

師匠の名前がジュロウってのをこんな形で知るとは思わなかったけど…


「あの、すみません」

ガタイのいい強面の主人が振り返る。

「おう何だ?ガキに出す酒は置いてねぇぞ」

「えっと、ジュロウさんからの伝言で“ぼちぼちやってる”と伝えてほしいと…」

「おう、あの爺さんの知り合いか。ふぅん、お前がねぇ」

主人は俺を値踏みでもするようにジロジロと見ている。

「おお、あの部屋は自由に使っていいぜ。部屋代は爺さんから前もって貰ってあるしな」

「ああ、そうなんですか」

師匠もこの宿屋をよく使っていたみたいだな。主人とは顔見知りのようだ。

「すみません、お城へはどうやって行けばいいですか?」

「おう何だ?城へなら店出て左へ5分も歩けば行けるけど、城行って何しようってんだ?」

「まあ、セリーナ姫に会いに…かな」

俺が照れくさそうに言うと

「おいおい、そりゃちょっと無理な話だぞ、そんな簡単に姫様に会おうなんて。今じゃ王族の公式行事にだって滅多に顔を出さないくらいだ。お前のようなガキが行ったって門前払いがいいとこだ」

「へぇ、何でまたそんな引きこもっちゃったんですか?」

「おう、何でも一年位前に姫様の寝室の賊が侵入したとかで大騒ぎになって以来、警備がやたらと厳重になって滅多に外には出なくなったのさ」


ん?待てよ。一年位前に侵入した賊って、俺のことなんじゃね?

そっか、そのことがあったから師匠はあえて俺を世間から遠ざけてたのか…

そこまで考えてるかね、あの人が。


「ありがとうございます。ま、見物がてらお城まで行ってみます」

「おう、いつでも来いよ!」


俺は席を立って宿屋を後にした。


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