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プロローグ

高校一年の夏休み。

今日も暑い。気温は38℃。40℃超えているところもあるらしい。


俺は鳴海頼人ライト16歳。

受験を真剣に考えるほど優等生でもないし、

部活で全国大会を目指すほどのスポ根野郎でもない。

今は人生で一度しかないこの夏休みを満喫したいと思うお気楽な高校生なのである。


部活がお休みの日、勉強もお休みにして涼しい家でダラダラしたいと思っていたのだが、

アスミがどうしても空飛ぶペンギンが見たいというので、俺たち三人はとあるビルの屋上にある水族館へ来ていた。

「うわぁ〜すごいねぇ!ほんとに飛んでるよ!!」

「そんなわきゃねぇだろ!」

天井にある水槽を見上げながら嬉しそうに笑う愛純アスミ輝樹テルキが突っ込みを入れる。

親友のテルキと幼馴染のアスミは同じ高校のクラスメートだ。

三人は中学も同じで何をするにもいつも一緒だった。

「あっ!見てみて、今こっち見たよ!」

アスミは無邪気に俺に笑いかける。俺もつられて笑顔になる。

俺はアスミのことが好きだ。テルキもおそらくアスミが好きだ。

だから俺たち三人はこのままのでいい。


俺たちは巨大な水槽の前で、目の前を泳ぐ色とりどりの魚の群れに見惚れていた。


突然鳴り響く警報!

「火災が発生しました!速やかに非常口へ避難してください!!」


パニックに陥る場内。人々はわれ先へと非常口へ向かう。

次第に場内を煙が満たしていく。

俺たち三人も人の波にもまれながら非常口向かう。

「アスミ!どこだ!?」

非常口近くでアスミを見失ってしまった。

「ライト早くしろ!」

非常階段への扉はごった返していた。狭い扉に人の波が押し寄せる。

「アスミがいない!探してくる」

俺は流れに逆らい煙の中へ戻って行く。

煙で視界が遮られる中、アスミを探す。

「アスミ!どこだぁ!」

煙を振り払うように身を低くして進むと、

口をハンカチで押さえながら苦しそうにうずくまるアスミを見つけた。

「何してんだ!早く逃げるぞ!」

アスミの手を取ると非常階段への扉へと急ぐ。

「はやく来い!」

テルキが非常階段の扉で待っていた。

他の人々は避難したようで残っているのは俺たちだけだった。

俺とアスミは煙が充満する中何とか非常階段の扉へとたどり着いた。

テルキは先にアスミを中へ引きこむと、俺を突き飛ばした。

訳が分からなかった。

 胸に衝撃を受けながら、俺は尻もちをつくように倒れる。。

「残念だけど、おまえはここまでだ」

テルキは冷たく言い払い、扉は閉じられた。

ガチャと音を立てて扉はロックされた。

「おい!ちょっと待てよっ!!」

残された俺は一瞬パニクったが、すぐに立ち上がり扉の開けようとドアノブを回す。

しかし扉は固く閉ざされビクともしない。


非常口の扉にカギなんてかかるものなのか?

火事のとき逃げられなくて困るだろ!なんて考えている余裕はなかった。


「開けろよ!おいっ!いるんだろっ!!」

ガンガンと扉をたたいてみるが返事はない。

温度はみるみる上昇し、黒い煙がすべてを覆い尽くす。

鼻から吸い込む異臭とともに、意識はどんどん奪われていく。

俺はその場へ倒れこみ、死を待つだけの状態となった。


俺は死ぬのか…

まだ、あれもこれもしてないのに…

死にたくない…!

誰か…助けて…!


朦朧とする意識の中、扉から差し込む青白い光見えた。

そして扉は再び開かれた。


お迎えが来るには早すぎるんじゃないか?

と思いながら俺の意識は途切れた、、、




目を開けると、そこは病院ではなかった。天国でもない様だ。

頭痛と吐き気がしたが、気力を振り絞り起き上がることができた。

俺はソファに横たわっていた様だ。

軽い目眩が治まると、周りを見る余裕が出てくる。

ここは一見すると豪華な応接室のようでもあるが、ちょっと古臭い。

よく言えばアンティーク調のソファとテーブル。

そして向かいのソファに小柄な老人が座っている。

頭は禿げているが長く蓄えられた白い顎鬚、細い垂れ目から好々爺の印象を受ける。


「やっと目が覚めたか。まぁとりあえず茶でも飲め」

年季の入った薄茶色のローブを纏った老人はテーブルのカップを指した。

カップというよりは湯呑に近い器に入った緑色の液体からは湯気が立っていた。

怪しげな老人の勧める物を簡単に飲んでいいものか躊躇したが、のどの渇きには逆らえなかった。

カップに手を伸ばし、ゆっくりと口へと運ぶ。

一口目に熱いと感じるが、そのあと強烈な苦みが襲ってきた。

「ううぇ〜!!なんだこれ!」

「なんだとは何じゃ!高価な薬草を煎じたもんじゃぞ!ありがたく飲め」

「こんなもん飲めるか!それにここはどこだ!?」

俺は状況が理解できない苛立ちで、少々声を荒げてしまった。

「まぁ落ち着け。助けてやったんじゃから、まずはお礼からなんじゃないか?」

老人は茶をすすりながら上目遣いに俺を見る。

「あ!あぁ、ありがとう、、、ございます」

俺は深々と頭を下げた。


しかし、何が起こった?

親友のテルキは俺を裏切ったのか?

扉の向こうでは何があったんだ?

アスミは助かったのか?


そして、俺は、どうなったんだ?


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