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96.勇者召喚2

「あちゃー」とイサナミアは警告メッセージを見て、手を額に当てた。やっちゃったという顔だ。


「イサナミア、これは一体何の警告なの?」

 フィルミアはイサナミアをにらみながら聞いた。


「はぁ、先輩すみません。これ、召喚魔術が起動された際の警告メッセージです。私が作ってた実験用の魔法陣を、誰かが起動したようです」とイサナミア。史郎さんに物を送るやつですよ、と説明を加えた。


 彼女が作った魔法陣には、ある一定以上の大きさ、もしくは生物が召喚された時の警告の設定がなされていたのだ。とりあえず、彼女たちは召喚された人への説明をすることにした。



     ◇



 フィルミアとイサナミアは、急いで、特別な白い空間を作った。

 そして、その空間に、被召喚者の仮の肉体を作り、魂を接続、対話できるようにした。そして、その白い空間の時間を流す。



「あなたたち、私の姿が見えますか?」とフィルミアが4人に話しかけた。

「えっと、ここは?」と琴音が聞き返した。

「……」美鈴は黙ったままだ。

「「あ、女神様⁉」」と正明と真琴は同時に叫んだ。


 琴音と美鈴は、妙に興奮している様子の真琴達を見て、逆に自分たちは冷静になる。


「……えっと、ここは」とフィルミアが言いかけて、

「いわゆる神の白い領域ですよね!」と真琴が叫んだ。正明は、真琴の頭をたたき、「お前は黙ってろ」とにらんだ。

「……はい、そうです。私は女神フィルミアと言います」

 フィルミアは四人に向かってほほ笑んだ。


 四人とも、その笑顔に魅入られるように黙り込んだ。


「さっそくですが本題に入ります。あなたたちは、フィルディアーナという世界、あなたたちから見て異世界ですね、そこに召喚されました。その世界は基本的に平和なのですが、今現在、魔獣の氾濫という脅威にさらされています。それに対抗する戦力としてあなたたちが呼ばれたのです」とフィルミアが説明する。


「え、魔王とかは無し?」と真琴が言った。

「ばか、俺はまだ死にたくないぞ」と正明。

「……ええ、魔王はいません。それでですね、残念ながらいったん召喚の魔術が発動すると、キャンセルができないのです。ですので、あなたたちにはいったん向こうの世界に転移していただきたいと思っています。とりあえずは地球の神とフィルディアーナの神である私が、あなたたちに勇者としてのスキルを与えます。つまり、魔法が使えますよ」とフィルミアがほほ笑んで言うと、

「やった! 魔法だぞ、魔法!」と真琴がはしゃぐ。

「ちょっと、真琴! あなた、いい加減に落ち着きなさい!」と、とうとう琴音が怒った。


「……そして、あなた方の体は、フィルディアーナ世界に合うように変換されるので、簡単には死なないでしょう。向こうに行ったら、使徒と呼ばれる人物を頼ってください。きっとあなた方の助けになります。そして、地球へはいずれ戻れるので、こちらから連絡するまで待っていてくださいね」とフィルミアは笑顔で4人に説明した。


 フィルミアはそう言うと、魔術の実行を再開させるのであった。



     ◇



「で、イサナミア、説明してくれるわね?」


 フィルミアは、ほほ笑みながらイサナミアに言った。目は笑っていない。


「……ごめんなさい。史郎さん用に生体の転送をテストしてたんだけど、ちょっとお遊びで確認をしてて、その魔法陣を置いてきてしまったんです。ちょうど先輩に呼び出された時ですよ。それに、あんな場所には誰も来ないと思って……。彼女、琴音ちゃん? なのは、ちょっとでき心で。でも、彼女の場合は運命かも?」


「運命?」とフィルミアは首をかしげる。


「えへへ、彼女、史郎さんの幼馴染みなの。それに……」うふふとイサナミアは曖昧に笑いごまかした。


「……あなた、その転送用の魔法陣に、召喚対象をハードコード(直接書き込み)したの?」


「へへへ、そうなんですよ。先輩が私を呼び出すまで、転送のテストしてたんです。そして、冗談のつもりで琴音ちゃんを呼び出してみたらどうかな~って思いながらコードを書いてたら、先輩に呼び出されたんだけど、その魔法陣そのままおいてきちゃったんですよね」


 と、イサナミア。そして続ける。


「えーっと、正確には、『史郎さんと縁のある、もっとも心でつながっている者』という設定だったんですけど、占いみたいで面白いでしょ? 地球じゃエンティティ化がまだされてないから、いろいろと精神情報と魂情報から、それらしい関連性を検索して、心でつながるというのをアルゴリズム的に見つけるって言うコード、結構難しかったんだけどなー。名付けて、『運命の赤い糸』アルゴリズムですよ! うまくいったようだと思うんですけど、先輩どう思います?

 やっぱり地球のエンティティ化処理をもっと進めるべきだと思うんですよね、アルゴリズムを簡単にするためには。で、話は戻しますが、その結果が琴音ちゃんなんですよ! なんかキャーって感じですよね! ちなみに、転送の安全マージンを取って半径10メートル、高さ2メートルの円柱形内転送にしといたんですけど……なので、残りの三人はいわゆる巻き込まれ転移ですよ⁉」


「……あなた、地球・フィルディアーナ間の転送って結構重要なモジュールなのよ。何遊んでるのよ……。それに、なぜそんなにうれしそうなの?」とフィルミアはあきれる。


 え、だってテンプレでしょ? とイサナミアはつぶやいたが、フィルミアには聞こえなかった。


「はぁ、とりあえず、その魔法陣の起動は無効化しておいてちょうだい」とフィルミア。

「わかりました!」とイサナミア。



「イサナミア、とりあえず地球の時間は停止ね。彼女たちが帰るまでは地球の処理はお預けよ。どうせ、史郎さんが来た時点で遅くなってたから、問題ないわね」とフィルミア。

「はーい、わかりました」とイサナミアは軽く返事するのであった。


 起こってしまったものはしょうがない、とフィルミアは諦めて、成り行きに任せるのであった。



     ◇



「見つけた!」と声が聞こえる。

「誰?」と少女は聞く。


「あなたと思いを同じにする魂よ。あなたの思いとともに、私たちのためにいっしょに戦ってくれる?」とその声が言う。


「戦う? ……そうね、同じ思いなら、いいわよ……」と少女は、薄れる意識の中そうつぶやいた。


「ありがとう」とその声は言い、「【魂リンク】」とつぶやくのであった。


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