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73.封印解除1・HLSL

 ワイバーン討伐が終わった次の日。

 史郎は神術を検証することにした。基本的に史郎とミトカの間での議論になるが、皆も参考に聞きたいといって参加している。


「封印自体は【時間停止結界】だったよな。そして、その起点が土魔術のクリスタル。というか、クリスタルが起点オブジェクトで、結界空間が付与されているということでいいんだよな?」


「はい、そうです」


「で、その結界自体はそれ独自の空間で時間が停止していると……。じゃあ、単に時間の流れを同期して、彼らをこちらに転移でいいのか?」


「……そうですね。空間自体は別空間なのでこちらの空間と直接接続できない……いえ、できなくもないですが、転移がいちばん簡単かと。

 こちらに隔離結界を作って、そこへ転移、その後ウイルス除去でいいんじゃないでしょうか? ゲートよりは安全です」とミトカ。


「ああ、そうだな。じゃあ、彼らのこちらへの転送はそれでいいとして、問題はウイルスか……」と史郎は思案する。



「安易な方法だが、確実だと思うのは、全身スキャンして、ウイルスを探知、除去だな。問題は、ウイルスレベルの探知と除去というと、かなりの精密な魔力操作が必要だということで……、それだけの精密さだと、全体の量もかなりの物になるということだな」


「史郎、奥の手があります」とミトカが言う。


「奥の手? いったいどんな?」と史郎は何のことだ? というふうにミトカを見つめた。


「HLSLを使います。この世界でも実は限定的ですが実装されているようですね」


「まじか⁉」史郎は驚いた。



 HLSLとは、High Level Seirei Language、つまり高度精霊言語といい、精霊を制御して多重処理するための言語だ。決してGPUコアのためのあれではない。


 史郎が開発していたフィルディ・システムではまだ実装されていない。シロウが仕様だけ書いて、後回しにしていたのだ。機能としてはパワフルで、史郎の中で優先順位はかなり高い追加仕様だったものだが、いかんせん超多重処理で、実装には神がかり的なプログラミング能力がいる。たとえ史郎でもおいそれとは実装できなかったのだ。



「今回、私と史郎、そして、シェスティアの魂をリンク、すべての精霊を使ってHLSLでウイルス除去の魔術を起動すれば多重処理の同時実行数が向上します」とミトカが説明した。そして、続けた。


「シェスティアのコア数は1万を超えています。それに私の精霊王としてのコア数と、史郎の意識レベルの高さからくるコア数および上級精霊を合わせれば、今回の単純化したウイルス除去だと、精霊とコア一つあたりの魔術発動は100を超えると思いますので、おおよそ200万同時発動が可能でしょう」とミトカが解説した。


「おい、もしかして俺のコア数がいちばん低いのか? というか、シェスティアのコア数はなんでそんなに高いんだ?」と史郎は唖然とした。


「コア数って何?」とシェスティア。


「え? ああ、コア数ってのは……。そうだな、簡単にいうと、物事を同時に幾つ考えられるか、というようなものだな。たとえば、3人別々の人とまったく違う内容の話を同時にできるかとか? または、絵を描きながら、人と会話して、頭の中では違うことを考えるとか。もちろんすべてがきちんとできているという前提でだが」

 と史郎は説明した。そして、


「魔術で言うと、同時発動数だな。幾つ魔術を同時に発動できるか……。そういえば、シェスティアは氷魔法を複数発動してたな」と史郎はふと気づいた。


「ほう、なるほど、じゃあそのコア数とやらは増やせるのか?」とソフィアが質問してきた。


「うーん、そうだな。生まれ持ったものも大きいけど、トレーニングも可能だな。常に同時に思考し物事を処理するようふだんから意識していれば、スキルとして認識されるはずだ」と史郎は答えた。



「じゃあ、あとはウイルスの認識だが、抗原抗体反応のようにたんぱく質の立体認識か?」と史郎は考えたが、


「いえ、シロウ。このウイルスはエンティティ化されています」とミトカが言った。


「え⁉ なんで? それは、つまり……」


「そうです、何らかの人為的なウイルスですね」とミトカが言った。


「なんてこった……」と史郎は黙り込む。


「シロウ、何か問題なの?」とアリアが聞いてきた。


「ああ、いや、除去は問題じゃない。ここで問題なのは、ウイルスの存在が自然の物じゃなくて作られた物だということなんだが……」


 史郎は、ここでこれ以上の議論は難しいと考え、いったんその問題は保留することにした。


「まあ、ともかく問題はない。エンティティ化されているならその方が都合はよい。魔術的に探査と破壊は容易だ」と史郎は言った。


 その後、史郎はその魔術式を考えることにし、この場は解散とした。


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