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6B.ステータス検証

「え? まさかのステータス値オール100? このステータス値って、この世界の平均と比べてどうなの⁉」


「史郎、これらの値は一般成人の平均……より低いですね」

 ミトカは史郎の顔の横に浮かび、一緒にステータス画面をのぞいた。

 

「え、なんで?」と驚く史郎。


「えーっと、女神様からのメッセージですが『一般ユーザーの気持ちを考えて開発に取り組んでください。【即死耐性】があるのですぐには死なないはずです』とのことです」ミトカはニヤニヤしながら史郎を見て言った。


「まじか? 女神様、意外とスパルタ?」

 フィルミアの意外な一面を感じたような気もしつつ、史郎は気を取り直して項目の確認を続けた。


「人族の後の『?』マークは何? しかも年齢も微妙に若返っているし。俺は本当は19歳のはずだが?」


「それは肉体変換のせいです。一応人間の体ですが、変換した際に若返り処理と強化が行われています。用意されたボディが17歳相当だったようですね。ちなみに見た目は元とそれほど変わってはいません」ミトカは史郎を上から下まで見て言った。


「なるほど……。あんまり変わると戻った時に困るからな。でも、この世界のトラブルシューティングするにあたって世界を旅するのに、このステータス値で大丈夫なのか?」

 少し不安になってミトカを見る史郎。


「はい、大丈夫です。肉体変換により人族以上の潜在能力を持ちますし、そういう意味ではステータス値を超える活動が可能かと思われます」

 ミトカは史郎を見守るような表情をして答えた。


「……それって、ステータス値の意味なくない?」


「史郎の場合は肉体が特殊なので例外かと。状態に「超健康」と出ているのも肉体変換のためのようです。状態表示は、種族標準肉体に対しての比較になります」


 史郎は、自分の設計した仕様ではそんなケースはなかったはずだがと思いつつ、まあこれらの点も微妙な違いかなと流すことにした。


「史郎、細かな違いがあるとはいえ、この世界の仕組みは史郎の設計した世界とほぼ同じようです」

 ミトカは史郎の前に浮かびながら、真剣な目で史郎を見つめて言う。

 

「ああ、フィルミア様が言っていたとおりなんだな?」

「ですので、世界の理を理解する史郎なら、ステータス値以上の効果をいろいろと工夫できると思われます。それに、史郎なら数値はあっという間に上がりますよ!」


「いや確かにそのとおりなんだろうが……。本当のところ、俺の設計したシステムとはどれくらい同じで、どれくらい違うんだろうか?」


 そうですね、と、ミトカは腕を組みながら考える様子をして、

「大きな違いがあるとすれば、地球上では実現不可能だった精神と物理の接続部分でしょうか? 地球では、意志または想像しただけの思念を情報として取り出すことはできませんでした。でもこの世界では可能です」

 そして、と続ける。

「また、情報の実体化も実装されています。あと、魔力感知や魔力操作などの感覚的な知覚は地球では実装できませんでしたから、それも違いといえます」


「なるほど、そうか。それにしても精神接続部分は素晴らしいな!」史郎は素直に喜んだ。


「ところで、スキル【イデア】ですが、それが開発ツールのことです。あと、職業『エスエー』ですが、この世界には史郎一人だけですね」

 ミトカは自慢げに言った。


「エスエーって、なんでカタカナ? というか、エスエーって、何?」

「世界・アーキテクトです」とミトカがなぜかにやりとして答えた。

「あぁ、『ソフトウエア・アーキテクト』、じゃないのね。というか、ひらがなとカタカナが混じっているし」と史郎はつっこんだ。

「しかも、ミトカってスキル扱いなんだな?」


「そのようです。スキル扱いだと史郎の魂に直接アクセスできるというのが理由ですね」

「じゃあ、最初の念話もそうか。あれ、じゃあ、念話の場合は俺も考えるだけで声に出さなくてもいいのか?」


「はい。私に語り掛けることを意識して心の中で考えると通じます。単に考えるだけでは通じません。少々練習が必要かと」


「ああ、なるほど。すべての考えが駄々もれというわけではないのか」


 よし、念話を試してみよう、史郎は思い、ミトカに語り掛けるように意識しながら話しかけた。

(ところで、この表示画面は他人からは見えるのか?)


『いえ、見えません。本人には見えて触れますが、他人には、正確には許可した人以外には、見ることも触れることもできません』

 ミトカも念話で返してきた。

(おー、伝わった? ほー、便利だな!)と喜び答える史郎。

 

 そして、ステータス画面が許可した人以外に見えないときいて、ふと思い出す。

「このステータス画面は、魔術発現属性がついていると?」

「はい、そうです」

「なるほど、エンティティオブジェクトベースできちんと実装されているのだな」と史郎は感心した。


 この世界に存在するあらゆる物は「エンティティ・オブジェクト」として定義され存在する。

 世界は、そのエンティティ・オブジェクトのツリー構造で表現されており、それは「シーングラフ」と呼ばれる。そして、そのシーングラフを操作することによって魔術が実現されているのだ。


 なお、プラグインの【初級魔術精霊】は、この世界における魔術実現方法の一つだ。魔術を使うには精霊と契約する必要があるっていうのが表向きの言い方で、設計上は精霊はいわゆるプラグイン、つまり追加機能モジュールであり、一種のコンピューターのようなものだ。


「あれ? じゃあなぜミトカは魔術発現属性を使わないでARなんだ?」と史郎はふと疑問に思った。

「私の場合、ARだと魔力は史郎の体内なので外部からの干渉は一切受け付けませんし、魔力消費も最小です。対して、魔術発現属性での表示は魔力を必要とする上に、干渉の可能性も捨てきれません。現在の史郎のレベルと魔力量の場合、効率と安全を考えてARの方が好都合ですね」


「なるほど。それで、なんで俺の魔術精霊は初級なんだ?」

 と、疑問に思う史郎。


「はい。これも『ユーザーの気持ち』を知るためみたいですね。なお初級魔術精霊は、この世界での魔術師の一般的な精霊です。なので、この世界で一番普及している定型魔術を試せます」


「……はぁ、なるほど。まあいいけど。開発者としてそのチャレンジ、受けて立とう。何か分かるかもしれないし!」


 だんだんと、まあ何とかなるであろうと開き直り始めた史郎。


「レベルやステータス値を上げるには、魔獣(まじゅう)の討伐でいいんだよな?」

「はい、そのとおりです。地道な修行以外では、という意味であればですが」


「まあ、そうだな。よし、じゃあとりあえずは当面に必要なスキルの取得と生活環境の整備だな?」


「ミトカ、このステータス値でこのあたりは安全かな?」


 ミトカは再び周りを探るような様子をし答える。

「はい、この場所を降りても大丈夫です。半径五百メートルほどは結界が張られていますので、その内部にいる限りは大丈夫のようです」


「おー、それはいい! よし、周りを探検してみよう!」と意気込む史郎であった。


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