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31.精霊とホーミング誘導1・ミトカ3

 史郎は殲滅魔術のアイデアの、二つ目の説明を続ける。


「で、二つ目はターゲットを追っかける機能、つまり、ホーミング誘導だな。これはちょっと複雑かもしれないが」史郎は頭をかきながら言った。


「ホーミング誘導ですが……。魅力的な機能ですが、実装はどのように?」


「その前に、今まで無意識に使っていたけど、多重起動の時にターゲットそれぞれに当てる場合は、どうやってどの発動魔術がどのターゲットに当たるって紐づけているんだ?」

「……無意識にやっていたんですか?」とミトカはあきれた。


「いや、まあ、感覚で?」と史郎はごまかした。


「ふふふ。まあ、いいですけど。多重発動は、基本的に通常の一つの発動を繰り返していることになります。つまり、大ざっぱに言うと、起点定義とターゲット定義の二つを繰り返しているわけですね。なので、ひとつひとつの魔術発動ごとに無意識にターゲットしていることになります。ちなみに、同じ属性で複数発動なのが【多重発動】、つまり【マルチ】系の魔術ですね。もし異なる属性を複数発動したいなら【多重キャスト】などで、さらに制御が難しくなります」


「そうか……。俺が考えているのは、発動を別に分けることにあるんだと思うけど……。まずは個々に【ターゲット】するのが第一段階。これは、鑑定か何かで相手を特定して、「ターゲット」として記憶する必要があるな。そして、多重発動の際のターゲットとしてその記憶したターゲットを使うこと。最後に――そうだな、追加の精霊がいるかもしれないが――それぞれの発動した魔術の軌道をターゲットが動いた場合に変えることだな」


「……」

 史郎はそう説明したが、ミトカは黙り込んだ。


「史郎、アイデアは理解しました。そのアイデアを実現するには、まずいくつか追加のスキルが必要ですね」


「ほー、できそうなのか?」史郎はうれしそうに聞いた。


「はい。まずは記憶力アップの気術スキルの取得ですね。もちろんターゲット記憶用です。まあ記憶力向上はふだんの生活にも役立ちますが」ミトカはほほ笑んだ。


「そして、追跡の機能ですが、それは実はかなり高度な機能です。少なくともターゲットごとに専用の魔術精霊が必要ですね」


「やっぱりか。それで追加の魔術精霊はどうやって取得するんだ?」


 史郎は分かっているような顔をして、少しニヤつきながらミトカに聞いた。


「……史郎、もしかして気づいているんですか⁉」


 史郎は再びニヤッとした顔をして、答えた。

「いや、全然」

「……」


「……いや、まあ、実はミトカが魔術精霊をインストールできるんじゃないかとは思っているが」

「はぁ、どうしてそのように?」


「ははは。伊達にミトカの生みの親じゃないぞ」と史郎は自慢げに答えた。


「……いつから私は娘に? ……いえ、まあ史郎は確かに『生みの親』ではありますね」


「そもそもだな、フィルミア様はミトカのことを魔術生命って言ったけど、それはあり得ない。なぜなら、魔術生命がスキルみたいに他人の精神に付属するなんてのは俺は設計してないからな。まあ、この世界特有という可能性も無きにしも非ずだが、それはないと見た」


 史郎はミトカの質問を華麗にスルーして説明を続ける。


「……」


「で、精神に付属できるとしたら、簡単なのは精霊だな。ミトカの様子を見るに、しっかりとした自我が確立されているようだし、そんな自我を持つ精霊となると上級精霊以上となる」


 史郎は続けた。


「そして、ミトカが持つこの世界の情報の詳しさを鑑みれば、もしかして精霊王ネットワークにアクセスできる精霊王精霊なんじゃないかと思ったわけだ。単に情報をもらったということも考えられなくもないが、それじゃああまりにも芸がないからな……プログラマーとして。女神様もアーキテクトだと言っていたし」


「史郎、お見事です。まったくそのとおりです」


 と、ミトカが言った瞬間、アナウンスの音が聞こえた。



 ――『【ミトカ】がレベル2になりました』



「え、ミトカのレベルが上がった⁉」と史郎は驚いた。


「ふふふ。史郎が無事私の正体を見破ったので、制限が外れました。精霊王として、精霊のインストールが可能になりましたよ」


 ミトカは満面の笑みを史郎に向けて答えた。


「おぉ、それはまたタイミングのいいことで……」


「そうですね。まあ、私もさらにお役に立てそうでうれしいです」

 ミトカは、笑みをそのまま、史郎を見つめながらうなずくのであった。


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