第1話 異世界とお姫様
漫画や小説なんかでよくあるよね、異世界に飛ばされちゃうやつ。
実際そんなことあるわきゃないと思っていたけど、
まさか自分がそうなるとはね。
「ここわぁ、どこですかぁ?」
俺はおそるおそる聞いてみた。なせかちょっとカタコトで。
「ここはわしの部屋じゃが、お前さんから見たら異世界ということになるんかのぅ?」
老人はあたかもよくあることのように答えてくれた。どうやら言葉は普通に通じるらしい。
「この部屋はまた特別な空間にあって、この特別なカギを使えばそこの扉からどこへでも行けるんじゃ」
老人は首に下げた金色に輝くカギを見せた。
カギは手のひらに収まるほどの大きさで、アンティークな女神の彫刻が施され小さな宝石が三つ埋め込まれていた。
老人が指さしたドアは古い木の扉で真鍮のドアノブの下にはカギ穴がある。そこへカギを指して開けるのだろう。
全身を雷で打たれたような衝撃が走った!
「どこへでも行けるドア…どこでもド…」
あ、いかんいかん興奮してとんでもないことを口走るところだった。
興奮して扉へ駆け寄る俺。
「どこへでも行けるなら簡単でしょ。元の世界に帰してください」
「そうしたいのは山々なんじゃが、そう思い道理にはいかない扉でな。ましてや次元を超えるとなるとそう簡単にはいかんのじゃ。まぁ、いろんな事情もあってな、、、」
茶を濁そうとする老人。
「そんなのやってみなくちゃわからんでしょうが!」
素早く老人からカギを奪い取る俺。
「あ!こら、勝手に開けちゃいかん!!」
老人の制止を振り切ってカギを指し、扉を開く!
俺は自分の世界へ帰るんだぁ!!
扉は青白い光を放ちながらゆっくりと開く。
扉の先は薄暗い部屋だった。
部屋に敷かれて絨毯や、壁、天井に施された煌びやかな装飾など内装はとても豪華である。
部屋の中央には大きな天蓋付きのベッドがあった。王侯貴族の寝室のようだ。
部屋へ一歩踏み込むと、そこは心安らぐ香が焚かれバラの香りに満たされていた。
扉は勝手に閉まるかと思われたが、半開きの状態で止まる。
その隙間から老人が半身だけ乗り出し、のぞき込んでいた。
部屋の豪華さに圧倒され驚いている俺。
それ以上に驚いている人物が俺の横にいた。
その寝室の主であろう金髪の美しい女性は薄いレースのネグリジェだけをはおった、ほぼ全裸の状態であった。
細身の美しいプロポーション。白く透き通る肌。胸の方はまだ発育途上な感じ。
そしてお互いの目が合う。金髪の長いロングに青い瞳。顔立ちはアイドル顔負けの可愛さ。
まだ幼さの残るその女性は頬を赤らめ恥ずかしそうにうつむくと、そそくさとベッドへ潜り込む。
ここまで扉を開けてから数秒の出来事。
「きゃぁーーー!誰かぁーー!!」
叫び声が部屋に響き、俺はハッと我に返る。
同時に部屋の外がざわつき始める。
「姫様!どうされました!」
「衛兵!こちらへ早く!!」
何事かわからず焦っている俺の腕を引っ張る老人。
「何やっとる!早く戻れ!」
グイッと扉へ引っ張り込まれると扉は勢いよく閉まる。
部屋へ戻ってきた二人。老人は素早くカギを抜き再び首から下げる。
やれやれと言った感じでソファへ腰かける老人。
「はぁ、お前さん偶然とはいえとんでもない扉を開けたもんじゃな」
しばし呆然としていた俺は我に返り、老人へ詰め寄る。
「今のかわいいコ誰よ?知ってるコ?名前は?」
「あぁ、知っとるよ。名前はセリーナ。セリーナ・トリノコール姫」
「セリーナ!・・・姫?お姫様?」
「そうじゃ、この国の国王の娘。一人娘じゃから今のところ王位継承者じゃ」
なるほど、ただ可愛いだけでなく王族という高貴なオーラまで身に纏っているなんて!まさに非の打ち所のない正真正銘のプリンセス!
そんなコのあんなあられもない姿を見てしまって…
瞼の裏に浮かぶ美麗な映像を思い出しながら感動していると
「王女の寝室にいきなり侵入した不届きもの。バレたらタダでは済まないじゃろうな」
「え!?そうかな・・・」
「この国の王女の人気はダントツじゃ、国民の誰からも愛されておる。その王女の寝室に賊が侵入したとなれば、今頃王宮中大騒ぎで血眼になって探しとるじゃろ」
老人は脅かすような目で俺を見る。
「そんなぁ、すぐにバレないよね!ねっ!」
「このカギの秘密さえバレなければ大丈夫じゃ。心配せんでもえぇ」
「ほ。よかったぁ…」
安心したせいか俺は急激な脱力感に襲われ、ソファに倒れこむように横たわりそのまま眠ってしまった。
眠る俺を見ながら老人は呟いていた、
「このカギで扉を開けるのにはかなりの精神力が必要となる。それを初めてで開けてしまうとは、この男やはり選ばれし者なのか…それともただのバカなのか…」