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92.幕間4

 アドラは、精霊の丘でイベリアと別れた後はなんとはなしに南下したが、すぐそばの山のふもとに降りてそこでしばらく滞在していた。


 しかし、だんだんと精神状態は悪化する。もうこれ以上は我慢できないという状態になって、人の存在を感じられる方向に再び助けを求めようと飛び立っていった。


 それは魔術学園都市のあるオックスドニア方面だった。


 アドラは、その移動中に、ある山のふもと、岩の谷に良さそうな場所を見つけてしばらく休むことにした。



     ◇



 魔術学園都市国家の領域の北端にある町から、馬車で数時間ほど所の小高い丘の上の森。学園とある学生のグループが、魔獣の討伐の依頼をこなしていた。一応冒険者だ。学生でも冒険者登録はできる。もっとも、その場合はランクGかFから始まるが。


「おい、あれを見てみろ」と学生の一人が北の方を指さして叫んだ。


 彼らがいる場所は丘の上。崖の近くで、北の方角が開けており、壮大な景色が眺められる場所だ。


「ん?」と仲間の学生が、指を指された方角を見た。

「なんだ、あれ?」


 北の方の山の麓に巨大なドラゴンのようなものが見える。そして、その周りには、何か、黒い大きなものがたくさんあった。

 

「あれって、ドラゴン、いや、魔獣王じゃないか⁉ おれ、本で読んだぞ。巨大なドラゴンがたくさんの魔獣を従えているらしい」


「ほんとか? じゃあ、冒険者ギルドに報告しなきゃ! 俺たちが見つけたとなると、きっと報奨金がもらえるぞ!」と別の学生がうれしそうに言った。


 本当は、単なる報告だけでは報奨金は出ないのだが、彼らはまだ学生。まだ世間知らずで、何とかお金を得ようと必死だったため、よく考えずに誰かが放った言葉に興奮するのである。

 彼らは急いで帰り支度をすると、冒険者ギルドまで戻った。


 田舎町のギルドは、この報告の真偽をきちんと確認する前に、すぐに首都の冒険者ギルドに報告した。

 それが、いつの間にか、魔獣王が出現したというニュースになった。


 冒険者ギルドがいかに優れたシステムであろうと、所詮人間が運営しているという、典型的な例だ。


 数週間後に、冒険者ギルドは確認と調査の冒険者パーティーを現地に派遣することになる。

 その時には既にドラゴンはおらず、かつ、黒い物体は、地元ではよく知られる特殊な形状の岩石の地形なので、元の報告の真偽(しんぎ)は疑わしくなった。

 だがそれが本部に伝わるころには、実際にドラゴンが首都に現れることになり、彼らの報告は結果的に正しかったことになるのであった。


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