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40.幕間1

 史郎がフィルディアーナに転移する数年前の出来事。


「アドラ、今夜こそこの村を抜け出そうよ」

 イベリアがアドラに詰め寄る。

「そうだな、もうそろそろ限界かもね」

 と、アドラが答える。


 アドラとイベリアは、龍の山脈に住む二体のドラゴンだ。


 アドラは黒龍。全身真っ黒で、引き締まった体躯をした全長10メートルほどの巨大な龍。


 対して、イベリアはホワイト・フェザー・ドラゴン。全身真っ白のフワフワの毛でおおわれている。大きさは7メートル程で、やや小柄だ。もちろん龍基準でだが。


 龍の山脈は、大昔の「マギセントラル瘴気大爆発事件」と呼ばれる大事件で魔の大樹海が生まれたころに龍達が避難した先の山脈で、魔の大樹海の北部に位置する。その場所に、その時以来できた龍の村で数少ない龍が生活している。


 龍は、龍脈――地中を流れるマナの流れのようなものだが――から直接マナを吸収して魔力にして生きているのだが、この龍の山脈にある龍脈の吹き出し口は小さく、あまりいいマナが採れないのだ。


 龍の中では比較的若いアドラとイベリアは、それに満足できず不満が溜まっており、また、村の外へ出ようとしない年長の龍達と違って、二体は世界を見て回りたいと思っているのだ。


 幼馴染みでやんちゃな若い二体にとって、もはや選択肢はない。


 村を出る決意をしたその晩、二体は村の龍達に黙って、村を抜け出し、彼らが感じる龍脈の潤沢な吹き出し口を感じる南の魔の樹海方面へ飛び出していったのであった。


     ◇


「イベリア、このあたりのようだな」

 と、アドラがイベリアに声をかけた。


「わかったわ」

 イベリアは答え、二体は着陸することにした。


 アドラとイベリアが降りた地は、広範囲に荒れ果てた土地で、龍脈の噴出が感じられる中心地は巨大なクレーターになっている。


 実は、この場所はかつてのマギセントラル瘴気大爆発事件の中心地なのだが、彼らには知る由もなかった。


「なんか荒れた場所だな……。でも龍脈の流れはすごいよ! なんておいしいマナ流なんだ」

 アドラは興奮気味に叫んだ。

「そうね!」

 と、イベリアもうれしそうに返した。


 二体は、初めて感じる立派な龍脈から噴き出す新鮮なマナ流に大喜びだ。


 マナ流からひとしきりマナを吸収した後は、周りにある木になる実や、植物、キノコなどを適当に食べるのであった。龍は実はマナ以外にも結構雑食でなんでも食べる。


「なんだかやたらキノコが多い場所だな?」

 と、アドラはふと気にするも、もともと若い龍である彼らにとって食べ物にはそれほどこだわりがなかったので、すっかりそのことは忘れるのであった。


     ◇


 龍達はその後、龍脈の吹き出し口が感じられる別の場所に向かって飛び去った。


 彼らが、「マギ・イースト」と呼ばれる魔の樹海の東に位置する遺跡に滞在した際、体に付着していたキノコの胞子がその地に土着。キノコが拡散しだしたのだが、そのことに気づくものは誰もいなかった。


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